4月9日に人権理事会が開催した「新型コロナウイルス(COVID-19)と人権に関する人権高等弁務官とのバーチャル対話」において、IMADRを含む70団体以上のNGOが、自由権に関する声明、社会権に関する声明、そして国連に対する勧告に関する声明の3つの共同声明を発表しました。概要は以下の通りです。
自由権(市民的および政治的権利)に関する声明
私たちは、世界の少なくない数の国がパンデミックに対する緊急事態宣言や権限を濫用し、表現の自由の権利やインターネットへのアクセスを含む情報への権利を不当に制限していることを懸念します。ジャーナリストや人権擁護者などによる批判的な意見の表明が抑制され、処罰されることで、ウイルスから身を守る方法に関する重要な情報にアクセスできない人が多数います。新型コロナウイルスの蔓延を制御するには情報への自由なアクセスは不可欠であり、各国はパンデミックに関する決定事項、地理的に細分化された症例数、設備や物資の供給状況などの重要な情報をすべての人に正確に知らせなくてはなりません。刑務所、難民キャンプおよびその他の拘置施設は過密で、安全な水や適切な衛生設備などがないため、人びとは脆弱な状況に置かれています。また、インターネットへのアクセスがないためにウイルスから身を守るための最新情報を得ることが困難となっています。庇護希望者が難民申請を拒否されたり、外部との接触が少ない先住民族のコミュニティが、先祖伝来の土地から追い出されようとしていると各地で報告されており、懸念されます。
人種差別に関連し、新型コロナウイルスのパンデミックを理由に、国際人権法に違反して、強制送還を行なったり庇護を求める権利を一時停止または軽視しないよう各国に求めます。また、人種、肌の色、性別、障害の有無、言語、宗教、カーストや世系、政治的またはその他の意見、国籍や社会的出身、財産、出生といった理由に基づく差別がないよう、古くから周縁化されてきた集団に特に注意を払い、偏見、排除、暴力、そして感染者を標的とする問題などに対して、適切な支援や保護を確保するよう要求します。
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社会権(経済的、社会的および文化的権利)に関する声明
私たちは、世界各国および国際機関がこの危機において、健康、住居、水と衛生、食料、労働、社会保障、教育、健康的な環境、適切な生活水準に対する権利を尊重、保護、実現するために、利用可能なすべての資源を活用することを求めます。これらの権利のいずれにおいても、差別の禁止と平等の権利は守られなくてはならず、高齢者、持病のある人びと、貧困の中で暮らす人びと、障害者、子ども、先住民族、世系や職業に基づく差別を受けている人びと、移住者や庇護希望者、難民や国内避難民のキャンプで暮らす人びと、被拘禁者など、最も周縁化されリスクにさらされている人たちも保護されなければなりません。また、その対応において女性と少女、およびLGBT+の人びとの人権も守られなければなりません。
人種差別に関連し、移住労働者など不安定な形態の労働に従事している人びとは、新型コロナウイルスとその対応措置により、労働権に対する不利益を被る可能性が高いことを懸念します。移住労働者が拘留や国外退去などの恐れなしに、確実に医療や社会保障のサービスを受けることができるよう求めます。
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国連への勧告に関する声明
私たちは、国連人権高等弁務官および人権高等弁務官事務所(OHCHR)は市民社会と協力し、人権状況を効果的に監視および記録するための方法を確立するよう求めます。人権理事会の特別手続きであるすべての特別報告者、独立専門家および作業部会は、協力して各国に明確なガイダンスを提供するとともに、人権侵害にしっかりと対応すべきです。また、今後、人権理事会に提出する新型コロナウイルスと人権への影響に関する報告書を、特別手続き間で協力して作成するよう求めます。各人権条約機関は、今後の会期へのリモート参加を検討するとともに、NGOにも参加のアクセスを保証するよう求めます。そして、緊急手続きをもつ人種差別撤廃委員会や障害者権利委員会は、必要に応じてそれを使うよう求めます。人権理事会に対し、新型コロナウイルスの人権への影響に関する特別会合を開催することを提言します。また、人権理事会議長に対し、市民社会の人権理事会への参加が不当に制限されたり、不利な影響を受けたりしないよう確保し、参加方法について市民社会と協議するよう求めます。オンラインで国連会議に参加する人権擁護者にとって、新たな報復と脅迫のリスクが増大する可能性が出てきており、国連人権システムはそのような脅迫や攻撃を警戒し、事件が通報された場合には必ず対応するよう要求します。
これらを踏まえ、私たちNGOは、関係する国連人権メカニズムに対し、国家の国際的義務の遵守を監視するうえで、以下の要素を含めるよう求めます。
●パンデミック対応の措置が国際人権法に合致しているかどうか。
●措置が合法的であるかどうか、厳密に必要であるかどうか、合理的かつ釣り合ったものであるかどうか、期限付きであるかどうか、見直しの対象となるかどうか。
●措置が公衆衛生を守るという正当な目的に対するものであるかどうか。
●公衆衛生を守るという目的を達成するうえで、より制限が少ない手段が他にあるかどうか。
●措置が直接的または間接的を問わず差別的であるかどうか。
●措置が差別的または不均衡な方法で人権擁護者の自由または活動を制限しているかどうか。
●措置がすべての人を対象とし、誰もがアクセス可能で理解できる形式で伝達されているかどうか。
●措置によって障害者を含む特定の集団に対するサービスが中断されることがないかどうか、適切な代替措置を提供しているかどうか。
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