2024.10.10

CEDAW 89会期第1週 ― 3ヵ国に関してNGOが委員会にブリーフィング

 10月7日に始まった女性差別撤廃委員会(CEDAW)89会期では、ラオス、サウジアラビア、ニュージーランド、チリ、カナダ、日本、キューバ、ベニン各政府が提出した報告書の審査が行われる。7日午後には、1週目に審査が行われるラオス、サウジアラビア、ニュージーランドに関するNGOの発言者と委員会との間で、インフォーマル・パブリック・ミーティングが開かれ、これらの国における女性の人権状況に関して報告と質疑が行われた。

NGOの発言
ラオス                                              NGO発言者は、ジェンダーに基づく暴力を経験する女性・少女の割合が高いことを指摘した。政府は、女性への暴力はどのようなものかについて誤解をしている。女性・少女が保護や法手続きを利用できるように、彼女たちの意識を高め、シェルター拡充の基盤整備を政府が行うよう促した。また、女性が暴力に関して司法制度を利用する上で限界があることも指摘した。女性に対する暴力事件においては、被害女性の代理人の関与がないまま慣習法が適用されることが多い。女性と少女の保護を確保するために、法執行および調停部門の能力を強化し、関連法を見直すことが勧告された。
 農村部と都市部では若年層の出産率に大きな差がある。農村部においては、15歳から19歳の少女の23.5パーセントが既婚あるいは交際相手がいる。政府に対し、少数民族の女性向けのコミュニケーション手段を開発し、地域病院やリソースを提供するよう求めた。15歳から17歳の若い女性の約32パーセントは主に経済的な理由で学校に通っていない。政府は、モニターとデータ収集システムを強化するべきであると促した。若い女性や少女が、インターネット上で中国人の男性に売られることがよくある。インターネット上の人身取引は衰えることなく続き、加害者は野放しになっている。多くの女性人権擁護者が殺害されたり、失踪している。政府は全力を尽くして状況を改善すると発表したが、法律は机上のものだけであり、実際に機能はしていない。
 モン族が直面している制度的差別は、リストオブイッシュに含まれていなかった。モン族は国で3番目に大きな民族集団であり、その女性や少女たちは貧困、欠乏、医療サービスの欠如に苦しんでいる。モン族は超法規的殺害の標的にされている。女性や少女は、特に人身取引、性奴隷、レイプの標的にされている。ラオス政府は、モン族の女性に対する暴力に対処しなければならない。NGO発言者は、委員会に対して、これらの問題を締約国ラオスに提起するよう強く要請した。失踪した家族や友人のために立ち上がる女性は強い圧力を受ける。愛する人の遺体が戻ってくるのか、詳しい安否情報が得られるのか、多くの女性たちが待ちつづけている。

サウジアラビア
 NGO発言者は、前回の審査以降、男性後見人制度に関して前向きな改革がいくつか行われたことを認めた。しかし、当局は人権擁護者に対して容赦ない弾圧を続け、女性人権擁護者を不当に裁き、拷問や投獄を続けている。2022年に施行された家族法は、家庭生活のあらゆる側面で差別的制度を強化し、DVやレイプから女性を十分に保護するよう機能していないと述べた。
 政府は、刑務所に収監されているすべての女性人権活動家を釈放し、差別的な法律を廃止するべきだと促した。多くの女性人権活動家が違法な渡航禁止令の対象となり、人権問題について声を上げると恣意的に逮捕されている。当局は反テロ法を悪用して女性人権擁護者を標的にし、秘密の拘禁施設に収容して、家族との接触を禁止することがよくある。政府は、女性人権擁護者の保護や女性の社会参画を保障する必要がある。
 2020年から2024年の間、麻薬関連犯罪で少なくとも11人の女性が処刑されたが、その全員が移民女性であった。複数の女性が弁護の機会がないまま有罪判決を受けた。特に死刑囚の女性については、司法手続きの透明性を高める必要がある。死刑執行のモラトリアムが必要である。
 NGO発言者は、国内における移民家事労働者の窮状を強調し、サウジアラビアは入国管理手続き中の移民女性とその家族の待遇を改善すべきだと述べた。サウジアラビアは、搾取から逃れようとする女性を罰する制度を廃止すべきである。妊娠した女性移民労働者に対する収容は停止すべきである。サウジアラビアはILO条約第198号を批准し、家事労働者にも労働法を適用すべきである。家事労働者は低賃金で雇用され、尊厳を無視した非人道的な環境での生活を強いられている。中には、身体的暴力、空腹、セクハラなどの極端な虐待を受けている者もいる。こうした女性たちにとって、正義は手の届かないものとなっている。

ニュージーランド
 NGO発言者はニュージーランド政府がジェンダー平等に焦点を当てるよう強く求めた。先住民族の女性たちの多くが、住む家がなく安全ではない環境にある。ニュージーランド政府は、植民地時代の暴力を繰り返してきた。マオリ族の女性や少女はマイノリティグループであり、周縁に追いやられてきた。政府は彼女たちのために行動計画を策定する必要がある。委員会には、政府に対して条約への公約を再確認するよう勧告してほしい。
 強制結婚の問題は、委員会の前回の勧告にもかかわらず、適切に対処されていない。永住許可をもたない女性たちは、裁判や社会保障を利用する際に大きな障壁に直面している。宗教による虐待は認識されておらず、女性たちは宗教の名のもと婚姻状況について宙ぶらりんの状態に置かれている。委員会は、民族的多様性が高まっているニュージーランドで暮らす移民女性のために、より強力な改革を政府に促すべきである。
 政府は、ストーカー行為を犯罪として認定するとした公約を守るべきである。政府は、被害者が正義を求めることを妨げられないよう、法の執行と裁判手続きを評価すべきである。政府は、インターセックスの人々に対して行われている同意のない外科手術について調査を行い、必要に応じて補償を行うべきである。トランスジェンダーおよびインターセックスの人々を保護する必要がある。
 農村地域ではインターネットの普及が限定的であり、地域住民に影響を及ぼしている。政府は、これらのコミュニティのためのモバイル通信およびインフラに投資すべきである。マオリ族を含み、異なる女性たちの間の賃金格差を是正する必要がある。締約国は、政策立案に役立つ詳細なデータを収集する国内機構を設置すべきである。

委員会からNGOに対する質問
*宗教上の強制的な結婚から女性を解放するためにニュージーランド政府は何をすべきと考えているか?
*マオリ族の女性や少女の間で無国籍の状態にある人がいるか?女性、国籍、市民権に関係する問題はあるか?
*ニュージーランド政府がインターセックス臨床リフェレンス・グループを設けたことを踏まえ、NGOから何か積極的な提言や動きはあるか?
*ニュージーランドでは教育に影響を及ぼす特定の課題があるか?それら課題に対処するために政府は何ができると思うか?
*ニュージーランドでは、気候変動に影響を及ぼしているとして申し立てられた採掘企業に対する裁判の判決がでた。これについて、さらなる情報を提供できるか?
*ラオスにおける女性のインターネット上での人身取引を、政府は重大な問題として認識しているか?DVの増加についてどう考えているか?
*ラオスにおける教育の現状について知りたい。
*サウジアラビアでは真の変化があったと主張する情報が提供された。女性は運転免許証を取得し、自分のパスポートで旅行することができるようになったと。これらの改革に関してさらに多くの情報を提供できるか? 何人の女性人権擁護者が投獄されているのか?
*サウジアラビアの人身取引に関する法律の限界について、主な問題は何であると考えるか?

注】これら質問に対して、即答できるものについてはNGOから回答があった。詳細な回答は各国の審査 が始まる前までに委員会に提供される。

  ***CEDAWウェブサイトの全文はこちらから  (翻訳・抄訳:反差別国際運動) 

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