女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、89会期に行った審査(ベニン、カナダ、チリ、キューバ、日本、ラオス、ニュージーランド、サウジアラビア)の総括所見を発表しました。総括所見には、各国の条約実施に関する肯定的側面と改善のための勧告が含まれています。総括所見の一部をプレスリリースより紹介します。
ベニン
委員会は政府、国会、公共サービス、外交、軍隊、国際機関、民間部門において、意思決定の地位に女性の割合が低いことを指摘し、あらゆる意思決定メカニズムにおける男女間の50:50パリティを実現するように、法的・立法的枠組みを見直すよう勧告した。また、公的および私的領域におけるリーダーの地位に女性が少ない根本原因を特定し、対処するよう求めた。
カナダ
委員会は、家族および社会における女性と男性の役割および責任に関するジェンダー・ステレオタイプと家父長的態度と闘うために、社会のあらゆるレベルで男性を対象とした政策が不足していることを懸念し、女性に対する差別の撤廃やジェンダー平等の促進への取り組みに男性も含めることを求めた。また、これらの措置は、家族および社会の両方における性役割分担に関する家父長的なステレオタイプを打破するために、男らしさ、女らしさという伝統的な考え方に対抗し、女性と女児に対するあらゆる形態のジェンダーに基づく暴力を減少させ、社会規範を変革するものでなければならない、と強調した。
チリ
委員会は、最高裁判所にジャンダー平等および無差別のための事務局が設置されたことを評価した。一方で、母親や妻といった伝統的な役割を強化するジェンダー・ステレオタイプが根強く残っていることを懸念した。これらのステレオタイプは女性の社会的地位や自律性、キャリアの展望を制限する。また、外国人嫌悪的で人種差別的な発言や、女性政治リーダーを「壊れやすい」、「繊細」と表現する、メディアにおける男らしさ、強さの理想が蔓延していることに懸念を示し、女性および女児に対するヘイトスピーチに対処する政策を策定し、ジェンダーにセンシティブな言葉の使用や女性のポジティブなメディア描写に関して、当局者やメディア関係者に研修を行うよう求めた。
キューバ
委員会は、農村部の女性が限られた土地利用、農業テクノロジー、教育、保健サービス(性と生殖に関する保健を含む)にしかアクセスできず、その労働時間の80%を無償労働に費やしていることに懸念をもって留意し、インフラや種子、機械、設備、改良普及サービス、調査情報、適切な報酬へのアクセスを含む、女性農家への農業サポートを強化するよう求めた。
日本
委員会は、差別的な法律に関するこれまでのいくつかの勧告への対処がなされていないこと、特に夫婦同姓を義務付ける民法750条を改正する措置がとられておらず、実際には、女性が夫の姓を名乗らざるをえないことが多いことに懸念をもって留意し、女性が結婚後も旧姓を保持できるよう、結婚した夫婦の姓の選択に関する法律を改正するよう要請した。
また、事前の配偶者の同意を義務づけた母体保護法第14条の例外規定のもと、一定の条件下において合法的な中絶へのアクセスが制限されていることを懸念し、中絶を求める女性に対する配偶者の同意要件を撤廃するよう法律を改正し、あらゆる状況における中絶を合法化するよう求めた。さらに、妊娠中絶薬を含む安全な中絶サービスがすべての女性と女児にとって安価で、利用可能であることも求めた。
ラオス
委員会は、非政府組織や女性の活動家の活動に対する不当な制限に関して懸念を表した。また、女性活動家に対する報復事件に関しても懸念し、女性の権利団体やその他団体が不当な制限を受けることなく自由に活動を行えるよう、NGOの登録要件を見直すよう要請した。また、女性の人権擁護者やその他の活動家に対する報復への調査と処罰を求めた。
ニュージーランド
委員会は、締約国の女性に対するジェンダーに基づく暴力に関する四半期公報と、男性のトラウマおよびその家族や人間関係に取り組む「彼女はあなたのリハビリテーションではない(She is Not Your Rehab)」プログラムなどの特別措置に留意した。しかしながら、家庭内暴力と親密なパートナー間暴力(IPV)が過去5年間で約60%増加し、マオリおよびパシフィカ女性、民族的および宗教的マイノリティ女性、障がいのある女性が被害に遭う割合が増えていることを深く懸念し、女性に対するジェンダーに基づく暴力の根本原因と複合的要因に対処する政策を策定するよう求めた。また、被害者に十分なサポートサービスを提供することや、不利な立場にある女性グループのための法執行の強化を通じて、ジェンダーに基づく暴力からの保護を強化するよう要請した。
サウジアラビア
委員会は、締約国の法律と慣行が死刑を維持し、2020年1月から2024年7月までの間に異なる国籍の女性 11人を処刑していることに関して、死刑のモラトリアムを採択し、すべての女性死刑囚の処刑を停止し、すべての死刑判決を懲役刑に減刑することを検討するよう求めた。また、テロ対策法(2017年)および反サイバー犯罪法(2007年)が女性の権利擁護者への威嚇、脅迫、逮捕勾留、渡航禁止のために使われているという報告に関して、女性の権利擁護者、特に男性後見人制度の廃止を主張する人々が、ハラスメントや監視、恣意的な逮捕および起訴、また委員会に関与または関与しようとしたことに対する報復から解放され、彼女たちの合法的な活動や権利の行使を保証するよう求めた。
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*日本の総括所見(未編集バージョン、全文英語)はこちら