2014.07.17

【ジュネーブ発】国連自由権規約委員会による日本審査速報

IMADRジュネーブ事務所 小松泰介

今週15日から16日にわたって、国連自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)における人権状況を審査する自由権規約委員会による日本審査がジュネーブにて行われました。IMADRも人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)としてNGOレポートを提出し、ジュネーブではヘイトスピーチに関して委員会に積極的に情報提供をしました。審査の1日目は自由権規約委員会から出されていた質問への日本政府による回答で始まり、後半は委員からそれに対する質問が出されました。また、2日目は前日の委員からの質問に対する日本政府回答の続きで開始され、その後に委員から質問、それに対する日本政府の回答で進められました。以下、IMADRおよびERDネットに関連する委員からの質問を抜粋します。

15日(火)審査前半

南アフリカ共和国のマジョディーナ委員が日本に差別禁止法が無いことに言及し、政府が自由権規約に基づく差別禁止法を採用する予定はあるのか質問をすると共に、差別を対象とした法的機関を設置する予定はあるのか質問しました。また、ドメスティック・バイオレンスの被害を受けた外国人女性がなかなか被害を通報できないことにも触れました。

イスラエルのシャニー委員は、日本におけるマイノリティ女性の雇用に関して今まで調査が行われていないのはなぜなのか、ヘイトスピーチに対して日本政府は対策措置を講じたのか、またそれらの措置は十分であったのか質問しました。2013年に多くの差別的なデモおよびインターネットにおける人種差別があったことが報告されているが、それらの加害者は刑法によって処罰されうるのか、また日本政府は対応する禁止法を検討しているのか、警察官は差別的なデモに介入できず、「ジャパニーズ・オンリー(Japanese Only)」の掲示に対しても措置が取られていないことなどを質問しました。

ドイツのセイベルト・フォフル委員は、在日コリアンの無年金問題を取り上げ、当時の日本政府の移行措置と対応、また年金受給者に関する統計の有無について質問しました。

16日(水)審査後半

ドイツのセイベルト・フォフル委員が、自由権規約第27条のマイノリティに関することに触れ、日本政府が琉球・沖縄の人びとを先住民族と認識していないことに言及しました。その上で、アイヌおよび琉球・沖縄の伝統的文化や慣習を守るために政府はどのような特別な措置をとっているのか質問しました。

オランダのフリンターマン委員は人身売買に言及し、日本政府の人身売買の定義および労働搾取と性的搾取に対する措置に関して説明を求めました。また、技能実習制度における技能実習生の人権保護を強化するための措置、さらに代わりに移住労働者を受け入れるプログラムを検討しているかについて質問しました。

イスラエルのシャニー委員は、民法および刑法が適用されないヘイトスピーチは不処罰となるのか質問をし、被害者の多くは裁判に訴える資源がないことを考えるとヘイトスピーチの対応として民法に頼ることは懸念であると発言しました。

スリナムのウォーターバル委員は、朝鮮学校のみ高校無償化の対象から除外されていることについて、更なる説明を日本政府に求めました。

これらの質問に対して日本政府は同じ回答を繰り返したり、質問の一部にしか回答しなかったりしたために建設的な議論とはなりませんでした。委員会からも、初回の日本審査から政府による勧告の実行に前進が見られず、毎回同じ質問と回答の繰り返しになっているという趣旨の指摘がありました。委員会からの勧告は今月下旬に出される予定ですが、審査でのこれらの重要な質問が勧告に反映されることが期待されます。

*日本審査の様子は以下のウェブキャストはこちら から後日ご覧いただけます。(日本語のみ)

 

 

 

 

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