課題と活動

部落・ダリット

ダリット差別

ダリット(壊されし人びとの意)に対する差別は、インドを含む南アジアを中心に存在します。ダリットは、長い歴史のなかでカースト制度の外側に置かれ、「不可触・不浄」であるとされてきました。そのため、人が嫌がる汚れた仕事を押し付けられ、住む場所、通る道、水汲み場、参拝寺院など、社会生活のなかで「上位」カーストから分離されてきました。

平等な機会を奪われてきたダリットは、政治、教育、生産活動においても周縁に置かれてきました。インドでは今も、農村のダリット世帯の30%以上が貧困線以下の生活にあり、栄養不良、住宅、衛生設備の欠如、生業につくことの困難など、さまざまな問題に直面しています。インドやネパールではダリットに対する不可触性を禁止し、アファーマティブアクションを制度化させてきましたが、ダリットに対する差別や偏見は現在も社会に根強く残っています。こうしたなか、インド、ネパール、バングラデシュ、スリランカではダリットコミュニティの中から、人として尊厳ある生存を求めた人権運動が発展してきました。

ダリットは次のような深刻な問題に直面しています(一部)
・債務奴隷や強制労働および児童労働
・ダリット女性に対する性暴力を含む暴力と加害者の不処罰
・手作業による糞尿処理の仕事
・災害時の差別
・教育の機会への制限と高い非識字率

南アジアのダリット

ダリット差別と日本の部落差別の共通点

封建時代の身分制度に起源をもつ部落差別も、部落民を最下層に置き、「不浄」であると捉え、人びとの嫌がる仕事に就かせ、社会生活のなかで交わることを避けてきました。この形態の差別を「職業と世系に基づく差別」であるとして、国連は2000年に調査を始め、2007年にその撤廃を目指した原則と指針案をまとめました。この調査で、西アフリカや北東アフリカの一部、そしてイエメンなどにも類似した形態の差別が存在していることが明らかになりました。
現在、この形態の差別を受けている人は世界で2億6千万人いると言われています。国連は、2009年に「世界はアパルトヘイトの壁を壊したように、カースト差別の壁を壊さなくてはならない」と断言しました。IMADRは部落・ダリットの運動体や国際NGOと協力しながら、この課題に取り組んでいます。

ダリット・部落差別に関する資料は資料室をご覧ください。