IMADR通信
NEWS LETTER
立候補する人をひとりにしない。わたしたちのバトン基金
鈴木 なりさ
わたしたちのバトン基金/FIFTYS PROJECT メンバー
日本の政治の景色はあまりにも長い間、特定の層、つまり高齢男性によって独占されてきた。女性議員比率はいまだ低く、わたしたちの声が十分に代弁され意思決定に関わることができているとは到底言えない。
私は現在28歳。26歳のとき、地方自治体の補欠選挙に立候補した。その少し前に行われた統一地方選挙で、初めて選挙ボランティアを経験したのがきっかけだった。20代の女性候補がジェンダー平等を訴えて立候補して当選する姿を間近で見た。「今度はあなたがやってみない?」そう声をかけてもらい挑戦を決めた。実際に立候補して見えてきたのは、20代・30代の女性たちが政治を志すときに立ちはだかる数え切れないほどの壁だった。
26歳で直面したさまざまな壁
第一の壁は、「資金の壁」である。日本の選挙制度では地方自治体選挙でも30万円の供託金が必要となる上、事務所費や印刷費、生活費も工面しなければならない。非正規雇用が増え、低賃金に物価高、加えて奨学金の返済などに追われるわたしたちの世代にとって、まとまった資金を準備することは困難を極める。私自身も貯金はなく、母がとっておいてくれた幼少期からのお年玉貯金をかき集めて活動資金とした。第二の壁は、ハラスメントである。政治の世界も依然として家父長制的価値観が根強く、その規範に収まる従順な女性でなければ受け入れられないという雰囲気も実績もある。立候補を表明すれば、SNSでの誹謗中傷や票ハラスメント、子どもがいなければ「産んでからにすれば」、産んでいれば「まだ小さいのにかわいそう」…私たちはどんな状況でも周囲から足止めを食らう。孤独のなかで候補者が精神的に追い詰められていく姿を何度も目にしてきた。
こうした経験から、「立候補する人をひとりにしない」と掲げ、「わたしたちのバトン基金」を設立した。
「わたしたちのバトン基金」
当基金は、2027年4月の統一地方選挙において20代30代の女性・ノンバイナリー・Xジェンダーの候補者100人を支援することを目指している。具体的には、立候補に伴う活動費として、一人あたりの供託金に相当する30万円を支援する計画だ。2025年11月から2026年1月末にかけて最初の30人分の支援金を集めることを目的にしたクラウドファンディングを実施し、目標の1,000万円を上回る1,162万9000円が集まり、支援者は773人にのぼった。先の選挙に向けてこれだけの方々がただ見守る以上の踏み込んだ応援に加勢してくれていることが、大きな希望のように思え、胸がいっぱいになる。
多様な声が届く議会へ
私たちが目指しているのは単に「女性の数」を増やすことではない。候補者の選考にあたって、ジェンダー平等政策に賛同し、その実現に向けて行動する意思のある人かどうかを確認している。これまで政治の意思決定から排除されてきた人々が、その属性や経験を携えたまま議会へ入り、ジェンダー平等の視点から政策を着実に進めていくことが必要だ。
かつて女性参政権を勝ち取るために奔走した先人たちのバトンを、いま私たちがしっかりと受け取り、次へ繋いでいく。見渡せば日本のみならず世界中で右傾化が進んでいる。政治の景色を変えることは容易なことではない。しかし、支援を受け取った候補者が当選し、議会でジェンダー平等実現のために声を上げ、その姿を見た次の世代がまた立候補する。このバトンリレーが続く限り、政治を私たちの手に取り戻すことに前向きに取り組み続けることができるだろう。
2027年4月、日本各地の地方自治体で、新しくて多様な20代30代の候補者たちが、これまで「とるにたらない」と後回しにされ続けていたジェンダー平等政策を掲げて、堂々と立候補する姿を見たい。あなたの力が必要だ。寄付という形でこの取り組みを支えてほしい。ぜひ周囲の人にこの活動を伝えてほしい。可能であれば、社内や組織の場で話をする機会もいただきたい。あなたにも、当基金をともにつくる立場へと、一歩踏み込んで関わってほしい。
わたしたちのバトン基金
https://www.batonkikin.com/
IMADR通信225号 2026/2/26発行