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国連社会権規約委員会による日本審査速報

更新日:2013年05月02日

2013年5月1日
国連社会権規約委員会による日本審査速報

IMADRジュネーブ事務所 白根大輔

日本は国連の社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)に加入しており、規約の実施状況について、定期的に社会権規約委員会から審査を受けている。2013年4月30日、スイスのジュネーブにある国連人権高等弁務官事務所において、日本政府第3回定期報告書が社会権規約委員会により審査された。
審査では日本政府により提出された報告書、NGO等から提出された情報等を基に18人の委員が午前・午後と合わせ計6時間かけて日本政府代表団との質疑応答を行った。日本政府代表団は上田人権担当大使を筆頭に18人で、外務省の阿部人権人道課長が、法務省、厚生労働省、環境省、文部科学省などの担当者と共に答弁した。この審査の公式記録は国連事務局により後日発表され、審査結果は委員会による非公開のドラフト・採択プロセスを経て、委員会から日本政府への勧告を含んだ総括所見(Concluding Observations)という文書にまとめられる。総括所見は日本審査が行われた委員会第50会期(日本の他6カ国の審査も行われる) の最終週(5月13~17日)に採択され、その翌週に公開される見込みである。
日本政府審査においては全般的に福島原発事故に関するものや、障害を持つ人の状況、ジェンダー差別、セクハラ、最低賃金、DV、社会保障制度、非正規労働者の状況、年金制度や若者の失業問題などについての質問やコメントがなされた。同時にIMADRの活動に特に関連するものとして、マイノリティや先住民族などに関して委員から出された質問・コメントはまとめると以下のようになる。ただし、これらは国連公式記録でなく、あくまで筆者による質疑応答の英語速記録に基づく要訳であることを了承いただきたい。

  • 被差別の原則に関して、憲法第14条が引き合いに出されているが、実際に差別を受けている特定のグループ、例えばアイヌ、部落、性的マイノリティ(LGBT)の人びとの状況を考えると、より具体的な差別禁止法が必要である。法案が提出されたものの国会解散により通らなかったが、今後このような差別禁止法の制定は考慮しているか?(筆者注:提出された法案とは人権委員会設置法案のこと)
  • 部落差別に関し、その根本原因の一つとして戸籍制度の問題があるが、これを解決するための方策はとられているか、とるつもりか?
  • 部落差別の実態を把握し、効果的な対策をとるためにも全国調査が効果的であるが、そのような調査は行えるか?
  • 国内人権機関の設立について、他の条約機関やUPRでも勧告が出されているが、設立に向けた動きの現状はどうなっているのか?
  • 国内人権機関の必要性や効果性については国際的にも20年前から議論されている、日本はとても遅れているのではないか。
  • ODAを使った人身売買への地域的取り組みは可能か?
  • 朝鮮学校の高校無償化からの除外の理由はなんなのか?北朝鮮との外交関係が理由に挙げられているが、朝鮮学校生徒の教育の権利とどのような関連があるのか?
  • 人権教育について述べられているが、実際に人権や基本的自由、それらに対する経緯などどのように教育に含まれているのか、たとえば慰安婦問題は教科書の中で適確に扱われていないが、歴史をしっかり教えることは必要ではないか?
  • 慰安婦問題、特に被害者の保護に関してどのような対策がとられているのか?
  • 先住民族、特にアイヌ民族の伝統的領地に対する権利はどのように認められているのか?
  • アイヌ諮問機関についてより詳細な情報を提供してほしい。
  • 雇用機会均等法等その他関連法などで扱われているということだが、実際に間接的差別やセクシュアルハラスメントについてしっかり定義し、禁止した法律はあるのか?
  • 政府はセクシュアルハラスメントを特定の法律で禁止し処罰するつもりがあるのか?
  • 移住労働者の状況についてより詳細な情報を提供してもらいたい。
  • DVや婚内レイプなどは特定の刑法により犯罪として規定されるべきである。
  • 最低賃金基準は移住労働者にも当てはまるのか?
  • 慰安婦問題被害者をターゲットにした右翼団体がいるようだが、政府はどのようにとらえているのか?

これらの質問やコメントに対し、日本政府は多くの場合「官僚式」答弁で部分的またはあやふやな回答と一辺倒の説明を繰り返すことが多く、NGOの立場から見たら真剣に答える気が全くないように思われた。また日本政府の報告書や委員の質問に対する回答に関して、国際基準が適確に国内で適用されていない、率直に応えていない、質問の回答になっていないなどのコメントもあった。
4月30日に行われたこれらの質疑応答による審査の結果は、勧告を含む「総括所見」として5月中旬に採択され日本政府に送られる。委員会で指摘されたことが勧告に適切に反映されるよう注視したい。

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