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先住民に関する一般的勧告23(1997年、第51会期)

1.人種差別撤廃委員会の実行、特に、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」第9条に基づく締約国の報告書の検討において、先住民の状況は常に密接な注目と関心をよぶ事項であった。この点で、委員会は、常に次のことを確認してきた。すなわち、先住民に対する差別は条約の適用範囲内のものであること、及び、かかる差別を戦い、かつこれを撤廃するためのすべての適当な措置がとられなければならないということである。

2.委員会は、総会が1994年12月10日から開始される「世界先住民国際10年」を宣言したことを注目し、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」の規定が先住民に適用されることを再確認する。

3.委員会は、世界の多くの地域において、今日まで先住民が差別を受け、その人権及び基本的自由を奪われ、現在もそうであるという事実、特に、先住民が、その土地及び資源を入植者、商業会社及び国営企業に奪われてきたという事実を認識している。その結果、今日まで先住民の文化及びその歴史的アイデンティティの維持が脅かされ、現在もなおそうである。

4.委員会は、締約国に対して特に次のことを要請する。
a. 国家の文化的アイデンティティを豊かにするものとして、先住民の異なった文化、歴史、言語及び生活様式を認識し、かつ尊重すること、並びにその維持を促進すること
b. 先住民の構成員が自由であり、かつ尊厳及び権利において平等であり、いかなる差別、特に先住民の出身であること又は先住民としてのアイデンティティをもつことを理由とした差別を受けないことを確保すること
c. 先住民に対して、その文化的特性と両立する、持続的な経済発展及び社会発展が可能となる諸条件を提供すること
d.先住民の構成員が公的生活に効果的に参加することについての平等の権利を有することを確保し、並びに、十分な説明を受けてなされる同意(informed consent)なしに、先住民の権利及び利益に直接関係する決定を行わないことを確保すること
e.先住民の社会が、その文化的伝統及び慣習を実践し、及びこれらを再活性化する権利並びにその言語を維持し及び実践する権利を行使することができるよう確保すること

5.委員会は、締約国に対して特に次のことを要請する。先住民の共有地・地域及び資源を所有し、開発し、管理し及び使用する先住民の権利を承認し及び保護すること、先住民が伝統的に所有してきた土地・地域が奪われ、又は当該土地・地域が先住民の自由なかつ十分に説明を受けてなされる同意なしに他の者が居住され若しくは使用されている場合には、当該土地・地域を返還するための措置をとることである。実際上の理由によりこれが不可能な場合にのみ、原状回復を受ける権利に代えて、正当な、公正なかつ迅速な補償を得る権利が認められるべきである。かかる補償は、可能な限り土地・地域の形態をとるべきである。

6.委員会は、さらに、締約国に対して、自国領域内の先住民と協力して、条約のすべての関連規定を考慮に入れて先住民の現状に関する十分な情報をその定期報告書の中に含めることを要請する。