2014.08.26

【ジュネーブ】国連人種差別撤廃委員会に対する日本の答えは?(日本審査後半の報告)

少し間が空きました。日本審査の後半(21日午前10時から午後1時)の報告です。前半の審査で委員から出された数多くの質問やコメントに対して日本政府が行った回答の一部を紹介します。なお、政府に対して出される総括所見(勧告を含む)は8月末にCERDのウェブにて公表されます。

<委員会の質問 : 政府の回答>

人種差別禁止法の制定:条約の差別の理由と範囲において憲法14条がカバーしている。

国内人権機関の設置:  救済制度の在り方を適切に検討中だがタイムスケジュールはない、これ以上言えない。(現政権の「作らない」宣言には言及せず。)

4条(a)(b)留保の撤回:表現の自由との兼ね合いや処罰する場合の範囲など明確にすべき点があり、まだ結論に至っていない。

”Japanese Only”などは法律で禁止:旅館業法等で適切に対処している。

ヘイトスピーチとレイシズム:日本の損失、外交に悪影響与えると首相が憂慮、自民党が検討開始。

警察によるレイシストデモの保護とカウンターの逮捕:公共の安全のために中立の立場で警護している。

個人通報制度: 注目すべき制度。司法、立法の側面より検討中。

朝鮮学校の差別的扱い:学校の管理運営体制を調べて不適格だから(北朝鮮政府のせいにした政治的回答)。

「慰安婦」問題:条約加入は1995年、それより以前の問題は議論できない。二国間で解決済み、歴代首相は誠実に対応してきた。「性奴隷」は不適切。

国籍取得の際の日本名の押しつけ: していない。

搾取的な技能実習制度:制度の適正化のために抜本的見直しを現在行っている。

人身売買性的搾取への懸念:人身取引の被害者保護や社会復帰について取り組んでいる。

移住女性とDV被害と法的地位:現実に則して柔軟な対応をしている。

難民 迫害リスクのある国に返してはいけない:リスクのある国には送還していない。

ムスリム監視と人権侵害:ムスリムだからではない、テロ対策のための情報収集、詳しくは言えない。

複合差別:第3次男女共同参画計画を説明。

部落問題、戸籍の不正取得:戸籍法を改正して対応している。自治体職員の研修。

33年の特別措置でも残る格差と差別:人権相談を提供、差別撤廃の啓発事業の実施。

アイヌ民族:アイヌ民族の意見を聞きながら政策を進めている、オリンピックを念頭においた象徴空間の建設。

アイヌ語の消滅の危機:アイヌ文化の復興と振興に努めている。

琉球・沖縄:それぞれの地方に特色があるように沖縄の文化を尊重し、保護に努めている。

沖縄は日本の一部であり、本条約は適用されない。

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お分かりのように、回答の大半はこれまで通りであり、NGOからの情報とは大きく異なるものでした。特筆すべきは、街宣でレイシストたちが警察の見守る中「殺せ」などと叫んでいるのは、委員会にとって言語道断であり、「言論の自由」を持ち出すような問題ではないという明快な反応でした。条約加入以来3回目になる審査において、同じ問題に複数の委員が同じような質問をしなければならない状況について、ある委員は、「何度質問しても満足する答えがでてこないから繰り返さざるをえない」と述べました。

総括所見はもうすぐ公表されます。IMADRはそれを受けて、他のNGOとともに、勧告実現のためにさまざまな取り組みを進めていきます。

(報告:小森恵)

(8月21日の日本審査後半の様子、会場:国連人権高等弁務官事務所、ジュネーブ)

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