9月9日に始まった国連人権理事会42会期において、三つの口頭声明を発表しました。
香港のデモに関連した人権侵害や世界で広がる「憎悪の政治」について
前会期の人権理事会において、IMADRは香港においてデモに参加したマイノリティの人びとがヘイトスピーチの攻撃にさらされていること、そして政府がそれに対して対策をとっていないことに懸念を表明しました。今回の声明では、デモに関連した人権侵害について、独立した調査の実施を認めるよう香港政府に求めました。また、インドのカシミールとアッサム、スリランカ、アメリカ、中央アメリカ、ヨーロッパ、南アフリカなど世界各地で見られる憎悪の政治を遺憾に思い、差別される人びとの人権を守るために国連人権高等弁務官がリーダーシップを発揮することを求めました。
声明の全文(英語)はこちらhttps://imadr.org/unhc-oral-update-hrc42-2019-os/
スリランカにおける強制失踪について
今月で設立2周年を迎えるスリランカの失踪者委員会による中間報告書や救済措置などの独立して行った取り組みを歓迎する一方で、ステークホルダーとの連携において委員会が困難に直面していることに懸念を表明しました。IMADRは失踪者委員会がその権能を十分発揮するためには、政府の、特に治安部門の全面的な協力が欠かせないと指摘した国連強制失踪作業部会に賛同しました。そのことから、様々な国連の調査によって戦争犯罪や人道に対する罪に問われているシャヴェンドラ・シルバ中将がスリランカ軍司令官に任命されたことに関する作業部会の懸念を繰り返しました。これらのスリランカ政府の動きは、政府が人権理事会決議30/1で約束した移行期の正義プロセスを大きく損ねるものだと指摘しました。
スリランカ政府が強制失踪条約を批准したものの未だに委員会に第一回報告を提出していないことを憂慮し、スリランカ政府に対し、失踪者委員会および特に失踪者の家族をはじめとする市民社会との有意義な協議を行った上、第一回報告書を速やかに提出するよう求めました。
また、作業部会の勧告の多くをスリランカ政府が実施していないことに遺憾の意を表明しました。失踪したジャーナリスト、プラギース・エクナリゴダのケースに関連して法廷侮辱罪で投獄されていた人物が大統領恩赦によって釈放されるなどの刑事手続きにおける政治的介入は、政府が被害者コミュニティに対する誓約をおろそかにしていることの表れであると指摘しました。来たる大統領選挙とそれに伴う政治的緊張とともに移行期の正義プロセスが後退することを危惧し、作業部会と移行期の正義に関する特別報告者、そして人権理事会に対し、スリランカ政府が決議30/1での約束した責任を果たすよう求めることを要求しました。
この声明はフランシスカンズ・インターナショナルと共同で出しました。声明の全文(英語)はこちらhttps://imadr.org/enforced-disapperances-srilanka-hrc42-2019-os/
沖縄における恣意的勾留について
日本では起訴前の勾留は最長23日まで延長することができ、弁護士の同席なく被疑者を長時間取り調べることが可能です。この「人質司法」とも呼ばれる慣習を非難しました。人質司法の最も分かりやすい例の一つとして、公判前に5ヶ月間も勾留された山城博治の事例を紹介し、山城さんの勾留が恣意的であり、新たな米軍施設建設に反対する彼の表現の自由と集会結社の自由の権利行使に直接関連していると表明した恣意的拘禁作業部会のオピニオン55/208に、IMADRは沖縄国際人権法研究会と共に感謝を表明しました。
日本政府が山城さんの裁判状況について作業部会に情報提供を行った一方で、山城さんへの賠償や彼が被った人権侵害について独立した調査を行うことなどを求めた作業部会の勧告は実行していないことを指摘しました。身体的自由のはく奪に関する日本国内の法的枠組みと国際的な人権基準の間の溝は依然大きく、この溝を埋めるため、2015年から保留となっている作業部会の公式訪問を受け入れるよう日本政府に求めました。
この声明は沖縄国際人権法研究会の賛同を得ています。声明の全文(英語)はこちらhttps://imadr.org/arbitrary-detention-japan-hrc42-2019-os/