2023.11.1

 人権理事会54会期(9/11-10/13)IMADRレポート

国連人権理事会54会期(2023年9月11日開会)は、36本の決議と1本の議長声明を採択し、10月13日に閉会しました。IMADRの活動内容とかかわりのあるものを中心に、決議の一部をご紹介します。

スーダン事実調査団および農民の権利作業部会を設置、14のテーマ別および国別マンデートを延長、開発の権利に関する国際規約の草案を総会に提出

デジタル時代におけるプライバシーの権利に関する決議では、すべての国に対し、デジタル通信や新しく出現しつつあるデジタル技術の文脈も含め、プライバシーの権利を尊重し、保護すること、またプライバシーの権利に対する侵害や濫用をなくすための措置を講じることを求めました。また、人権高等弁務官事務所に対し、データの収集と処理に関連するプライバシーの権利の差別と不平等な享有に関する課題とリスクに関する報告書を作成し、理事会 57 会期(2024年9月)に報告書を提出し、その後、双方向の対話を行うよう要請しました。

人権と先住民に関する決議では、57会期中に開催される先住民族の権利に関するパネル・ディスカッションのテーマを、先住民族権利宣言の達成のために各国がとった法律、政策、司法判断、その他の措置とすることを決定しました。

高齢者の人権に関する決議において、理事会は人権高等弁務官事務所に対し、独立専門家の参加を得て、高齢者とその代表組織の有意義かつ効果的な参加を含め、障害者が十分にアクセス可能な人権専門家会合を招集し、あらゆる環境における高齢者に対する暴力や虐待、ネグレクトに関する国家の人権義務について討議し、勧告を作成するよう要請しました。

◆理事会は、強制失踪・非自発的失踪に関する決議で、作業部会のマンデートをさらに3年間延長することを決定し、自国における強制失踪の申し立てに関して実質的な回答を提供していない国に対し回答を求めるとともに、作業部会が報告書で行ったこの問題に関する関連勧告を十分に考慮するよう求めました。

開発の権利に関する決議では、開発の権利に関する国際規約の草案を総会に提出し、その検討、交渉、採択に委ねることを決定しました。

◆死刑問題に関する決議で、理事会は、まだ死刑を廃止していない国に対し、死刑を科すことのできる犯罪の数を減らし、「最も重大な犯罪」に厳格に限定するための積極的な措置をとるよう求め、また、死刑が義務的となっている(mandatory death penalty)国に対しては、その実務を廃止するよう求めました。理事会はまた、58会期中に行われるハイレベル・パネル・ディスカッションで、人権の向上に対する司法の貢献と死刑制度を取り上げることを決定しました。

すべての女児の教育への権利の平等な享有の実現に関する決議において、理事会はすべての女児が教育への権利の平等な享有を完全に実現できるような措置を強化すること、また、すべての女児の教育への権利に否定的な影響を与える法律、政策、慣行を適宜見直し、廃止し、撤廃することをすべての国に求めました。理事会は、人権高等弁務官に対し、気候変動がすべての女児による教育の権利の平等な享有の実現にどのような影響を与えうるかについての報告書を作成するとともに、すべての女児による教育の権利の平等な享有の実現が気候変動アジェンダにどのように貢献しうるかを強調するよう要請しました。

◆理事会は、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容のないスポーツの世界に関する決議において、各加盟国、地域および国際的なスポーツ連盟および組織と連携して、スポーツにおける人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容を防止し、それと闘うための啓発キャンペーンを開発し、資金を提供するよう促しました。理事会は、高等弁務官および国際連合機関のその他の関連部署に対し、スポーツにおける人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容と闘うことを目的とした、国際的なスポーツ団体との実践的な措置および政策の策定と実施を支援するよう要請しました。

◆「レトリックからリアリティへ(from rhetoric to reality):人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容に対する具体的行動のための世界的呼びかけ」に関する決議で、理事会は、「法の執行における人種的正義と平等を促進するための国際独立専門家メカニズム」に対し、年次報告書を総会に提出するよう要請しました。理事会は高等弁務官に対し、補完的基準策定に関する特別委員会(Ad Hoc Committee on the Elaboration of Complementary Standards)の14会期への法律専門家グループの参加を促し、人種差別的・排外主義的性質の行為を犯罪とする追加議定書草案の策定に向けた議論に貢献することを視野に入れた助言を提供するよう要請しました。理事会はまた、特別委員会の議長・報告者に対し、79会期の総会に進捗状況報告を直接提出するよう要請し、ダーバン宣言と行動計画の効果的実施に関する政府間作業部会の首席報告者に対し、調査を継続し、アフリカ系住民の人権の促進と全面的尊重に関する宣言草案に関連する問題について、既存の文言をまとめた文書を次回会合で作業部会に提出するよう要請しました。理事会は、独立有識者グループが毎年ジュネーブで4日間の会合を開き、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容との闘いを強化する必要性について認識を高めるため、それぞれ2稼働日のアドボカシー訪問を年2回実施することを決定しました。

アフガニスタンの人権状況に関する決議では、特別報告者のマンデートを1年間延長することを決定し、特別報告者に対し、女性と女児の差別、隔離、人間の尊厳の軽視、排除についてみられる制度的な問題について報告書を作成するよう要請しました。

スーダンで進行中の武力紛争による人権・人道危機への対応に関する決議では、すべての人権侵害および国際人道法違反が疑われる事実、原因などを調査する独立した国際的な調査団をスーダンに緊急に設置することを決定しました。

カンボジアに対する助言サービスと技術支援に関する決議では、人身売買、労働搾取、女性と子どもの性的搾取などの犯罪と闘うカンボジア政府の努力を歓迎しました。理事会は、カンボジアの人権状況に関する特別報告者のマンデートを2年間延長することを決定し、特別報告者に対し、同国における人権の保護と促進のための技術支援とキャパシティ・ビルディングに関する勧告を含めなど、マンデートの実施状況について報告するよう要請しました。

このほか、ブルンジやロシアなどの人権状況についても決議を行いました。 

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