国連
国連人権アップデート No. 37 マイノリティアーティスト/外国人嫌悪根絶のために/レイシズムのない世界へ
■ 第4回国際マイノリティアーティストコンテスト(12月3日)
11月25日、2025年国際マイノリティアーティストコンテストの授賞式がスイス・ジュネーブで行われました。2025年のテーマは「帰属・場所・喪失」。強制移動、環境破壊、構造的レイシズム、世代間トラウマによってアイデンティティが形づくられてきた世界中のアーティストから、240点以上の作品が寄せられ、その中から4人が受賞し、さらに4人が特別賞に選ばれました。
「アートは私の存在であり生活である。アートなしでは、私は生き延びることができなかった」とクルドとシリアにルーツを持つ元政治囚の Kheder Abdulkarim は言いました。彼の作品は、迫害により文化や存在が抹消されそうになった経験にもとづくもので、今回特別賞を受賞しました。受賞者の一人、ダンサー・振付師である Alia Al-Saadi は、ヤルムークにあるパレスチナ難民キャンプで難民三世として生まれました。彼女は自身のパフォーマンスについて、「暴力に長くさらされることで衝撃を感じなくなる心理的麻痺の状態を表している」と述べました。若者部門の受賞者、ジャマイカ出身の Lindxee Collinsの作品は、アートと法の交差点に焦点を当てています。「マイノリティの物語の多くはマイノリティ自身で語られてきませんでした。正義や帰属とは、自分たちの物語を取り戻し、自らの視点で語り直すことなのです」。
* 受賞作品集はこちらから
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■ 移民および移民と見なされる人びとに向けた外国人嫌悪根絶をめざす(12月5日)
12月5日、人種差別撤廃委員会と移住労働者権利委員会の共同一般的勧告・意見として『移民および移民と見なされる人びとに向けた外国人嫌悪を根絶するための一般的/テーマ別ガイドライン』の発表を記念したイベントが行われました。このガイドラインは締約国およびすべてのステークホルダーに対し、外国人嫌悪が人権に及ぼす影響を具体的に示し、それを防止して根絶するための指針を提供するものです。イベントの開会に際し、移住労働者権利委員会のファティマタ・ジャロ委員長は、「外国人嫌悪は深刻な問題です。世界あちこちで、移民は社会の脅威や犯罪者として描かれ、そうした言説は国の指導者による発言やオンラインの情報により拡散されています」。「移民が社会に果たしてきた貢献を確認することなど、さまざまな方法で、外国人嫌悪の根絶に取り組むべきです」と述べました。ベレン・シェパード人種差別撤廃委員会副委員長は、委員会は多数の締約国に移民の権利を保障する措置を取るよう促してきたと述べ、「このガイドラインが、すべての移民にとって実効性のある生きた文書になるようにしたい」と締め括りました。その後、政府代表者や国連機関、市民社会組織、自治体の代表など、会場参加者からの発言を受け、イベントは閉会しました。
*イベントの様子はUN Web TVからご覧いただけます。
■ レイシズムのない世界へ(12月11日)
「尊重は単に思いやることではない、認めることです」スウェーデンから来た18歳の Durar Asad は国連人権のインタビューでそう答えました。Durur は、人種差別撤廃委員会116会期で行われたスウェーデンの審査に、17歳の Ava Baker、Leylo Gure Sanweyne とともに参加しました。また3人は審査に向けたNGOレポートを Save the Children Sweden と Save the Children Youth Sweden の協力のもと委員会に提出しました。「子どもたちが書いたNGOレポートを委員会が受け取ったのは初めてです」と Régine Esseneme副委員長は言います。
「Our Reality – Your Responsibility(私たちの現実―あなたたちの責任)」と題されたこのレポートは、スウェーデン各地から74人の子どもの声を集め、Durar を含む8人の子どもたちがまとめました。レポートには、教室での差別的な中傷、教員による不平等な扱い、公然と示される否定的なステレオタイプ、雇用における障壁など、子どもたちが受けてきた人種差別の表れ方と、それに対する具体的な策を提示しています。放置しておけばレイシズムは広がり、やがて当たり前になり、大人たちは無視するようになる、私たちの経験を真剣に受け止めてほしい。それが、レポートに込めた子どもたちのメッセージです。 「あまりに多くの人が未だ、レイシズムは構造的なものではなく誤解であると考えています」と、Durar は言いました。
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