2018年8月16、17日に第96会期人種差別撤廃委員会において実施された日本政府報告書の審査の総括所見が、8月30日、同委員会により発表されました。人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット、事務局IMADR)で急ぎ総括所見の翻訳を行いました。ここに添付いたします 2018CERD日本審査総括所見最終版 。オリジナルの英語はこちら CERD CO JPN Final
人種差別禁止法の制定と国内人権機関の設置
総括所見の懸念と勧告の部分の冒頭、委員会は前回審査(2014年8月)の勧告の一部が実施されないままであると懸念を示しました。そして、2017年の普遍的定期的審査において多数の国から勧告をうけたように、パリ原則に基づく国内人権機関を設置するよう勧告を行いました。さらに、人種差別を禁止する法的枠組みが日本にないことについても懸念と勧告が示されました。
ヘイトスピーチとヘイトクライム
とりわけ、前回審査において強い懸念が示されたヘイトスピーチとヘイトクライムの問題に関して、2016年の「ヘイトスピーチ解消法」を歓迎しつつ、同法律がさまざまな点において不十分であり、その一方で、街頭におけるヘイトスピーチが今も続いていること、さらにはネット上やメディアにおけるヘイトスピーチへの対策がなされていない現状を踏まえ、多岐にわたる具体的な勧告が出されました。
その他、総括所見に含まれる勧告は次の課題に関するものです。一部を紹介します。
アイヌ民族の状況 - アイヌ民族の土地と自然資源への権利、他。
琉球・沖縄の状況 - 先住民族としての認知、他。
部落民の状況 - 明確な部落民の定義、他。
在日コリアンの状況 - 朝鮮学校の子どもたちの教育の権利、他。
市民でない者の状況 - 地方参政権、教員資格、無年金、他。
ムスリムのプロファイリングと監視 - 警察によるプロファイリングと監視の中止。
女性に対する交差的差別と暴力 - マイノリティ女性への暴力、他。
「慰安婦」 - 被害者中心のアプローチと永続的な解決、他。
移住者の状況 - 住居、教育、雇用などにおける社会的差別。
外国人技能実習制度 - 技能実習生の人権侵害、他。
難民および庇護申請者 - 難民申請者の収容問題、他。
人身取引 - 人身取引の犯罪化、他。
14条の受諾宣言 - 個人通報制度の導入。
■■1年後の実施状況の報告を求めたフォローアップ勧告には、国内人権機関の設置に関する勧告と外国人技能実習制度に関する勧告が指定されました。