3月21日は国際人種差別撤廃デーです。IMADRが事務局を担う人種差別撤廃NGOネットワークは、今年も人種差別撤廃を目ざして院内集会を開催しました。今年は人種差別撤廃を進めるうえで重要な役割を果たす国内人権機関について、2001年に設立された韓国国家人権委員会より、国際人権部副部長の白佳倫 (Baek Gayoon)さんをお招きし、韓国における20年以上の取り組みの歴史と将来に向けた課題について報告をしていただきました。
韓国国家人権委員会は、金大中大統領(当時)が大統領選の公約に掲げたものであり、就任に伴いその約束を果たして設立されました。発足初日に、すでに122件の人権侵害・差別事案の申立てが市民社会から寄せられたことに、人びとの期待の大きさが感じられます。初日の申立てには、障害を理由に保健所の所長に任命されなかったという障害者からの申立て、宗教上の信念に基づく兵役拒否の被拘禁者が礼拝を認められなかったことへの申立て、クレヨンの「肌いろ」という色の名前は人種差別であるという移民からの申立てなど、行政当局による人権侵害や差別の事案も多く含まれていました。これを受けて、国家人権委員会は次のように述べました。
今後、国家人権委員会に相談に来る人たちの多くは、教育を受けることができず、貧しく、社会の隅に追いやられた人たちであることは明らかだ。弁護士を雇う余裕のない人たちや、あるいは不当な差別をどこに持っていけばよいのか分からない人びともいるだろう。国家人権委員会はそれら人びとの所にまで降りて行き、そこに留まり続けなくてはならない。権力があるのなら、その人たちのために使うべきだ。
それから22年、今では韓国国民の92%が国家人権委員会のことを知っており、60%が社会に貢献していると評価しています。パリ原則に基づく独立した国内人権機関として、人権侵害の調査・救済に加え、政府政策への提言、人権教育の推進そして人権の地域・国際協力を任務の柱にしている韓国国家人権委員会は、今後さらに発展していくものと期待されます。
日本には国内人権機関はありません。過去2回国会に提出された設置に関する法案は解散などで廃案となりました。世界193カ国のうち120カ国にある国内人権機関。政府から独立した国内人権機関は国際社会の誇りある一員になるためのマストです。