IMADR通信
NEWS LETTER
IMADR総会記念講演:「終わらぬ震災 それぞれの15年」─災害と人権問題─
IMADR事務局
片岡遼平さん(解放新聞埼玉支局編集長)の講演を以下、要約して報告する。
はじめに
私は埼玉県出身で、被差別部落にルーツを持っている。生命科学の研究者であったが、東日本大震災をきっかけに人生がかわり、以来、岩手、宮城、福島県の被災地で支援活動と取材をしてきた。
支援活動の軌跡
震災直後に部落解放同盟の仲間たちと行なった救援物資、瓦礫撤去、泥だしといったボランティア活動の中で、特に力を入れたのが、仮設住宅の縁台づくりである。被災者から「縁台がないと物干し竿に手が届かず不便」との声を受け、行政に相談したものの、全戸に作れず不平等になる、「贅沢品だ」と断られてしまった。解放同盟の大工に依頼し作り始めたが、要望が殺到し需要に追いつかなくなった。そこで、材料を提供し、仮設住宅で暮らしている人たちで縁台を作ってもらうことにした。これが功を奏し、仕事がなく活躍する機会を失っていた高齢男性が腕を振るう場になったり、見知らぬ隣人同士の間に新しいコミュニケーションが生まれたりした。
この取り組みが後に、熊本地震から仮設住宅の縁台が標準装備されることに繋がった。また、熊本地震の際には、初めてバリアフリーの福祉仮設住宅が建設されるといった進歩も見られた。
災害と人権問題
支援活動を行う中で、災害が起こる事自体が人権問題であると強く感じた。まず、高齢者や病気の人は犠牲になりやすいだけでなく、避難先の体育館等での雑魚寝は疲れが取れず、体調や持病が悪化して最悪の場合、亡くなることもある。
また、避難所に女性が着替えをする場所がなかったり、救援物資の中に生理用品がなかったりする。また、職場が被災すると非正規雇用者から先に解雇され、結果的に、特に母子家庭へ経済的な皺寄せがいくということを見てきた。
さらに、障害者は、避難すること自体が大変なだけでない。一番大変なのは、断水した避難所でのトイレ使用である。また、人が集まる場所ではパニックになる場合もある。そのため、壊れた自宅での在宅避難や車中泊を余儀なくされやすい。
災害が起きてから対処するのでは間に合わない。発生後に、格差や貧困の拡大、孤独死や児童虐待、DV、アルコール依存症といった社会問題が次々と起こるのが災害である。そのため、平常時からの人権や避難所環境への取り組みが何より重要である。
震災から15年、被災地の「今」
岩手県・宮城県の津波の被災地では、山を丸ごと削り、その土で津波が来た土地を埋め立てる嵩上げ工事や、巨大防潮堤の建設が行われた。巨額のお金をかけたものの、高台に移転している人が多く、嵩上げした場所に人は戻っていない。現地で被災者支援を行う村上さんは「震災から15年経ち、生活困窮者が非常に増えている」と言っていた。
福島県では、段階的に避難区域が解除されてきているものの、福島原発事故の影響で現在も立ち入ることができない帰還困難区域が存在する。また、新しいまちづくりが進んでいるが、今でも東京の50倍、100倍ほどの高線量の場所が多く存在する。一方、福島県と国は、若者の定住促進の補助金を出したり、福島イノベーション・コースト構想を進め、ドローン開発や将来的に軍事転用可能な技術を実験的に福島の沿岸で行ったりしている。
詳細は、著書(『終わらぬ震災 それぞれの15年』解放出版社)に詳述しているので、ぜひ手に取っていただきたい。
IMADR通信227号 2026/8/20発行