国連憲章は、差別なくすべての人の人権が尊重されることは国連の主要な目的と原則の一つであると規定しています。そのため、国連のすべての機関はこの任務を満たす義務を帯びています。
2013年、国連は「人種差別とマイノリティの保護」を国連のあらゆるレベルの活動における重要課題として取り組むべく、ガイダンス・ノートを出しました。そのなかで、特に、世系に基づく差別(カースト差別や部落差別など)の影響をうけている人びとの多くは、社会の周縁に追いやられており、特別な注意が必要であると勧告しています。その勧告にそって、国連人権高等弁務官事務所は2017年3月に国連の関係部署に向けた「世系に基づく差別撤廃のためのガイダンス・ツール」を完成させました。
世界には、世系に基づく差別の影響を受けている人が2億6千万人います。その多くはインド、ネパール、バングラデシュ、スリランカなど南アジアに集中していますが、日本、中東、アフリカの一部にも世系に基づく差別は存在しています。さらには、ヨーロッパや北米などに南アジアから移住したディアスポラのコミュニティにも存在しています。
この差別のもと、多くの人びとは人権を否定され、発展から取り残され、貧困を強いられてきました。この差別を受けている集団の女性たちは、女性であるがゆえに、さらに複合的な差別にさらされています。
ガイダンス・ツールはそうした視点を重視しながら、世系に基づく差別撤廃のために、国際人権基準を基本にしながら、国連スタッフが職務を遂行するうえでの手引きや助言を提供しています。
ガイダンス・ツールは包括的に問題をとりあげており、国連だけではなく、それ以外のさまざまな利害関係者にとっても有用です。そのため、IMADRはこの文書を日本においても幅広く活用してもらえるよう、日本語版を完成させました。ガイダンス・ツール日本語版(全77ページ)はこちらからご覧いただけいます。