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人種差別撤廃条約 国連採択60周年記念イベント開催

2025.12.05

 12月4日(木)、人種差別撤廃委員会は、人種差別撤廃条約の国連採択60周年を記念するハイレベルイベントを開催しました。イベントの概要を以下のように報告します。

(写真:ゲイ・マクドゥーガル副委員長の挨拶の様子 ©️UN Web TV)

 イベントは、ゲイ・マクドゥーガル人種差別撤廃委員会副委員長の挨拶で開会した。人種差別の被害者、そして人種差別と闘ってきた、また今も闘い続けているすべての人びとにむけ、厳粛な敬意を表する。人種差別撤廃条約の採択は、国連創設からわずか20年後に達成された偉業である。ある人の命は別の人の命よりも優れているという虚偽の言説により、命、人生、そして夢を奪われた数百万もの人びとのことを想起し、その悲しみを分かちあいたいと述べ、最後に、黙祷を捧げるよう呼びかけた。

 次に、ナダ・アル=ナシフ国連人権副高等弁務官とミハウ・バルチェザック 人種差別撤廃委員会委員長が挨拶をした。

ナダ・アル=ナシフ国連人権副高等弁務官
 この重要な記念日に、人種差別撤廃の取り組みを一層強化し、人種差別の被害者のレガシーを称えることが私たち全員の責任であることをあらためて確認したい。今、あちこちで、民族やアイデンティティを背景にした対立が残虐な犯罪につながっている。60年を経た今も、条約の目的である「あらゆる形態の人種隔離や人種差別のない世界を築くこと」は達成されていない。このような状況のなか、人種差別撤廃委員会の活動は不可欠である。

ミハウ・バルチェザック委員長
 60年にわたり、人種差別撤廃条約は、加盟国の憲法改正を促し、国内法の制定を後押しし、市民社会のエンパワメントに貢献してきた。しかし、構造的で制度的なレイシズムは世界各地で依然として存在し、司法、教育、医療、住宅、雇用、政治的参加へのアクセスに負の影響を与えている。各国は、条約の国内実施を強化し、条約機関のシステムと手続きに全面的に協力することで、条約加入で示した誓いを改めて表すことを求められている。

 続いて、地域グループ、締約国、国際機関の代表が、人種差別を根絶するための世界的な闘いにおける条約の重要性、60年間における進歩、ヘイトスピーチの蔓延など現代社会の課題とそれへの取り組み、植民地時代の歴史的不正義に対する賠償の必要性に関して発言した。

パネル3の様子
(写真:パネル3の様子©️UN Web TV)

パネルディスカッション
 イベントでは3つのパネルディスカッションが開かれた。各セッションでは、パネリストによる報告の後、政府関係者、人種差別撤廃委員、その他のステークホルダーが発言や質問を行った。

◼️パネル1「条約60年:条約の実施・グローバルからローカルまで ―進展と課題」
 人種差別との闘いにおける先住民族の参加の重要性、アフリカ系の人びとへの賠償、差別的テクノロジーによるものを含む人種差別との闘いにおける新たな課題などに関して議論された。

◼️パネル2「人種、皮膚の色、世系又は民族的もしくは種族的出身―区別のない平等の約束を実現する」
 アフリカ系の人びと、先住民族、移住者、ダリット、ロマ、その他の民族的マイノリティが依然として直面している人種差別、平等および包摂的な社会を促進するための措置などに関して議論が行われた。

◼️パネル3「条約60歳 ―現役で活躍する文書:成果を礎に未来を創る」
 先住民族の権利強化における条約の役割、個人通報制度の重要性、人種差別撤廃委員会の改善すべき点などに関して議論が行われた。

 閉会にあたり、ミハウ・バルチェザック委員長は、このイベントは、55年間で委員会が大きく成長したことの証となったと締め括った。

イベントの模様は UN Web TV からご覧いただけます(午前の部午後の部)。
イベントプログラムはこちら、イベントのサマリー(全文、英語)はこちら