2012年11月6日
IMADR-JC プレスリリース
国連人権理事会普遍的定期審査(UPR)作業部会、第2回日本審査報告書採択
日本政府 79ヶ国から174項目にわたる人権課題の勧告うける
10月31日、国連欧州本部で実施された日本の第2回国連人権理事会普遍的定期審査(UPR)の結果が作業部会報告書としてまとめられ、11月2日に採択された。世界79ヶ国の政府から出された174項目にわたる勧告を含む本報告書は、2013年3月に開催される第22会期人権理事会に提出され、正式に採択される。日本政府はそれまでの間、これら勧告を受け入れるかどうかを検討することができる。それら勧告のすべてをここで網羅することはできないが、反差別国際運動日本委員会として差別撤廃および人権確立のために追及してきた課題を中心に以下に報告をする。
勧告で数多くとりあげられた課題は以下の通りである:(( )内の数字は、出された勧告の数を表す)
(なお、IMADRの活動テーマを中心にリストアップをしたこと、さらには、勧告の数を表す数字は内容が二項目にまたがっていたり複相するものがあるため、正確性を期してはいないが、関心の度合いを示す指標として挙げたことを留意いただきたい)
以上、列挙したが、これら以外にも勧告にとりあげられた問題は多くある。特筆すべきは、福島第一原発事故に伴う勧告として、放射能の危険から福島地域住民の健康と生命の権利を守り、11月に訪日予定の健康の権利に関する国連特別報告者が、避難中の人びとや支援団体と面談できるようにすることを求める勧告である。さらには、前回のUPR審査と同様に、部落、アイヌ、在日コリアン、移住者、琉球・沖縄などマイノリティ女性の状況に関する実態調査の実施と生活状況改善のための国家戦略の策定等も勧告された。
今回の勧告には、反差別国際運動が特に関心をもってきた課題である、国籍、人種、出身に拘束されない権利の保障についての言及が多数見られた。人種、民族、国籍、ジェンダー、言語、宗教、障害の有無、性的指向などに基づく差別を禁止する法律の制定を求める勧告が多くの国から出された。またマイノリティ集団、移住者、難民を含む外国人の権利を実現するために諸々の制度を整える必要性についても繰り返し指摘された。さらには、民族的マイノリティの子ども、日本国籍を持たない子ども、そして障害を持つ子どもへの教育権を含む権利を保障し、差別を撤廃する法的措置をとることなども勧告された。そして、国内の人権状況改善に大きく影響を与える、パリ原則に基づいた国内人権機関の早期設置を促す勧告が多数の加盟国より出された。なお、アイヌ民族の権利促進や部落に対する社会的・経済的差別の解消など、審査で言及されながら勧告には含まれなかった重要な課題がある。UPR審査は前回審査の勧告の実施状況を中心に進められるため、沖縄における人権課題についても勧告に含まれなかったことに留意する必要があるだろう。
今回の審査では多数の勧告が出されたが、この審査システムの最も重要な部分は、他の条約機関の審査と同様、これら勧告がいかに履行されるかである。「先進国」の日本が、国際関係の中で「人権後進国」というレッテルを貼られることを避けるためにも、条約機関も含め、国連人権機関による審査での指摘や勧告に対して具体的行動をもって返答する時が来ている。
以上
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