2023.10.12

【新刊】現代世界と人権27『「戸籍」人権の視点から考える』

IMADRは、2022年に開催した連続学習会【『戸籍』—人権の視点から考える】の講演録である、現代世界と人権27『「戸籍」人権の視点から考える』を発行します。

【現代世界と人権27】「戸籍」人権の視点から考える
の表紙の画像

背景には、瓦屋根が並んでいるセピア色の写真が入っている。
中央にペールオレンジで塗りつぶされた正方形が位置している。
その正方形の中に、本のタイトル『「戸籍」人権の視点から考える』と記載がある。

日本の戸籍制度は固有で、他国の住民登録制度とは大きく異なります。日本国籍者であることを前提にし、戸主単位で作られ、その家の系譜の記録にもなるこの制度は、特定のマイノリティ集団への差別に加担してきたのではないでしょうか。
例えば、戸籍に記載された本籍地や家族関係を調べることで、これまで数えきれないほどの部落差別が行われてきました。日本も加入している国際人種差別撤廃条約の第一条は、差別の根拠の一つに世系(血統や系譜)を定義しており、国連は、部落差別は世系に基づく差別であると見解を出しています。
戸籍制度はどのような目的で作られ、どのような役割を果たしながら、現在に至るまで維持され機能してきたのでしょうか。どのような問題をもたらしてきたのでしょうか。反差別国際運動は、戸籍制度の歴史を振り返り、この制度がもたらす問題に取り組んできた研究者および活動家に議論をしていただくことで、現代社会における「戸籍制度」を人権の視点から実践的に明らかにする連続講座を2022年に開催しました。
6回にわたる講座はいずれも本質を突くものであり、示唆に富み、刺激的です。各回の講演内容を文字にして、本書に収めました。一人でも多くの方々に読んでいただけることを願ってやみません。
(「はじめに」より)

【目次】

はじめに

01 戸籍から個籍へ、そして人権侵害をおこさない仕組みへ……二宮周平
Ⅰ……「戸籍」とは何か
Ⅱ……「戸籍」と家制度
Ⅲ…… 新憲法下における「戸籍」
Ⅳ…… 戸籍が生み出す婚外子への差別
Ⅴ……「戸籍」から「個籍」へ―憲法の理念に即した公証制度のあり方を問う
Ⅵ……「戸籍」と人権侵害―戸籍の追跡機能と部落差別
Ⅶ……「戸籍」とプライバシー権
Ⅷ…… 社会のデジタル化と「戸籍」
Ⅸ…… おわりに―「衆一個人を以て基礎となす社会」のための制度へ

02 日本の植民地支配と戸籍 『民族』と『血統』とは……遠藤正敬
Ⅰ……「戸籍」とは何か
Ⅱ…… 戸籍の歴史と機能
Ⅲ…… 大日本帝国における戸籍と国籍
Ⅳ…… 戸籍による帝国臣民の区分
Ⅴ…… 皇民化とそのジレンマ
Ⅵ…… 戦後の植民地出身者への対応

03 なぜ韓国社会は戸主制/戸籍制度を廃止したのか 被植民地秩序、家父長制解体をめざす市民の連帯から学ぶ……梁・永山聡子
Ⅰ…… 研究者としての歩みを振り返って
Ⅱ…… 韓国社会におけるフェミニズム
Ⅲ…… 韓国の戸籍制度
Ⅳ…… 戸籍制度の解体のために
Ⅴ…… 戸籍制度解体にむけた社会運動
Ⅵ…… 戸籍制度解体が持つ意味

04 無戸籍問題とはなにか……井戸まさえ
Ⅰ……「無戸籍」の問題にたどり着くまで
Ⅱ……「無戸籍者」とは誰か?
Ⅲ……「巣鴨置き去り事件」の社会的文脈
Ⅳ…… 戸籍がつくり出す差別
Ⅴ…… 戸籍という「タブー」を破るには
Ⅵ…… おわりに

05 戸籍とマイナンバー制度 国は何を考えているのか……遠藤正敬
Ⅰ……「戸籍」と「マイナンバー」
Ⅱ…… マイナンバー制度を用いた国民管理の徹底
Ⅲ…… 戸籍とマイナンバーの連携はいかなる意味を持つか?
Ⅳ…… おわりに― マイナンバー制度へのいくつかの懸念

編集・発行:反差別国際運動(IMADR)

発売元:(株)解放出版社 *書籍のページはこちら

定価:1500+税

*IMADR会員の方は割引価格で購入していただけます。お問合せはこちらのメールアドレス(event@imadr.org)まで。

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