2020.06.9

合衆国の制度的人種差別への抗議声明 - 国連人権専門家

2020年6月5日

これは国連人権理事会の特別手続きを構成する独立専門家**が出した声明です。

ジョージ・フロイドの殺害は世界の人びとに衝撃を与えた。だがそれは全米の黒人の毎日の現実である。全国に広がるデモは、国家ぐるみの人種的暴力を生み出し、不処罰を許している制度的人種差別への抗議である。デモはまた、この数カ月におけるその他数多くの無視できない制度的人種差別の発現に対する人びとの不満と抗議を表している。それらには、COVID-19の死亡率やパンデミックの社会経済的影響に見られる人種間の格差、そしてパンデミック関連の規制の人種差別的な実施がある。この制度的人種差別はジェンダー化されている。今世界が目撃している抗議は、合衆国における黒人およびその他有色の人びとの生活を特徴づけている根本的な人種的不平等と差別への拒絶である。

合衆国大統領は事態の推移に応じて見せてきた抗議への対応において、時には、黒人の基本的人権の否定に熱心であった過去の人種隔離主義者と直接つながる言葉を引用して、さらなる国家暴力をほのめかした。私たちは、この国が、人びとを街頭の抗議に駆り立てた不正義の再現となる軍事的対抗措置の寸前にあることに深く憂慮する。

国内および国際的な連帯の表明は重要であるが、それだけでは十分ではない。国内外の多くの人びとは、ようやく、問題は少数の腐ったリンゴにあるのではなく、リベラルデモクラシーを誇りとし世界最大の経済規模を誇る国で、経済、政治、社会活動が構造化されている、まさにその状態に問題があることを認め始めた。黒人の命が本当に大切かどうかの真の証明は、抗議者たちの具体的な要求への対応として公権力および一般市民がとる行動にかかっている。その一つに、膨れあがった警察と軍の予算を以前の水準に戻し、その分を、とりわけ差別的な国家の介入により貧困に陥り服従させられてきた有色のコミュニティの医療、教育、住宅、公害の防止およびその他の社会の仕組みに再投資するよう求める全国的な声がある。

歴史的かつ現代的である人種的不正義への修復的介入は急務であり、それは国際人権法により義務づけられている。今は言うだけではなく行動する時だ、特に、人種や民族性を理由に自らの生活や生計を心配する必要のない人びとにおいて。世界的に見ても、アフリカ系住民およびその他の人びとは、制度的人種差別とそれに伴う痛みを、意味のある救済手段もないまま受け入れて生きていくしかなかった。抗議者そして合衆国の黒人と連帯して声をあげる世界の指導者たちも、この機会を捉えて、それぞれの国にある、そして国際システム自体にある構造的な人種的および民族的不正義に取り組むべきである。


**署名者                役職名称は正式訳ではありません

Tendayi Achiume, 人種差別に関する特別報告者
Ikponwosa Ero, アルビニズムの人びとの人権に関する独立専門家
Leigh Toomey (Chair-Rapporteur), Elina Steinerte (Vice-Chair), José Antonio Guevara Bermúdez, Sètondji Roland Adjovi, and Seong-Phil Hong,  恣意的拘禁に関する作業部会
Githu Muigai (Chair), Anita Ramasastry (Vice-chair), Surya Deva, Elżbieta Karska, and Dante Pesce, ビジネスと人権に関する作業部会
Rhona Smith, カンボジアの人権状況に関する特別報告者
Nourredine Amir (Chair), 人種差別撤廃委員会議長
Fionnuala D. Ní Aoláin, 反テロ対策における人権と基本的自由の促進・保護に関する特別報告者
Livingstone Sewanyana,民主的で平等な国際秩序の促進に関する独立専門家
Tomás Ojea Quintana, 朝鮮民主主義人民共和国の人権状況に関する特別報告者
Catalina Devandas-Aguilar, 障害者の権利に関する特別報告者
Meskerem Geset Techane, Elizabeth Broderick (Chair), Alda Facio, Ivana Radačić, and Melissa Upreti(Vice Chair), 女性と少女への差別に関する作業部会
Kombou Boly Barry, 教育の権利に関する特別報告者
David R. Boyd, 人権と環境に関する特別報告者
Agnès Callamard, 超法規的処刑に関する特別報告者
Michael Fakhri, 食料の権利に関する特別報告者
Yuefen LI,I 外国負債の人権への影響に関する独立専門家
Clément Nyaletsossi Voule,平和的集会の自由の権利に関する特別報告者
David Kaye, 表現の自由の権利に関する特別報告者
Ahmed Shaheed, 宗教と信仰の自由に関する特別報告者
Dainius Pūras, 心身の健康の権利に関する特別報告者
Balakrishnan Rajagopal, 適切な住居の権利に関する特別報告者
Alice Cruz, ハンセン病患者への差別撤廃に関する特別報告者
Alioune Tine, マリの人権状況に関する独立専門家
Chris Kwaja (Chair), Jelena Aparac, Lilian Bobea, Sorcha MacLeod, and Saeed Mokbil, 外国人傭兵の使用に関する作業部会
Felipe González Morales, 移住者の人権に関する特別報告者
Fernand de Varennes, マイノリティ問題に関する特別報告者
Thomas Andrews, ミャンマーの人権状況に関する特別報告者
Claudia Mahler, 高齢者の人権に関する独立専門家
Michael Lynk,パレスチナ自治区の人権状況に関する特別報告者
Olivier De Schutter, 極貧と人権に関する特別報告者
Ahmed Reid (Chair), Michal Balcerzak, Dominique Day, Sabelo Gumedze, and Ricardo A. Sunga III, アフリカ系住民に関する専門家作業部会
Joe Cannataci, プライバシー権に関する特別報告者
Saad Alfarargi, 開発の権利に関する特別報告者
Mama Fatima Singhateh, 子どもの売買と性的搾取に関する特別報告者
Victor Madrigal-Borloz, 性的指向とジェンダー自認に基づく暴力と差別に関する独立専門家
Tomoya Obokata, 現代的奴隷制に関する特別報告者
Obiora C. Okafor, 人権と国際連帯に関する特別報告者
Isha Dyfan, ソマリアの人権状況に関する独立専門家
Aristide Nononsi, スーダンの人権状況に関する独立専門家
Nils Melzer, 拷問および非人道的処遇に関する特別報告者
Baskut Tuncak, 人権と有害物質に関する特別報告者
Maria Grazia Giammarinaro, 女性と少女の人身取引に関する特別報告者
Fabian Salvioli, 真実、正義、補償、再発防止に関する特別報告者
Alena Douhan,  一方的強圧手段の人権への否定的影響に関する特別報告者
Dubravka Šimonovic, 女性に対する暴力に関する特別報告者
Léo Heller, 水と衛生の人権に関する特別報告者

英語原文は https://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25927&LangID=E

翻訳:IMADR

この文書はPDFでもお読みいただけます。

Archive