「ジュネーブ事務所の小松泰介」
10月10日から13日にかけ、国際NGOであるUPR Infoが11月の普遍的定期審査(UPR)28会期に向けた事前セッションを国連欧州本部で開催しました。事前セッションでは28会期で審査される国からそれぞれ5名の代表が市民社会から選ばれ、その国の人権状況についてジュネーブの各国政府代表部に対し情報を提供しました。
UPR28会期では日本も審査対象国であり、10月12日の日本についての事前セッションにはIMADRがスピーカーの一人として選ばれました。IMADRは人種差別に対する人権インフラの不足、人種主義的ヘイトスピーチ、部落や在日コリアンなどへのマイノリティ差別、複合差別、および「技能実習制度」に関する問題について発言しました。
人種差別に対する人権インフラと人種主義的ヘイトスピーチについて、ヘイトスピーチ解消法および部落差別解消推進法の制定を一定の前進としつつも、未だに包括的な差別禁止法が存在しない上に、国連条約機関の個人通報制度や人種差別撤廃条約の4条について留保されたままであることによって、人種差別に対する法的枠組みが不十分であることを指摘しました。
マイノリティ差別および複合差別に関し、在日コリアンの子どもたちが通う朝鮮学校が高校授業料無償化から除外されていること、部落コミュニティ出身者のプライバシーの保護が不十分であること、先住民族女性とマイノリティ女性についての統計や特別措置が取られていないことなどを問題視しました。
最後に、2017年11月に施行される「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」を留意しつつ、外国人実習生の労働搾取および人権侵害が蔓延していることを報告しました。
これらの現状を踏まえ、11月に行われるUPR審査での日本政府への勧告案をIMADRから各国に提案しました。最後に、日本は人権理事会の理事国であり、国内の人権状況を向上する人的・財政的資源もあることを強調し、UPR勧告を実施してアジア太平洋の手本となるべきであると指摘しました。また、最近の法務省の外国人住民調査によって人種差別の実態を示すデータがでたことを受け、日本政府は人種差別に対抗する行動を取るべきと呼びかけました。
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