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【報告】人種差別撤廃デー院内集会「ACT NOW、実現しよう!人種差別撤廃法」

2025.03.25

2025年3月19日、人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)は、人種差別撤廃デー院内集会を衆議院第二議員会館で開催しました。一般80人、国会議員・秘書15人、メディア10人の参加を得ることができました。集会の一部を以下、報告します。

基調報告:人種差別撤廃条約と日本

1995年12月、日本は人種差別撤廃条約に以下のような条件のもと加入。

・条約実施のための国内法や制度の整備(2条)はせず
・ヘイトスピーチや差別発言の禁止を法制化することに関する4条(a)(b)は「表現の自由」など、憲法上、受け入れることができないとして留保
・14条のもと人種差別撤廃委員会に個人通報の受理と検討を認める宣言の受諾なし
・1条1項が定める人種差別の事由のもと、条約は部落差別や沖縄の人びとに適用されるものではないという独自の解釈

これまで、2001年3月、2010年2月、2014年8月、2018年8月と、日本政府報告書の審査が4回行われました。加入時の条件を固持し続けてきた政府、必要な立法や行政の措置がないなか差別や排除の厳しい状況に直面してきたマイノリティコミュニティによる問題提起、それらを受けて、人種差別撤廃委員会は日本政府に対して次のような勧告を繰り返してきました:

1)包括的な人種差別禁止法の制定、2)独立した国内人権機関の設置、3)4条(a)(b)の留保撤回とヘイトスピーチへの適切な対応、4)14条のもと個人通報制度の導入、5)部落差別は「世系」に基づく差別であること、6)沖縄の人びとは先住民族であること、7)朝鮮学校で学ぶ子どもたちの教育権、8)市民でない者の公職や公共サービスへのアクセスの保障、その他多数。

今こそ政府は人種差別に対して毅然とした態度をとり、撤廃に向けた政策を進めるべきです。これ以上の30年を私たち市民社会組織は認めません。

現場からの声

◉繰り返される部落差別

部落差別に関して、とりわけ公職者による差別が顕著に起きています。また、インターネット上のアウティングが多発しており、増加傾向にあります。こうした状況に対し、1)現行の部落差別解消推進法では不十分だという立法事実を積み上げ、法改正につなげていくこと、2)各都府県において、部落差別解消のための条例整備を行うこと、が必要です。実効性があり現状と課題にしっかりと適用するような取り組みが緊急に必要です。

◉アイヌ女性への差別、人権侵犯と認定

2016年の女性差別撤廃委員会による日本審査の直後に、元公人(当時)が管理するブログ記事で差別をうけました。それが⼈権侵犯であると公的に認められたことで、アイヌ⺠族に対するヘイトスピーチの規制が社会規範として初めて示されました。日本には道徳教育はあるが、⼈権教育がありません。⽇本では⼈権は思いやりであると誤解され、政府の義務が抜け落ちています。独⽴した国内⼈権機関の創設が必要です。

◉朝鮮学校への不当な差別

高校無償化制度が始まった2010年から朝鮮高校への適用を求めてきましたが、国交がないことなどを理由に排除されてきました。どの国で生まれ育っても、自分のルーツに誇りを持って生きたいと願う想いは、万国共通ではありませんか。侵害され続けている学習権を求めて闘い続けます。“各種学校”というカテゴリーを排除の理由とせず、朝鮮学校の歴史と現状をふまえ公平に扱うことなどを求めます。(朝鮮学校高級部1年生による要請書より)。

◉速やかな人種差別撤廃条約履行を求める

1951年、日本はサンフランシスコ講和条約を締結し、在日コリアンは日本国籍を一方的に剥奪されました。厳格な血統主義国籍法を採用している日本では、親が日本国籍をもっているかいないかで、生まれながらにして、居住権、参政権、公務就任権、社会権が保障されるかが決まります。このような社会システムは、血統に基づき、法的地位に著しい不平等を認めている典型的な「人種差別」です。迅速に人種差別撤廃条約の国内履行に必要な包括法の整備を行うことを求めます。

◉永住資格取消制度と人種差別撤廃委員会からの指摘

永住資格取消制度(入管法改定案)は2024年 3月 15日に国会に提出され、2024年 6月14日に成立し、3年以内に施行される予定です。永住者は、日本生まれの方や、長年苦労して生活基盤を築いてきた方ばかりであり、このような制度を設けなければいけない根拠が何一つ示されないなか、法律が施行されようとしています。法案審議中に人種差別撤廃委員会に「早期警戒緊急措置」の要請を行い、6月25日付で委員会から政府に対して改定の見直しの検討を促す書簡が送付されました**。

◉ クルド人に対するヘイトスピーチ

2023年からS N S上でのクルド人へのヘイトスピーチが日本国内で増加しています。最近では、米の値段が急激に上がっていることを、クルド人のせいにする言説がネット上で広がっています。こうしたヘイトスピーチを止めるのは国会議員や皆さんの責任です。人種差別を撤廃する法律を作っていれば、法的に取り締まることができます。人種差別撤廃法の必要性を訴えます。

国は何をなすべきか、市民社会からの提言

2016年にヘイトスピーチ解消法が施行されたが、極めて限定的で禁止条項もありません。禁止条項も制裁条項もない法律では、現状を変えることはできません。そこで、外国人人権法連絡会が策定した人種差別撤廃法モデル案を提案します。モデル案には、人種差別撤廃条約に則り、ヘイトスピーチやヘイトクライムについては刑事罰で対処することなどが含まれています。川崎市ではヘイトスピーチを制裁する条例ができ、その効果が見られますが、川崎でヘイトスピーチを行っていた同じ人が、場所を変え、悪質な差別行為を行っています。国レベルで差別をなくす法律が必要不可欠です。

国内外からの連帯メッセージ

パトリック・ソーンベリーさん(元人種差別撤廃委員会委員)、村上正直さん(奈良大学教授)、クロード・カーンさん(国連人権高等弁務官事務所人権オフィサー)、反差別法制定をめざす移民の権利のための連合・韓国より集会に寄せて連帯メッセージをいただきました。こちらよりご覧いただけます。

内閣総理大臣、外務大臣、法務大臣に宛てた要請文を採択して、集会は終了しました。

** 書簡の原文(人種差別撤廃委員会)はこちら、日本政府回答(2024 年9月 25 日)はこちら