2021年 8月15日のタリバーン軍による首都カブール制圧のニュースは世界を駆け巡りました。1979年のソ連軍侵攻と10年後の撤退、長引く内戦、イスラム原理主義タリバーンによる抑圧的な支配、そして2001年9月11日の米国・同時多発テロに続いた米軍のアフガン攻撃。多民族国家アフガニスタンは内戦と世界の国々の政治的思惑にずっと翻弄されてきました。そのなかで、女性や子どもを含む脆弱で社会の周縁に置かれた集団は、常に人道、人権の危機にさらされてきました。とりわけ、20数年前のタリバーンによる厳格で抑圧的な支配は多くの人びとの記憶に今も鮮明に残っています。今回の米軍完全撤退と間髪を入れずに行われた政権移譲は大混乱を招いており、人びとに大きな不安と恐れを抱かせています。庇護を求める大量の人びとの国外脱出の試み、国内に残された女性、子ども、高齢者の安全で人道的な生存など、今後の事態の推移によりこうした問題がどうなるのかが懸念されます。そのため、アジアで平和、人道、民主主義、人権のために活動しているNGOが集まり緊急の共同声明を発表しました。IMADRもこの声明に加わり、アフガニスタンの人びとの人道と人権の保障を世界の優先課題にするよう求めます。
アフガニスタンの人道状況に関する共同声明
2021年8月17日
以下に署名する私たちは、2020 年2月の米国政府との合意に違反したタリバン軍の首都カブールへの8月15日の入場、アシュラフ・ガニー大統領の亡命、さらには数千、数万の人びとの近隣諸国への脱出など、今、アフガニスタンで起きている急速な事態の展開に懸念を表明します。こうした事態は、当局や関係者が政権移譲を円滑に行えなかったことによるものであり、非常に残念でなりません。
何よりも私たちは、米国、北大西洋条約機構(NATO)加盟国そして「確固たる支援機構(RSM)」部隊の撤退後に国内に取り残されるアフガニスタン人、とりわけ、タリバン政権のもと不安定な状況におかれると危惧される女性、子どもそして民主主義や人権の提唱者の安寧を最も懸念しています。
私たちは、タリバン、アフガン軍、米国、欧州連合、英国、トルコ、その他のNATO 加盟国、そして国連安全保障理事会を含むすべての関係者に対し、事態が展開を続けるなか、国際人道法に則ってアフガニスタン全土の民間人の安全を確保するよう求めます。
私たちはまた、国連およびアフガニスタン近隣諸国を含む国際社会が全力を尽くして、暴力から逃れてきた人びとの安全な通行を助け、基本的な生活必需品を提供するよう求めます。そして、アフガニスタンの人びとの願望とニーズを考慮した平和的な危機の解決を願います。
最後に、私たちは世界に向け、今この時こそアフガニスタンの人びとに寄り添い、人びとが求める支援、とりわけ人道援助を差しのべるよう呼びかけます。
共同署名団体: