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女性差別撤廃委員会 90 会期が終了

2025.02.26

2月3日に始まった女性差別撤廃委員会(CEDAW)90 会期は、2月21日に終了しました。今会期について、国連が発表した報告をもとに、以下概要を報告します。

◾今会期では、ベリーズ、ベラルーシ、コンゴ、コンゴ民主主義共和国(例外的レポート)、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、ネパール、スリランカ各政府が提出した報告書が審査され、最終日にその総括所見が採択されました。詳しくは本記事の後半をご覧ください。

◾2月17日には、現在作成中のジェンダーステレオタイプに関する一般勧告について46カ国の締約国と17のNGOも交えて協議されました。

◾CEDAW 作業部会が、女性に対するオンラインおよびテクノロジーを利用したジェンダーに基づく暴力に関するワーキングペーパーを草案しています。

90会期で採択された総括所見の概要(一部)

ベラルーシ

委員会は、女性人権擁護家に対する深刻な報復や監視、国外追放、ジェンダーに基づく暴力に関する報告を引用し、市民スペースが縮減していることに深く懸念を示し、人権アドボカシーの押さえこみに締約国が躍起になっていることを強調した。委員会は、国内であれ亡命先であれ、女性の人権擁護家がハラスメント、政治的意図をもった訴追、恣意的な拘束などなしに人権擁護が行えるようにするよう促した。また、彼女たちの活動を制限する法律を廃止するよう勧告した。

ベリーズ

委員会は、女性に対する交差的形態の差別に対処するための包括的な法律が欠如していることに懸念を表し、ジェンダーとエスニシティに基づく差別を明確に禁止するよう憲法の改正を求めた。また、売春に従事する女性、障がいのある女性、LBGT女性を差別的に取り扱う入国管理法の条項を廃止し、差別的な規定や文言を削除するために、包括的に立法を見直すことも求めた。

コンゴ

委員会は、女児の40%しか中等学校に通っておらず、農村部や先住民族の女児、障がいのある女児の在籍率はさらに低いという事実に懸念を示した。また、初等教育において女児用トイレが不足していることや、先住民族の女児や障がいのある女児が特別学校に分離されていることを指摘した。啓発キャンペーンを通して女児教育の重要性を促し、指導やワークショップを通してSTEM分野の女児を支援し、学校の設備やその他リソースを充実させることで、先住民族の女児と障がいのある女児が普通学校で学べるようにし、十分なリソースを用いて国家教育行動計画を強化するよう求めた。

コンゴ民主主義共和国

委員会は、紛争に関連した性暴力が蔓延しており、被害者の94%が女性と女児であることに深い懸念を表した。家父長制や女性の固定観念が根差している社会では、そのような暴力は敵対する集団を罰したり民間人に恐怖を植え付けたりするための手段として使われることが多い。採掘ビジネスに増税を課すなどして、十分な資金をもって性暴力ゼロ容認の政策を強化し、性暴力を根絶する包括的方策を採用するよう促した。また、家父長的な規範や女性蔑視、戦闘的な男性らしさを根絶するために、啓発キャンペーンを実施し、ジェンダー平等教育を学校カリキュラムに組み込むよう勧告した。

リヒテンシュタイン

委員会は、肯定的な傾向が見られるにも関わらず、国会と市町村議会、民間部門の管理職における女性の割合が依然として低いことを懸念した。国会と市町村議会の選挙において男女同数の候補者を推薦するため、また政府閣僚、公務員、外交官に女性を任命するために、政党にジェンダークオータの義務化を求めるよう促した。また、民間部門の管理職における女性の代表を増やすよう求めた。

ルクセンブルク

委員会は、「婚内子」と「婚外子」の区別を維持し、法の下での不平等や社会的不平等を助長していることを懸念した。出生の地位に基づく法的あるいは行政的区別を撤廃するための法律を即座に制定するよう求めた。

ネパール

委員会は、チャウパディ(生理中の女性と女児の隔離)や結婚持参金、迷信による魔女狩り、カーストに基づく差別、児童婚といった有害な慣行が明確に犯罪化されているにも関わらず、多くのコミュニティにおいて女性への人権侵害が依然として繰り返されていることを懸念した。このような有害な慣行を禁止する国内の法を効果的に実施するよう求めた。また、特に伝統的指導者や宗教指導者、このような慣行が蔓延している地域を対象に、これら慣行の有害な影響に関する啓発・教育プログラムを強化するよう勧告した。

スリランカ

委員会は、性暴力やその他の形態のジェンダーに基づく暴力が蔓延し、少なくとも5人に1人の女性がパートナーからの身体的 あるいは 性的暴力を経験していているにも関わらず、起訴率と有罪率が低いことに懸念を示した。また、夫婦間強姦と身近なパートナーからの暴力は明確に犯罪化されていないことにも懸念を持って留意した。性暴力を含む、女性に対するあらゆる形態のジェンダーに基づく暴力の犯罪的性質について、啓発キャンペーンを強化するよう求めた。また、あらゆる状況において夫婦間強姦を明確に犯罪化するように、刑法を改正するよう求めた。さらに、女性に対するジェンダーに基づく暴力の事件を効果的に捜査・起訴するために、法執行機関や司法当局の能力を強化するよう勧告した。

◾今後

次回会期は、6月16日から7月4日に行われ、アフガニスタン、ボツワナ、チャド、メキシコ、モナコ、サンマリノ、タイの政府報告書審査が行われます。また、4月7日から11日には、技術協力会合を開き、フィジー、ソロモン諸島、ツバルの報告書を審査し、締約国でない太平洋諸島との交流を図ります。

*各国の総括所見はこちら

翻訳・抄訳:反差別国際運動(IMADR)