2024.07.4

「人種差別撤廃とダーバン宣言・行動計画の包括的実施」に向けて国連に情報提供をしました

IMADRは、第79回国連総会に提出される国連総会決議 (A/RES/78/234) 「人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連する不寛容の撤廃と、ダーバン宣言および行動計画の包括的実施とフォローアップのための具体的行動のための世界的呼びかけ」の作成に寄与する情報を6月28日、国連人権高等弁務官事務所に提出しました。要約を紹介します。

ヘイトスピーチと人種的憎悪の扇動

日本では、特にインターネット上でヘイトスピーチが横行している。最近では、ある女性の政治家がブログやSNSで、マイノリティ女性に対して人種差別的な発言を繰り返し、彼女のフォロワーの間で人種的憎悪を扇動した。そのような扇動の影響は計り知れず、標的にされた女性たちは深刻な差別のリスクに晒され、沈黙を余儀なくされた。2022年の臨時国会会期中、国会議員であり政務官であった女性は、さまざまな委員会で、度々他の議員からこれらの言動について追及された。しかし、自分の行ったことが差別やヘイトスピーチに当たるとは決して認めず、「私の表現の拙さで人を傷つけてしまった」「まるで差別したかのように伝わってしまった」という答弁を繰り返した。

さらに、日本は人種差別撤廃条約を締約し、特に公職者による人種差別の助長や扇動を認めないとする第4条(c)、ヘイトスピーチ解消法を施行しているにもかかわらず、首相も法務大臣もこの事案を「ヘイトスピーチ」あるいは「人種差別」として認めなかった。最終的に、当該議員は政務官の職を、首相による更迭ではなく自ら退いた。しかし、今も国会での議席を保持している。

制度的レイシズム

教育政策を主導する文部科学省は、2018年8月に人種差別撤廃委員会の勧告1を受けた後も、問題解決に取り組む姿勢を示していない。日本の公立学校には校長、教頭(副校長)、主幹教諭、教諭、講師という役職がある。しかし、外国籍者は教員採用試験に合格しても、下位の講師にしか就けず、意思決定を行使する管理職の地位から排除されている。

現在300人以上の外国籍者(多くは在日朝鮮人)が公立学校の教職に就いていると推定される。しかし、定年まで勤めた場合、講師と校長の生涯年収は1,000万から2,000万円異なる。このように、外国籍の教職員は経済的に不利益を被る立場に置かれている。日本政府は「公権力の行使や公共意思形成の参加を伴う公務員のポジションは日本国籍者に限る」と主張している2 が、法的根拠はない。これが「当然の法理」だという政府の主張は外国人を差別することが「当然」であると言っているに等しい。経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)第4条は、「…国は、法律で定める制限のみをその権利に課すことができる」と規定しているが、政府は、「当然の法理」の名のもと、法律とは関係のない行政通達によって外国人の権利を侵害している

日本政府は戦前の軍国主義の時代と同じ国家統制の教育制度を現在も貫いている。皇室を敬い、愛国心を育み、国家に忠誠を誓う子どもを育てる教育を推進するには、外国籍の教員は弊害になると考えられている。そのため、外国籍教員は最も低い等級の職にしか配属されない。植民地主義の歴史に根ざした制度的な人種差別は、不平等な関係の再生産や「外国人」に対する排他的な態度につながっている。

アフリカ系の子どもと若者

髪型や髪質は、アフリカ系の子どもや若者が学校で差別を受ける要因のひとつである。2023年2月、アフリカ系の高校3年の男子生徒が、コーンロウの髪型をしていたために卒業式の参列を許可されなかった。その理由について教頭は、「校則を知っているはずだ」とだけ繰り返した。校則では「学生にふさわしい清潔感のある髪型」とされているが、コーンロウ禁止とは明記されていない3。根底には、カーリーヘアよりもストレートヘアの方が清潔感があり、生徒にふさわしいという教員間での共通認識があったのではないか。

しかし、コーンロウの髪型は、アフリカ系の人々が主にカーリーヘアを引き締めるために用い、「清潔」で「セレモニーにふさわしい」と考えられている。髪はただ髪だけではなく、その人のアイデンティティや文化を示すものである。そのため、髪を否定することはアフリカ系の学生の尊厳を傷つけることになる。

日本の学校で、特定の髪型などを禁止する校則があることは珍しくない。このような髪に対する考え方は生徒によって内面化され、カーリーヘアの生徒はいじめの対象になりやすい。生徒のルーツに自然な髪質やそれにあったヘアスタイルに対する否定的な態度は、人種に関連した否定的なステレオタイプや偏見を広めるかもしれない。さらに、思春期の多感な時期にある生徒の自尊心を低下させ、彼らを傷つけ、悪循環を生み出す。

1  CERD/C/JPN/CO/10-11, para.22, 34(e)

2  CERD/C/JPN/CO/10-11, para.81

3 https://mainichi.jp/articles/20230327/k00/00m/040/127000c

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