コロナ・パンデミックの影響下、9月14日から10月7 日にかけて国連人権理事会45会期が開催されました。感染防止の観点より、人権理事会はオンラインとオフラインを組み合わせた形で行われました。マイノリティを取り巻く状況がさらに厳しさを増すなか、IMADRは今会期においても、世界の政府、国連関係機関、国際機関の前で、いくつもの口頭声明を読みあげ、インドのダリット、スリランカのアカウンタビリティと人権、先住民族の権利擁護者などについて働きかけました。
これらの活動は皆様からの寄付と会費によって支えられています。ぜひ寄付または会員としてのご支援をご検討ください。
■ 「人権高等弁務官による口頭アップデートと国連財政危機」 (9月15日)
要約:ギリシャの難民キャンプの消失、米国におけるアフリカ系の人びとに対する警察の蛮行、中国のウイグルの状況といった世界のマイノリティや移民の状況に関する高等弁務官の口頭報告を歓迎しました。特に、スリランカの状況に人権理事会が改めて注意を払うよう求めた高等弁務官の呼びかけを支持し、司法の独立性や法の支配が脅かされ内戦の被害者が置き去りにされ続けていることに深刻な懸念を表明しました。また、国連の財政危機とCOVID-19による制限によって国連人権システムが満足に機能できていない現状を憂慮し、各国が十分な資源とサポートを提供するよう求めました。
声明はこちら(英文): https://imadr.org/hc-oralupdate-hrc45-2020-os/
■ 「インドのダリットの水と衛生への権利」(9月16日)
要約:安全な飲料水と衛生に対する人権に関する特別報告者によるインド公式訪問フォローアップ報告書を歓迎し、この課題におけるダリットの実態を把握するための調査やマニュアル・スキャベンジングを無くすためのモニタリングの強化を行うようインド政府に求めました。また、COVID-19パンデミックにおいてマニュアル・スキャベンジャーたちは「最前線で闘う人びと」とたてまつられている一方で、防護具などは何も提供されていないことを指摘しました。
声明はこちら(英文):https://imadr.org/water-sanitation-dalits-india-hrc45-2020-os/
*この声明は国際ダリット連帯ネットワークの賛同を受けています。
■ 「スリランカにおける移行期の正義」(9月17日)
要約:昨年11月にラジャパクサ大統領が当選して以来、スリランカ政府による戦争犯罪や人道に対する罪の責任が疑われる軍人らの昇進、国防省をNGOの監督機関に指定、シンハラ仏教ナショナリズムの加速とさらなるマイノリティの疎外といった移行期の正義に関する特別報告者の勧告と逆行する一連の動きに懸念を表明しました。また、ラジャパクサ大統領が2000年にタミル人の民間人8人の殺害事件で有罪判決を受けた元陸軍軍曹を恩赦したことや、1995年の空軍による教会への爆撃で亡くなった人びとの追悼行事や失踪者の家族による抗議活動を警察が繰り返し妨害していることを指摘しました。現在議論されている憲法改正案は大統領の権限を大幅に拡大し、司法と独立機関の独立性を弱めると警鐘を鳴らしました。このような背景から、スリランカに関する国際的なアカウンタビリティの機関を人権理事会が設置するよう求めました。
声明はこちら(英文):https://imadr.org/transitional-justice-srilanka-hrc45-2020-joint-os/
*この声明はアムネスティ・インターナショナル、フランシスカンズ・インターナショナル、ヒューマンライツ・ウォッチ、フォーラム・アジアとの共同声明です。
■ 「先住民族の権利擁護者に対する報復」(9月23日)
要約:先住民族の権利に関する年次パネルディスカッションにおいて、国連人権メカニズムにおける先住民族の権利擁護者の活動の重要性を踏まえた上で、国連先住民族基金とOHCHR先住民族フェローシップが果たす役割とそれらのプログラムの参加者に対してIMADRがサポートを行ってきたことを紹介しました。しかし同時に、2017年に人種差別撤廃委員会(CERD)のロシア審査に参加した先住民族の権利擁護者が報復措置の被害にあったように、国連人権機関と協力した先住民族の人びとが報復や嫌がらせを受けることでプログラムの効果が損なわれることに懸念を表明しました。
声明はこちら(英文):https://imadr.org/ips-hrds-hrc45-2020-os/
■ 「ダーバン宣言および行動計画20周年」(10月1日)
アフリカ系の人びと、マイノリティ、カースト差別や世系差別を受けている人びと、先住民、移住者といった人びとはパンデミックの影響により苦しんでいる一方で、保健医療や社会保障などのCOVID-19への各国の対応はたびたびこれらの脆弱な人々を置き去りにし、長年の構造的な人種差別を是正できていないことを指摘しました。その上で、今会期で人権理事会が来年のダーバン宣言および行動計画(DDPA)採択からの20周年を記念する決議を検討していることを歓迎しました。加盟国に対し、人種差別撤廃条約に沿って差別を禁止し、被害者を救済し、被差別コミュニティの生活を向上させるための措置を導入するなど、言葉ではなく行動によって20周年を祝うよう求めました。
声明はこちら(英文):https://imadr.org/ddpa-20th-anniversary-hrc45-2020-os/
◆書面による声明:「スリランカにおける真実、正義、賠償と再発防止保証」について詳しい書面声明を提出しています。https://imadr.org/transitionaljustice-srilanka-hrc45-2020-ws/
◆その他、以下の口頭声明に賛同しています。
人権教育行動計画とCOVID-19(英文):https://ngowghrel.wordpress.com/2020/10/01/plan-of-actions-implementation-covid-19/
国連特別手続きの独立性(英文):https://www.amnesty.org/download/Documents/IOR4031322020ENGLISH.pdf
COVID-19パンデミックにおける中絶への権利(英文):https://www.sexualrightsinitiative.com/resources/hrc-45-joint-civil-society-statement-abortion
アフリカ人およびアフリカ系の人びとに対する警察の蛮行およびその他の人権侵害に関するOHCHR報告書に対する要請(英文):https://www.lrwc.org/ws/wp-content/uploads/2020/09/Joint.Oral_.Statement.UNHRC_.Res_.43.1.Final_.pdf
45会期閉会におけるNGO共同声明(英文):https://www.ishr.ch/news/hrc45-civil-society-presents-key-takeaways-human-rights-council