2023.12.16

国連人権アップデート 12/15/2023 No.1

ウクライナ調査委員会がウクライナ訪問(Nov.9)
国連では、ロシアによるウクライナ侵攻に関して、ウクライナ独立調査委員会を設置し、人権侵害、国際人道法違反、関連する犯罪について調査をしています。同委員会では、ジェンダー的な側面も含めて、将来の法的手続を視野に入れながら、侵害や犯罪の証拠を収集、分析する任務を負っています。
同委員会は、現在行なっている事実調査のミッションの一環として、2023年11月13日からウクライナを訪問することが決定されたと、OHCHRが発表しています。委員会は、キーウに入って、政府関係者や市民社会等と会合を行う予定となっています。
Commission of Inquiry on Ukraine to Conduct Mission to the Country

シリア調査委員会、国際司法裁判所の命令を歓迎(Nov.13)

国連シリア調査委員会は、国際司法裁判所が11月16日に出した命令を歓迎する声明を発出しています。国際司法裁判所は、シリアが拷問その他の非人道的な行為が行われるのを防止するために、政府の職員やその影響下にある人がそのような行為を行わないことを保証するように求めるとともに、拷問禁止条約に該当する行為に関する証拠の隠滅を防ぎ、証拠を保全するための措置を取ることを命じました。国連シリア委員会のピニェイロ委員長は、「これは、シリアの拘禁施設における拷問、強制失踪、死亡を阻止するための、世界最高裁判所による画期的な命令である。「このような侵害(注:拘禁施設における拷問、強制失踪、死亡等)は、12年間シリア紛争の特徴であり、その主な根本原因の一つであった。」
「シリア国家そのものが司法プロセスの一部となり、最高レベルの国際的な裁判官の前で拷問禁止条約違反の忌まわしい記録を弁明することを求められるのは、これが初めてである」と述べた。
この裁判の中では、2011年以降、シリアの拘禁施設において、拷問や強制失踪を含む非人道的な扱いが広範かつ組織的に行われていることを記録した委員会の報告書に申立人(カナダ、オランダ)が言及していました。
UN Syria Commission welcomes landmark ICJ order to Syria to prevent torture and destruction of evidence

<<世界人権宣言75周年>>

■障がい者の権利「ケアと支援によって、自立した人生を歩むことができる」

ニコラ・ジョンクールが人生で最も大切にしていることは、自由であること。いつも家族に頼らず、自分のしたいことをすること。コンサートや映画に行く自由。友人と過ごす時間。研究分野を選び、他の学生と同じように大学の寮に住むこと。
「障がい者であることを理由に罰せられるべきではありません。できるだけ普通に生活するためには、制約を受けずに生きるという決意を持った、一人の人間として捉える必要があります。」障がい者の権利、そして障がい者がコミュニティの中で自立して生きる権利についての活動家であるジョンクールはそのように言いました。
ジョンクールは、現在23歳で、認知障害があり、意思疎通はキーボードやiPadでの入力に頼っています。適切なケアとサポートシステムのおかげで、彼はフランスのレンヌで学生として自立した生活を送っています。介助者は料理や洗濯、宿題や調べ物の手伝い、本を朗読してくれます。
「この自由な感覚が一番大切です。」障害者団体ENIL(ヨーロッパ自立生活ネットワーク)のメンバーでもあるジョンクールはいいます。「私はフルタイムの介助が必要で、そのための経済的援助が必要ですが、残念ながらあまり頻繁にはありません。支援体制が整っていないと、人は自分の運命をコントロールできなくなり、施設に収容される危険性があります。」
介護と支援のおかげで、ジョンクールは自立して生活し、社会生活を楽しむことができますが、すべての障がい者が彼のような状況にあるわけではありません。
世界中で、何百万人という人々が適切なケアや支援制度を受けられず、権利を否定され、可能性を阻み、経済を弱体化させています。発展途上国には不均衡な数の障害者がいますが、多くの場合、社会から疎外され、極度の貧困に苦しんでいます。

記事全文(英語):“Care and support allow me to live independently”

■人身取引被害者「人権をメインストリームに」

スアムヒルス・ピライノ=グスマンは14歳の時、母国ホンジュラスからアメリカ合衆国カリフォルニア州に密入国。囚われの身となり、定期的に薬を飲まされ、窓のない暗い部屋で一人、想像を絶する苦しみに耐えていました。「6カ月という長い間、私は最高額の入札者に売られていたのです」。
それから約20年後の今、成人男性になった彼は、性的搾取と人身取引のサバイバーとして積極的に発信をするようになり、被害者のネットワークのメンバーとして活躍しています。彼はまた、「現代奴隷制度に関する国連自発的信託基金」の評議会議長として2年目を迎えました。
「人身取引や奴隷の被害を生き延びた人は、人身取引・人権侵害に対する闘いの最前線にいます。それでも、人身取引の男性被害者が支援を求めるケースはそれほど多くありません。私が受けた支援は、多くが人身取引や現代の奴隷制度の複雑さを理解していなかったため、機能しませんでした。彼らは、男性がどのようにして深刻な性的暴行を経験することになるのか理解していなかったのです」。
ピライノ=グスマンの回復への道は、彼が6ヵ月間監禁されていた家に警察が踏み込んだ時から始まりました。彼はすぐに病院に運ばれ、必要な治療を受けましたが、ほどなくしてアメリカ合衆国移民関税執行局が運営する移民収容施設に送られました。
ピライノ=グスマンは、人身売買の被害者であることを認める資格認定書を受け取るまで、36ヵ月待たされました。その間、ピライノ=グスマンは、さらなる被害からどうやって身を守るか、どうやって自活していくかという問題に直面することになりました。働くことを許されなかったため、さらなる犯罪化の危険にさらされました。
「裁判官の前に連れて行かれました。裁判官は、何度も性的暴行を受けた私は次に他人に何かしでかす可能性が高いという理由で、高レベルの薬物投与を命じました」「アメリカの移民政策によって、そして私を保護するはずの制度によって、このような目にあいました。」
その後4年間、ピライノ=グスマンは21の異なる養護施設、シェルター、精神医療機関を経験しましたが、背負わされた重荷を解きほぐすことはありませんでした。現在33歳の彼はシアトルに住み、アメリカ市民権を取得しています。心理学博士であり、専門はトラウマ・インフォームド・ケアと現代的奴隷制の生存者へのメンタルヘルス・サービスです。2015年、当時の大統領バラク・オバマに任命され、2018年まで連邦人身取引諮問委員会の委員を務めました。

記事全文(英語):Trafficking survivor wants to “make human rights mainstream”

【翻訳・抄訳:反差別国際運動(IMADR)】

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