2024.09.27

国連人権アップデート 09/27/2024 No.18 

受刑者の労働と現代的形態の奴隷 (9月12日)

 国連人権理事会の第57会期において、現代的形態の奴隷に関する特別報告者である小保方智也氏が、受刑者・元受刑者に関する現代的形態の奴隷についての報告書を提出しました。この報告書では、世界各国で一般的に行われている受刑者の労働(懲役)に関して、労働に対する対価(賃金)が不十分である、教育や救済へのアクセスが不十分であるなどの理由で、それ自体が現代的形態の奴隷その他の人権侵害に該当したり、社会復帰後の差別や現代的形態の奴隷への被害者となるリスクを高めているとして、各国政府に対応を求めています。

報告書・結論(一部)
 「受刑者に労働を課すことが締約国の中で一般的に行われている。このことが直ちに強制労働となるわけではないが、特別報告者は本報告書において、既存の国際人権法や労働基準と相容れない慣行が多くあることを強調する。概して、意味のある労働の機会が欠如しており、賃金は不十分である。受刑者は必需品を購入したり、塀の外にいる愛する人たちのために、あるいは自らの将来のために貯蓄をすることができない。この結果、釈放後の再犯のリスクや現代的形態の奴隷の被害を受けるリスクが高まることになる。労働条件もまた深刻な懸念をもたらすものである。休憩時間や休日なしに長時間労働を行わせる、労働安全のための保護が不十分である、医療設備や社会保険の給付がないこと、そして脅迫、ハラスメント、さらには暴力の例までもが広く報告されている。国家が強制労働を行わせるという例も世界の様々な場所で見られる。すべての強制労働や性的搾取の事案が、十分なトレーニング、監視、アカウンタビリティの強化と救済へのアクセスの保障により効果的に対処されるべきである。」

報告書全文はこちらから
A/HRC/57/46 Contemporary forms of slavery as affecting currently and formerly incarcerated people
Report of the Special Rapporteur on contemporary forms of slavery, including its causes and consequences, Tomoya Obokata

ロマの家族が人権を享有するための支援(モルドバ)(9月13日)

 ヨーロッパでは、今でも公的な身分証明書類を取得していないために行政や医療サービスにアクセスできないロマの人々が多くいます。OHCHRは、こうしたロマの人々が自治体で住民としての登録を受けて、学校や病院などに行けるようにするサポートを行なっています。モルドバでは、ロマのコミュニティでメディエータ(仲介役)となる人をトレーニングするという支援をしています。以下は、こうしたメディエータの活躍を紹介するストーリーです。

「ライサおばさん」の愛称で親しまれているデメニウクは、ロマ・コミュニティのメディエータであり、今日はガリーナ・ミハイとヴィジャイ・ルソフ、そして5人の幼い子どもたちの様子を見に来ました。デメニウクがこの家族と仕事を始める前、この疎外されたロマの家族は、身分証明書も出生証明書もなく、子どもたちは学校に通っておらず、一家は医療や社会保護の給付を受ける資格がありませんでした。国連人権高等弁務官事務所のモルドバ事務所が主催する人権研修を受けたデメニウクは、地元の組織を通じて一家の書類を整理しました。デメニウクのおかげで、一家の長女は現在小学校に通い、2人の弟は幼稚園に通っています。ガリーナが一番下の子を妊娠したとき、デメニウクは保健センターの登録に同行しました。子どもたちは全員予防接種を受け、両親は非正規農業労働からのささやかな収入を支えるための社会給付金を受け取っています。「ライサおばさんには本当に感謝しています。ライサ叔母さんは私たちのためにあらゆることを助けてくれました」とガリーナ(27)はスロボジアの町外れにある自宅の外で生後6ヶ月の赤ん坊を抱きながら言いました。

記事全文はこちら
Roma mediators in Moldova enable Roma families to enjoy their human rights

翻訳・抄訳 反差別国際運動(IMADR)


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