2024.12.16

【要約報告】CERD114会期 6カ国の総括所見などを採択して終了

11月25日から始まった人種差別撤廃委員会114会期は、12月13日に終了しました。今会期について、国連が発表した報告をもとに、以下、概要を報告します。

◆会期では、アルメニア、エクアドル、ギリシャ、ケニア、モナコ、サウジアラビアの報告書が審査され、最終日にその総括所見が採択されました。その内容は本記事の後半に掲載しています。↡ 

◆委員会は、簡易報告手続きに基づき、コートジボワール、マラウィ、セーシェルに関する事前リストオブイッシュを採択し、ポルトガルに関するフォローアップ報告を採択しました。

◆委員会は、早期警戒・緊急行動手続きに基づき、会期中の12月12日にイスラエルとパレスチナ国家間の紛争に関する決定を採択しました。決定には、即時停戦や人質の解放など8項目の要請事項が含まれています。

◆委員会は、条約第14条に基づき受諾した1件の個人通報事案の審査を継続して行い、最近の重要な事実の確定のために、通報者への一連の質問を行いました。

◆委員会は、会期中、移住労働者権利委員会と進めている、移住者、その家族、およびその他市民でない者に対するゼノフォビアとレイシズムが及ぼす影響に対処する合同一般的勧告の策定に向けて、さらなる協議を行い、採択に向けた次のステップについて話し合いました。

◆委員長のミハル・バルチェラクは、「2025年は人種差別撤廃条約採択60周年である。条約のメッセージを強化し、長年にわたる委員会の成果を評価し、人種差別と闘うための政治的意思と行動をさらに促すまたとない機会である」と、述べました。委員会は、人種差別を禁止するという条約のメッセージが確実に世界中に浸透するよう努力を続けると述べました。

◆次の会期は、2025年4月22日から5月9日に予定されており、ガボン、グアテマラ、キルギス、モーリシャス、韓国、ウクライナの報告書が審査されます。

114会期で採択された総括所見の概要

アルメニア

委員会は、国内法において結婚最低年齢18歳への例外事項をなくしたことを歓迎する一方で、民族的マイノリティのイェジディ教徒のコミュニティでは児童婚が依然として頻繁に行われていること、またイェジディ教徒の間では無登録の婚姻率が特に高いことを指摘した。委員会は、アルメニアがいかなる児童婚も防止するよう、さらなる努力と必要な措置を講じることを勧告した。

委員会は、締約国において人種差別撤廃条約の完全実施に不可欠な「平等確保法」と「民族的少数者法」という、2つの重要な反人種差別法案の成立が遅れていることを懸念した。委員会はアルメニアに対し、これらの法律を採択するよう繰り返し勧告してきたことを想起し、締約国に対し、これらの草案を早急に完成させ、国内法を条約に一致させるよう再度要請した。

エクアドル

委員会は、歴史的に疎外されてきた集団の権利と生活状況を十分に評価するために必要な、細分化された統計が欠如していることを懸念した。委員会は特に、アフリカ系住民に関する統計に整合性の欠如が見られることに懸念を示した。人口統計は国勢調査によって大幅に異なり、地域の人口予測とも異なっていた。委員会はエクアドルに対し、先住民族、アフリカ系住民、モンチュビオ先住民族、および市民社会組織と協議してアイデンティティの分類を見直し、正確で包括的な統計を確保し、効果的な公共政策を行えるよう整えることを求めた。

委員会は、周辺部や農村部における労働搾取の疑いに懸念を示した。特に、エスメラルダス、サントドミンゴ・デ・ロス・ツァチラス、ロス・リオス州のアフリカ系住民に影響を及ぼしているとされる古河電気工業に関連する事例について懸念を示した。 委員会は、エクアドルに対し、あらゆる形態の強制労働や労働搾取を防止すること、起きた場合の調査、処罰、被害者の司法救済、適切な保護、賠償を確保するよう、加害者の起訴とそれに応じた処罰を確実にするよう求めた。

ギリシャ

委員会は、ロマや市民でない者を標的とした広範なヘイトクライムやヘイトスピーチについて懸念を示し、被害者が法執行機関に信頼を置いていないこと、報復を恐れていること、苦情申し立て制度に関して認識がないこと、社会的にぜい弱な集団の間でヘイトクライムが常態化していることによる通報率の低さを指摘した。また、ヘイトクライムの有罪率の低さや、検察官や裁判所による人種差別的動機の認識のばらつきも強調した。締約国に対して、ヘイトスピーチやヘイトクライムの通報を奨励する措置を講じ、安全で利用しやすい通報手段を確保し、警察官、検察官、裁判官を含む司法関係者に対して、人種差別やヘイトクライムの特定、登録、対処に関する研修を強化するよう求めた。

委員会は、ノンルフールマン原則に違反し、移民や庇護希望者が保護を求める海・陸の国境における強制送還が報告されていることに懸念を示した。これらの場所では、入国管理職員による過剰な武力の使用、残酷で非人道的で屈辱的な扱い、恣意的な拘束が行われ、時には移民や庇護希望者の死につながっている。委員会はギリシャに対し、移民、難民、庇護希望者に対する強制送還、法執行官による過剰な武力行使や暴力、残虐、非人道的で品位を傷つける扱い(特に自由を奪われた者)など、人権侵害のすべての報告を調査し、有罪判決を受けた者には適切な刑罰を科すよう求めた。

ケニア

委員会は、先住民族の土地の所有権における、司法へのアクセスの欠如、補償や救済措置の欠如について、また、キプシギス族とタライ族がうけた土地所有権侵害などの歴史的不正に対する補償が遅々として進展していないことについて懸念を示した。委員会はケニアに対し、さまざまな民族集団に対する補償を命じた地域の裁判所および最高裁判所の判決を完全に履行するために、必要な措置を講じるよう求めた。これには、エンドロイ福祉協議会対ケニアの事件におけるアフリカ人権と人民の権利委員会の決定、オギエク族に関するアフリカ人権と人民の権利委員会対ケニアのケースにおける決定、センゲル族に関するキーアン高等裁判所の決定が含まれる。さらに、キプシギス族とタライ族のコミュニティに対する国家土地委員会の勧告を完全に実施するよう締約国に強く求めた。

モナコ

委員会は、公務員による身体的な外見や民族に基づく差別禁止の原則の規定を導入した関連法を歓迎した。しかし、国内の法的枠組みに条約に完全に沿った人種差別の定義が含まれていないことに懸念を示した。委員会はモナコに対し、直接的、間接的、複合的、交差する形態を含む人種差別の明確な定義を採択し、公的および私的領域のあらゆる分野を網羅する包括的な差別禁止法を採択するよう勧告した。

委員会は、外国人が生活保護、医療、住宅支援を利用するのに5年の居住要件を課していることについて懸念を表明し、低所得の外国人を適切な支援から排除していると指摘した。また、労働組合の指導的役割を担う人のマジョリティをモナコ国籍あるいはフランス国籍保有者とすることを義務付ける労働組合法についても懸念を示した。委員会はモナコに対し、居住要件を緩和するなどして、低所得の外国人も支援を受けられるようにするよう求めた。また、指導的地位への差別のないアクセスを認めるために、労働組合法の改正を早急に進めるよう求めた。

サウジアラビア

委員会は、サウジアラビアの刑事司法手続きにおいて、シーア派の民族宗教的マイノリティグループのメンバー、移民労働者、女性を含む家事労働者が過剰に関っており、特に死刑を伴った裁判ケースにおいて、公正な裁判の保障が欠如するなか、恣意的な拘束、拷問、虐待に不均衡にさらされていることに懸念を示した。委員会は、死刑執行のモラトリウムを同国に強く求めた。また、死刑は最も重大な犯罪だけに限定し、公正な裁判を確保し、拷問や強要によって得られた証拠の使用を禁止するよう司法改革を求めた。

委員会は、司法の監視なしに移民法の違反者や庇護希望者が無期限に拘束されていること、非人道的な拘禁状況、法執行官による暴力の過剰使用、拷問、性的暴力、超法規的殺人などの違反行為について懸念を表明した。また、ノンルフールマン原則に違反する強制送還や、イエメン国境における組織的な強制送還、過剰かつ致死的な武力や銃器の使用、超法規的殺人についても懸念を表明した。移民や庇護希望者に対する虐待や人権侵害の報告をすべて調査し、責任者を法のもと裁き、被害者に対して適切な補償と支援を提供することを求めた。委員会はまた、国際的な保護を確保し、ノンルフールマン原則を尊重するよう勧告した。

▶︎ 英語版のIMADRサマリーはこちら

Archive