女性差別撤廃委員会(CEDAW)が「皇室典範」の改正を勧告したことに関して、日本政府がとった措置に対し、反差別国際運動(IMADR)は以下のように抗議と要請を行いました。
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2025年2月4日
外務大臣 岩屋毅様
要 請 文
反差別国際運動は女性差別撤廃委員会による日本政府報告書の審査に、長年、部落女性、アイヌ女性、在日コリアン女性たちとともに NGO として関わってきた。2003 年の第4・5回報告書審査で、委員会は、可視化されていないマイノリティ女性の複合的な差別の状況について政府報告書には言及されていないことを指摘し、次回報告書において情報提供をするよう促した。この勧告は女性たちを勇気づけ、自分たちが直面してきた問題は複合差別であることを確信するきっかけとなった。2009 年には第6回日本政府報告書の審査が行われたが、政府は情報提供を促す前回の勧告を実行することはなく、マイノリティ女性たちは自らで行った実態調査を基にNGO報告を審査に向けて提出した。総括所見には、マイノリティ女性への差別撤廃のための政策的枠組みや特別措置をとること、雇用や教育におけるマイノリティ女性の状況について次回報告に含めることなどの勧告が出た。国内では注意さえ向けられてこなかった問題に、女性差別撤廃委員会はさらに灯りを照らした。委員会によるマイノリティ女性が直面する複合差別の問題に対する懸念と勧告は、2016 年の第7・8回政府報告書査、そして 2024 年の第9回政府報告書審査と続くにつれ、より実態に迫り、より明確で効果的な対応を求めるようになった。
マイノリティ女性に関する委員会の勧告を、日本政府はどのように受け止めてきたであろうか。残念ながら私たちは前向きな回答を見いだせない。しかし、上述のように、女性差別撤廃委員会による問題への公正で粘り強いアプローチは、当事者である女性たちを奮い立たせ、周囲にいる者たちへの意識喚起となってきた。私たちは、女性差別撤廃委員会が果たしてきた役割は、とくに社会の周辺におかれてきた人びとにとって、非常に重要であると確信している。
その一方で、委員会と政府が建設的対話を通して相互に努力を重ねてきたことにより、マイノリティ女性の置かれてきた状況を含め、その他これまで議論されてこなかった問題が国際的に可視化され、結果、日本国内の問題として位置付けられてきた。私たちはそのことを評価している。
そのようななか、女性差別撤廃委員会の総括所見が「皇室典範」の改正を勧告したことに関して、日本政府がとった今回の措置(OHCHR に対する任意拠出金の対象からの除外)は、これまで築いてきた対話の循環の維持・発展を脅かすものとなっている。私たち NGO の立場から、女性差別撤廃委員会に期待を託しているマイノリティ女性の立場からみて、受け入れられるものではなく、強く抗議する。意見の対立があるならば、対話・交渉によって溝を埋めるのが外交の基本であり、相手が言うことを聞かないからお金を出さないという態度は、品位を欠き、日本に対する国際社会の見方に否定的な影響を与えかねない。
私たちは日本政府に対して、女性差別撤廃委員会に伝えた今回の措置を撤回することを求めるとともに、国際社会の一員として、世界の人権の保護・促進のために国連加盟国としてさらに努力を続けることを求める。
反差別国際運動(IMADR)