反差別国際運動日本委員会は、2015年2月11日付の『産経新聞』に掲載された曽野綾子さんのコラムについて、以下の要請文を送りましたので公表します。
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2015年2月17日
曽野綾子様
産経新聞社代表取締役社長 熊坂隆光様
産経新聞社常務取締役 飯塚浩彦様
反差別国際運動日本委員会
理事長 武者小路公秀
アパルトヘイトの日本導入を奨励するコラムについて
曽野綾子さんと産経新聞に撤回を強く求めます
2015年2月11日付の『産経新聞(朝刊7面)』に掲載された曽野綾子さんのコラム「労働力不足と移民」は、日本での移民の受け入れにあたってアパルトヘイト(人種隔離政策)を奨励する内容で断じて許されるものではありません。曽野さんはコラムで高齢者介護を担う労働力不足を補完する移民労働者受入れについて述べるなかで、南アフリカの事例をもとに「私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」とし、「人間は、事業も運動も研究も何もかも一緒にやれる。しかし居住だけは別にした方がいい」と締めくくっています。曽野さんがコラムの中で提案したのは、近隣国の若い女性の労働力を利用し、「移民としての身分を厳重に守るような制度をつくり」、居住区だけは「人種」によって分けるというもので、まさにアパルトヘイト(人種隔離政策)の導入を奨励するものです。
既に南アフリカのペコ駐日大使は、アパルトヘイト(人種隔離政策)は人道に対する犯罪であり21世紀において正当化されるべきものではないと抗議し、アフリカ日本協議会もコラムの撤回と南アフリカの人びとへの謝罪を求めています。しかし、産経新聞は、2月15日付の同紙で抗議が届いたことを伝え、差別は許されないとするだけで、撤回や謝罪をするどころか、「個人の経験を書いているだけです。」という筆者の主張を掲載し、容認しています。
アパルトヘイト(人種隔離政策)の廃絶は、南アフリカの人びとの命をかけた半世紀以上にわたる闘争によって1994年に勝ち取られたものであり、世界はそれを支持し、二度とこの過ちを繰り返すまいと誓いました。また日本は1995年に人種差別撤廃条約に加入し、人種差別を非難し、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策を遅滞なくとることを約束し、いかなる個人、集団または団体による人種差別も禁止し終了させる義務を負っています。アパルトヘイトを奨励するコラムを容認することは、それらの誓いに反するものであり、反差別国際運動日本委員会は、曽野綾子さんと産経新聞社に、コラムの撤回を強く求めます。