2024.08.28

国連人権アップデート 08/28 /2024 No.16

■レイシズムとAI : 過去のバイアスは未来のバイアスをもたらす(7月30日)

 生成人工知能 (Generative AI) が急速に発展普及していますが、生成 AI は、すでに存在する情報(=過去の情報)を学習して新しいアウトプットを生み出すという仕組みのため、世界にすでに存在する差別が、生成AIの作り出すアウトプットにも反映され、さらには増幅されて、差別が助長されるのではないかとの懸念があります。
 この点については日本でも研究が発表され始めていますが、国連の人種差別等に関する特別報告書が、今年の6月から7月に開かれた第 56 会期の人権理事会に提出した報告書でも、この点が取り上げられています。生成 AI を否定するのではなく、インクルーシブな社会の実現に向けて、むしろ生成 AI の可能性を生かすために、どのようにすれば良いか。喫緊の問いが投げかけられています。
 「テクノロジーは中立的で客観的であるという考え方があり、これは有害であり続けています。スイスのジュネーブで開催された人権理事会第56回会期で、アシュウィニ・K. P. 国連特別報告者(現代的形態のレイシズム、人種差別、ゼノフォビアおよび関連する不寛容に関する国連特別報告者)は、新しい報告書の発表に向けた対話の中で、このように続けました。
 特別報告者は、この思い込みのために、AI が人種差別を永続させることを許していることを報告書の中で考察しています。
 『生成 AI は世界を変えつつあり、今後ますます社会的変化によって世界を揺るがす可能性を秘めています。私は、様々な分野で AI の利用が急速に広がっていることを深く憂慮します。それは、AI に潜在的なメリットがないからではありません。実際には、イノベーションとインクルージョンの可能性を秘めていることが示されています。』」

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Racism and AI: “Bias from the past leads to bias in the future”
特別報告者の報告書はこちら

■ ベネズエラ:恣意的拘禁、過度の力の行使が、恐怖を増幅させている、国連人権事務所が警鐘(8月13日)

 7月28日のベネズエラ大統領選挙では、選挙管理当局が現職の大統領が再選したことを発表したものの詳細を明かさず、野党側が独自に集計した結果と大きく異なっていたことから、その票の集計をめぐって、国内外で批判があがっています。ベネズエラ国内では、選挙戦の余波で、多くの拘束者が出ています。
 選挙の結果をめぐっては、政権側が最高裁判所に対して監査を求め、最高裁判所は8月22日、現職の再選を認めました。しかし、最高裁判所は政権の影響下にあるとされており、国連人権事務所は同日、最高裁判所と選挙管理当局の独立性・公平性が欠如しているとのメッセージをソーシャルメディアXに投稿しました。下記は、8月13日に X に投稿したものです。

 「公式発表によると、7月29日以降、2400人以上が逮捕された。この数字には、抗議者、人権擁護者、青少年、障がい者、野党のメンバー、あるいは野党とつながりがあると思われる人々、さらに野党が認定した選挙監視員として投票所で活動した人々の恣意的な拘束が含まれている。
 国連人権事務所が記録したケースのほとんどで、被拘禁者は自分で選んだ弁護士を選任することも、家族と接触することも許されていない。こうしたケースの中には、強制失踪に相当するものもある。」

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Venezuela: Ongoing arbitrary detentions, disproportionate use of force fueling climate of fear, Türk warns (13 August 2024)
国連人権理事会のポストはこちら(X)

翻訳・抄訳:反差別国際運動(IMADR)

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