人種差別撤廃委員会(CERD)は8月に開催される第96会期(2018年8月4日~8月30日、ジュネーブ)において日本政府第10・11回定期報告書を審査します。ヘイト・スピーチへの抜本的な対策を含み、日本政府にさまざまな勧告を行った2014年8月の審査からちょうど4年となる今回の審査でも、待ったなしの日本の人種差別に関する問題が多数とりあげられます。8月審査においてとりあげる課題について、このたび CERD は以下のように発表をしました(仮訳:IMADR)。CERDリスト・オブ・テーマ日本語訳
CERD/C/JPN/Q/10-11
2018年5月31日
原文:英語
人種差別撤廃委員会
第96会期 2018年8月6日-30日
第10・11回日本定期報告に関するリスト・オブ・テーマ(質問テーマ)
国別報告者による付記
1.人種差別撤廃委員会はその第76会期において、国別報告者は締約国の報告書審査における締約国代表団と委員会の間の対話を導き、焦点を合わせるために、短いリスト・オブ・テーマを当該締約国に送付することを決定した(A/65/18, para 85参照)。本文書にはそのリスト・オブ・テーマが含まれている。これは完全なリストではない。その他の問題も対話の過程でとりあげられる。このリスト・オブ・テーマへの書面による返答は求められていない。
国内法における条約とその実施に関する制度的および政策的枠組み(第1、2、4、6条)
2.憲法における人種差別に関する定義を条約第1条に一致させる取り組みに関する情報(CERD/C/JPN/ CO/7-9, para 7; CERD/C/JPN/10-11, para 10)。
3.人種差別を禁止する包括的法律の制定に向けた取り組みに関する最新の情報(CERD/C/JPN/CO/7-9, para 8, CERD/C/JPN/10-11, para.101)。
4.パリ原則にしたがった国内人権機関設置に向けた取り組みに関する最新の情報 (CERD/C/JPN/CO/7-9, para.9, CERD/C/JPN/10-11, paras.108-109)。
5.条約第4条 (a)(b)の留保撤回のためにとった措置に関する最新の情報(CERD/C/JPN/CO/7-9,para.10, CERD/C/JPN/10-11, paras.124-126)。
6.メディアおよびインターネット上のヘイト・スピーチをなくすための措置の実施とその影響に関する最新で詳細な情報;メディアを通した人種差別および人種的暴力への扇動の防止に関する放送法の実施とその影響に関する情報(CERD/C/JPN/CO/7-9, para.11, CERD/C/JPN/10-11, para.131)。
7.ヘイト・スピーチや憎悪の扇動を広める公人および政治家に対する制裁に関する情報を含み、ヘイト・スピーチおよびヘイト・クライムの報告、調査、起訴および有罪判決の件数に関する情報(CERD/C/ JPN/CO/7-9, para.11, CERD/C/JPN/10-11, para.130)。
8.反ヘイト・スピーチキャンペーンと2016年の「ヘイト・スピーチ解消法」制定がもたらした影響に関する情報;同法律第5条に述べられている差別的言動に関する相談の実施およびその影響に関する詳細な情報(CERD/C/JPN/10-11, paras.105-107 and 133)。
マイノリティおよび先住民族の状況(第2 ~ 7条)
9.アイヌ民族の雇用へのアクセス、教育および生活条件を改善し、アイヌ民族の土地と自然資源への権利を保護し、文化と言語の権利の実現を向上させ、アイヌ政策推進会議およびその他の諮問機関におけるアイヌ民族代表の数を増やすためにとった措置の実施とその影響に関する最新の情報 (CERD/C/JPN/ CO/7-9, para.20, CERD/C/JPN/10-11, paras.17-33)。
10.琉球・沖縄の人びとの代表と協議しながら、琉球・沖縄の人びとの権利保護のための措置の実施とその影響に関する情報;琉球の諸言語を保護し、その言語による教育を促進し、琉球の人びとの歴史と文化を教科書に含めるために採り入れたすべての措置に関する情報(CERD/C/JPN/CO/7-9, para.21,CERD/ C/JPN/10-11, paras.34-36)。
11.被差別部落民の明確な定義を採用し、生活条件を改善し、部落民と部落民以外の人口の間にある社会経済的格差をなくし、戸籍記載情報の保護を含み、部落の人びとを部落差別から守るためにとった措置に関する情報;2016年の「部落差別解消推進法」の実施とその影響に関する情報 (CERD/C/JPN/CO/7-9,para. 22)。
12.法執行官によるムスリムの民族的あるいは民族宗教的プロファイリングの防止のためにとった措置に関する情報 (CERD/C/JPN/CO/7-9, para.25, CERD/C/JPN/10-11, para.142)。
13.マイノリティおよび先住民族の女性に対する暴力防止に関する2015年第4次男女共同参画基本計画の影響に関する情報;マイノリティおよび先住民族の女性に対する暴力の通報件数およびそうした暴力の加害者の調査、起訴および有罪判決の件数に関する情報;日本国籍者あるいは永住権をもつ外国籍者と結婚した外国人女性の離婚による国外退去を防止し、彼女たちを確実に保護するために、在留資格に関する法律の見直しのためにとった措置に関する情報(CERD/C/JPN/CO/7-9, para.18)。
14.「慰安婦」に関する調査の結果、彼女たちの権利の侵害に関する調査の結果を含む「慰安婦」問題の解決に向けた取り組み、ならびに生存する元「慰安婦」およびその家族への適正な賠償の支給、これらに関する情報 (CERD/C/JPN/CO/7-9, para.18)。
15.人種差別の防止に関する研修および啓発活動の実施とその影響に関する最新の情報(CERD/C /JPN/CO/7-9, para.26, CERD/C/JPN/10-11, paras.197-216 and 110-122)。
移住者、庇護希求者および難民を含む市民でない者の状況 (第5 ~ 7条)
16.雇用、教育、医療および住宅の領域を含め、移住者に対する人種差別に関する措置の実施とその影響についての最新で詳細な情報 (CERD/C/JPN/10-11, paras.49-51 159-162)。
17.2016年11月に制定された外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律および2017年4月に公布された関連する政令および省令の施行など、技能実習制度改革のための措置の実施とその影響に関する情報;技能実習制度の監理団体に行った労働基準検査に関する最新のデータおよび情報 (CERD/C/JPN/10-11, paras.46-48)。
18.公務員職、国民年金制度および公共の場所や施設へのアクセスを含み、市民でない者の状況の改善のためにとった措置に関する詳細な情報(CERD/C/JPN/CO/7-9, paras.13-15, CERD/C/JPN/10-11, paras. 147-149,165, and 177-179)。
19.北朝鮮**の学校(訳注:朝鮮学校)の補助金の利用を認めることを含み、北朝鮮**の(訳注:朝鮮学校で学ぶ)子どもたちの教育へのアクセスを改善するためにとった措置に関する最新の情報 (CERD/C/JPN/ CO/7-9, para.19, CERD/C/JPN/10-11, paras.169-175)。
20.特に性的搾取を目的としたマイノリティ女性に関するものを含み、人身取引に対する具体的法律の制定のためにとった措置に関する情報と、報告書に列挙されている人身取引防止のための研修およびその他の措置の影響に関する最新の情報 (CERD/C/JPN/10-11, paras.55-71)。
21.難民および庇護希求者に関して一般社会および当局の間の非差別の意識と理解の促進のためにとった措置に関する情報;難民および庇護希求者の住居、教育、雇用そして基本的サービスへのアクセスを改善するためにとった措置に関する情報 (CERD/C/JPN/CO/7-9, para.23)。
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**:日本政府はその報告書において North Korean と事実誤認の表記をしていることによる。
仮訳:反差別国際運動(IMADR)
関連資料:
CERD第96会期審査関連 https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/SessionDetails1.aspx?SessionID=1196&Lang=en
日本政府第10・11回報告書(日本語)https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000272984.pdf