IMADR通信
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第14回国連ビジネスと人権フォーラム 参加報告

2025年11⽉24⽇から26⽇の3⽇間にわたり、第14回国連ビジネスと⼈権フォーラムがスイス・ジュネーブで開催され、IMADRから参加した。今年のフォーラムのテーマは、「危機と変革の中でビジネスと人権を加速する」。参加したセッションの一部について紹介する。

開会セッション
開会セッションは、世界的な「複合危機」のさなかにおいて、多様なステークホルダーが国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)の実施を定着させ、拡大させる方法に関して、各分野からハイレベルのスピーカーが登壇して議論した。
国連人権高等弁務官は、法の支配や司法制度がビジネスにとって有用であり、したがって、ビジネスが法の支配や人権の保障に積極的に立ちあがることに期待を示した。また、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)に代表される変革を人権の擁護のためのチャンスとすべきこと、ビジネスリーダーたちが人権について発言していく必要があることを各スピーカーが訴えた。さらに、企業が人権に関してデータを集めて報告をすることによる「レポート疲れ」が起こっているとして、人権デューディリジェンスや報告は、指標や統計が目的ではなく、人びとのために行うことを再認識する必要があるとの指摘があった。

セッション「DEIにもう一度コミットして、守る ─インクルーシブなビジネス慣行のためのツールとして指導原則の実行を進める」
政治の圧力によって報告書からDE&I(多様性、公正性、包摂性)に関する記載を削除するといった、人権擁護の動きを後退させる動きがある中で、国家と企業は、政治情勢にかかわらず、すべての人にとって包摂的で安全かつ人権を尊重する職場を確保するため行動を強化する必要があることが議論された。企業による人権の軽視は、株主に対する忠実義務に反する可能性があるとの指摘、障害のある人の数は実は多いため、障害のある人の社会参加に対応することは経済的・社会的にインパクトがあるとの指摘、そして、インクルーシブな社会のためには、法律で差別の禁止を明確にする必要があることなどの指摘があった。

セッション「困難な時代における中小企業の人権デューディリジェンス」
コストなどの面で困難と言われることの多い中小企業での人権デューディリジェンスについて、これを支援する新興技術の手法を検討した。実用的なイノベーションや新たな連携により、中小企業による効果的な人権デューディリジェンスが実現しつつあり、特にAIを活用したサプライチェーン分析などの新技術が隠れたリスクの特定に重要な役割を果たすことが紹介された。
他方で、費用を誰が負担するかという問題があるという指摘もあり、これに対しては、データを得ることで利益を得る人が第一義的には払うべきではないかといった議論が行われた。

セッション「AI時代に人権を守る」
AIを開発、調達、または導入する企業は、国連ビジネスと人権に関する指導原則が定めるとおり、人権を尊重する責任を負うが、その中には人権デューディリジェンスの実施が含まれる。また、特にリスクに晒されるコミュニティなどのステークホルダーとのエンゲージメントが不可欠である。国家もまた、AI関連の危害から個人を保護する義務を負っており、企業行動を人権と整合させるためには規制と政策措置の「スマートミックス」(適切な組み合わせ)が求められ、これには、人権デューディリジェンスをAI規制に組み込むことも含まれる。こうした問題意識から、本セッションでは、AI自体に潜む人権問題について意見が交わされた。
議論の中では、各国に広がりつつある人権デューディリジェンスに関する法律(ハードロー)が、ビジネスと人権に関する指導原則(ソフトロー)に置き換わるわけではなく、ハードローができても指導原則は引き続き適用されるという指摘があった。

サイドイベント:OHCHRビジネスと人権ヘルプデスク開設
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)がビジネスと人権に関するヘルプデスクを開設したことが紹介された。

人権に対する様ざまな逆風の中でも、人権に対するビジネスの責任を果たし、果たさせるための当事者や実務家たちの気概が見えたフォーラムであった。

IMADR通信225号 2026/2/26発行