蓮舫民進党代表は、自身が二重国籍であるかどうかをめぐって一部で批判を受けたこと に対し、自らの国籍に関する個人情報を開示するとの意向を示しました。 私たちは、この意向表明が、蓮舫代表への差別に対する防御行為であることは理解しえ ますが、以下のように個人情報の開示は不要であり、かつ、さらなる差別の助長につなが るという強い懸念がありますので、開示しないよう要請します。
そもそも蓮舫代表は、日本国籍を有していることが明白である以上、国会議員になるこ とや民進党の代表になることに法的な問題はまったくありません。 また蓮舫代表は、1985 年の国籍法改正にともなう経過措置として届出によって日本国籍 を取得したとされています。この届出による国籍取得の場合、元の国籍を喪失しなければ ならないという規定もありません。
加えて、ペルー元大統領のフジモリ氏がペルーと日本の二重国籍をもちながら 2007 年の 第 21 回参議院選挙に立候補したときは、こうした疑義や批判は一切でませんでした。 このように、法的に問題がないにもかかわらず、蓮舫代表に、個人情報の開示を求める ことは、出自による差別を禁じている憲法第 14 条及び人種差別撤廃条約の趣旨に反する差 別そのものであると考えます。
1975 年の「部落地名総鑑事件」の教訓をもとに、企業による採用選考の場で応募者に戸 籍謄本の提出や本籍地の確認を求めることは禁じられるようになりました。このように、 戦後日本における人権確立の歴史のなかで共有されるに至った認識・規範に反して、蓮舫 代表に個人情報の開示を求めることはこの歴史を覆すことに他なりません。また外国にル ーツをもつ人々をはじめ、マイノリティの日本国籍者に「日本人であること」の証明を迫 ること自体が差別であり、同様の立場にたつ人々への影響は計り知れません。
日本では、統計のある 1987 年から 2015 年までに生まれた、両親のうち一方が外国籍者 である子どもは約 48 万人にのぼります。蓮舫代表が生まれた 1967 年にまで遡るとさらに 多くの人数になると推測されます。また過去 30 年間に帰化した人々も 36 万人を超えてい ます。さらに、日本生まれの外国籍者や、日本に移動・定住し、この社会を帰属の場と考 える外国籍者も多くいます。このような外国にルーツをもつ人々が、スポーツ、文芸、企 業、学術界など様々な場面で活躍をしていることは周知のとおりです。つまり、日本社会 はすでに多様なルーツをもつ人びとから構成されており、蓮舫代表は、ご自身も述べてい るように、そうした多様性ある 21 世紀の日本社会を象徴する存在だといえるでしょう。
こうした現実をふまえ、民進党には、「一人ひとりの基本的人権をさらに尊重する社会、 多様な個性や価値観が認められる人権尊重社会」の「実現」(民進党政策集 2016)を目指 す公党として、率先した役割を果たしていくことを期待します。