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【レポート】院内集会「入管法改定案による在留審査手数料の過大な引き上げにNO!」

新たな入管法「改悪」案
3月10日、日本政府は在留資格手続にかかわる手数料の大幅な引き上げを含む、入管法改定案を閣議決定し国会に提出。原稿執筆時点で、この法案は衆議院を通過している。
この法案では、在留資格の更新・変更手続きの手数料を現行の「上限1万円」から「上限10万円」に、永住許可申請の手数料を現行の「上限1万円」から「上限30万円」にそれぞれ引き上げるとしている。
ここ数年を振り返ってみると、2023年には3回目以降の難民申請者の強制送還を可能にするなど、難民申請者や非正規滞在者をターゲットとして、2024年には永住資格の取消制度の導入という形で永住者の人びとをターゲットとして、それぞれ入管法の「改悪」がおこなわれてきた。法的な地位の安定性という側面から捉えれば、もっとも脆弱な立場に置かれた人びとを排除し、その後、もっとも安定性が高かったはずの人びとを不安定にした、という流れとしてみることができるだろう。そして今回、その「間」にいる、すべての外国籍住民をターゲットとして、この国で暮らすための生活基盤である在留資格に法外な「値札」をつけようとしている。新たな入管法「改悪」であると言わざるを得ない。
この社会に暮らす移民や海外ルーツを持つ人びとを支援する全国の団体・個人などのネットワーク組織であるNPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、3月16日に「在留審査手数料を過大に引き上げる法案に反対する声明」を公表し、4月1日にはERDネット(人種差別撤廃NGOネットワーク)など10団体が共催する形で「院内集会:入管法改定案による在留審査手数料の過大な引き上げにNO!」を開催した。集会では、研究者や弁護士に加え、手数料の値上げによる影響を受ける移民当事者もその胸中を語った。

「秩序ある共生」施策の課題
鈴木江理子さん(移住連共同代表理事・国士舘大学)は今回の入管法改悪案などにみられる政府の姿勢の背景にある「秩序ある共生社会」という考え方について、その経緯と課題を指摘した。
「秩序ある共生社会」という言葉は、2025年5月に立ち上げられた自民党の特命委員会の名称(外国人との秩序ある共生社会実現に関する特命委員会)として最初に登場した。この後、「骨太の方針2025」の中でもこの言葉が使用され、内閣官房には「外国人との秩序ある共生社会推進室」が設置されるなど、石破政権下で徐々にこのワーディングが浸透していった。また、この直後には「日本人ファースト」を掲げた参政党が参院選で躍進する。鈴木さんはそのような政治状況が、自民党が右派・保守層へのアピールとして「秩序ある共生社会」というアジェンダを押し出すインセンティブになったのではないか、との見方を示した。
そして2026年1月、衆院解散の直前に「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現のための総合的対応策」(以下、総合的対応策)が公表された。この「総合的対応策」では、「一部外国人の問題点」を殊更にあげ、「国民の不安に対処する」ことを強調。社会における多様性、外国籍住民の権利や「共生」に関する言及はなく、「秩序」だけに軸足が置かれている。
鈴木さんは、外国籍住民への規制や管理・排除を強化するのではなく、多様な文化的背景を持つ人びとを前提とした法制度や環境整備こそが急務であり、それを怠ってきた責任は日本政府にあるとした上で、現在の「秩序ある共生」施策はむしろ分断を拡大し、差別を助長していると語った。

改定案の問題点
弁護士の鈴木雅子さんは、今回の法案の問題を①引き上げが過大・急激である、②理由が明確でない、③政令にほぼ丸投げ、という3点にまとめ、それぞれの点について次のように指摘した。
①に関する経緯として、現行法で手数料は1万円以内とされているなか、長らく変更がなかったものを2025年4月に値上げしたばかりであることをあげた。また、政令で想定されている具体的な金額についても説明。在留期間が3ヶ月以内の場合は1万円、1年の場合で2〜3万円、5年で7万円程度、永住資格の申請については20万円程度が想定されており、非常に大幅な引き上げとなっている。さらに法案では、手数料の改定を来年3月末までに施行するとしており、極めて短期間のうちに値上げが強行されることになるとした。
②については、「総合的対応策」のなかで、手数料の改定について『(前略)外国人の適正かつ円滑な受入れや秩序ある共生社会の実現に向けた受入れ環境整備等に係る各種施策を強化・拡充することが不可欠である。(中略)受益者負担の観点から、外国人に相応の負担を求めることが必要である。』と触れられていることに言及。この間、政府は「外国人問題」について語る際、「一部の問題ある外国人」といったフレーミングをしてきたが、ここではけっきょく「外国人」全体が一括りにされていると指摘。さらに、さまざまな人びとがともに暮らす「共生社会」の受益者はこの社会に暮らすすべての人であるにも関わらず、「外国人だけ」が受益者であるかのように扱われており、極めて雑な議論であるとした。また報道によれば、手数料の値上げによって得られた収益は一般財源として他の施策にも回すことが見込まれており、建前であったはずの「受益者負担」という説明にすら、すでに齟齬が生まれていることを強調した。
③については、他の施策に回すということであれば「手数料」というよりも「租税」に近いのではないか、と指摘。そのような性格の金銭徴収にも関わらず、具体的な部分を政令によってのみ定めるのならば、憲法84条が定める租税法律主義の趣旨に反する可能性もあると語った。

鈴木さんは、『在留資格、という生活に必須なものを1年で何十倍にもする、ということは対象が日本国籍者であればあり得ない』と語り、政治参加の道が極めて限定されている人びとを狙い撃ちにした施策だと非難。
加えて、ここ数年乱発されている排外的な政策の文脈として捉える必要性も指摘し、2023年の入管法改悪・「不法滞在者ゼロプラン」などによって非正規滞在者の排除が行われていること、また日本で長期にわたって暮らしてきた人びとの制度上のゴールとも言える永住資格や帰化についても厳格化が進められていることにより、多くの外国籍者が在留資格の更新を繰り返さざるを得ない不安定な状況に置かれていると述べ、今回の「手数料」の引き上げは、その不安定さに拍車をかけるものであることを強調した。

当事者の声
集会では、海外にルーツを持つ個人や当事者団体も発言を行った。そのうちの一人の発言を紹介する。

「私はラオス人でマオといいます。ラオス難民と結婚して、日本に住んで26年になります。永住ビザを持っています。
15年くらい前にシングルマザーになって5人の子どもを育てています。私はスーパーのお弁当を作る仕事をしています。今は、上の2人の子どもも働いて、私を助けてくれています。でも、下はまだ高校生、中学生、小学生で、生活はギリギリです。私と上の3人の子どもは、永住ビザを持っています。でも、下の2人の子どもは定住ビザです。私は今年の秋に2人の永住ビザを申請するため準備していました。そのとき、申請が20万や30万になるという話を聞きました。子ども2人だと40万、60万。私たちには絶対に無理です。同じ子どもなのに、私はとても悲しいです。下の子どもたちも日本の学校でがんばっています。でも、定住ビザだとやりたい仕事ができないかもしれません。
永住ビザは大事です。私たちのような家族や子どもがいることをどうか分かってください。」

この改悪案にとどまらず、外国籍住民に対するあまりに多くの差別的制度やその運用が顕在化している。さまざまなルーツの人びとによって現に営まれているこの社会に、本来必要な制度を求めていくためにも、この濁流にのまれるわけにはいかない。

IMADR通信226号 2026/6/3発行