課題と活動

人種差別

見えなくされた日本の人種差別

日本にも人種差別があります。その影響を受けているのは、部落、アイヌ、琉球・沖縄の人びと、日本の旧植民地出身者とその子孫、そして外国人・移住労働者です。近年深刻さを増している在日コリアンなどに対するヘイトスピーチは人種差別の表れです。賃貸住宅契約や店舗入店での「外国人お断り」、警察による人種プロファイリングも人種差別行為です。日本は1995年に人種差別撤廃条約に加入しました。しかし、人種差別を犯罪であるとして処罰を定める法律がないため、被害は放置されたままです。こうした状況に対して、日本は国連をはじめ世界の国々から人種差別を禁止する法制度を早急に整えるよう求められています。

人種差別と闘うために

人種差別の被害者は長年日本においてマイノリティとして差別されてきました。法律未整備による被害およびその原因の放置に対して、国連特別報告者の報告をふまえ、日本の政策に報告の勧告が反映されることを求めるために、2007年2月マイノリティ当事者を中心にERDネットが結成されました。ERDネットは国連審査への関与、日本政府との交渉、集会や学習会の開催、情報交換などを行なっており、IMADRは結成時よりERDネットの事務局としてさまざまな役割を果たしています。

ERDネット概要・構成団体

国際人権システムの活用
日本が加入している人種差別撤廃条約はマイノリティコミュニティにとって人種差別と闘ううえでの大きな拠り所です。日本政府がうける人種差別撤廃委員会(CERD)をはじめ、自由権規約委員会や女性差別撤廃委員会などによる定期審査において、IMADRとERDネットに集まるNGOは、政府に差別撤廃の取り組みを求めて審査に関わってきました。これら機関は、日本政府に差別禁止法の制定と国内人権委員会の設置を繰り返し勧告してきましたが、未だ実施されていません。
ジュネーブに事務所をもつIMADRは、日本を含む人種差別と闘う世界のマイノリティコミュニティと協力して、国連において提言活動をはじめさまざまな取り組みを行っています。

CERDによる2018年日本審査の総括所見

ヘイトスピーチと闘う

IMADRはヘイトスピーチと闘うためにさまざまな取り組みを行っています。深刻な被害が続いているにもかかわらず、日本政府は表現の自由を理由にヘイトスピーチの刑事処罰を否定しています。NGOと世論の声に押され、2016年、いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」が制定されましたが、処罰規定はなく、啓発と相談業務を主軸にしています。

ヘイトスピーチ解消法  条文

附帯決議(参議院法務委員会)  附帯決議(衆議院法務委員会)

IMADRはヨーロッパ評議会の “NO HATE SPEECH MOVEMENT” を日本で進めています。

No Hate Speech キャンペーン

司法における人種主義 狭山裁判の再審を求める

1963年5月、埼玉県狭山市で起きた女子高校生殺害事件の容疑者として被差別部落出身の石川一雄さんが逮捕されました。「部落の者なら・・・」という見込み捜査と自白強要により、石川さんは犯人に仕立て上げられました。1977年に無期懲役が確定した後、石川さんの無罪を証明する証拠が数々明らかになっています。弁護団はこれまで3回にわたり再審請求をしていますが再審の扉は閉ざされたままです。マイノリティに対する偏見がもたらす冤罪事件は世界あちこちで起きています。狭山事件も公正さを欠く裁判であるとして、国連人権条約諸機関からやり直しが促されてきました。