IMADR通信
NEWS LETTER

CERD勧告を在日朝鮮人差別の撤廃に向けたツールに─CERD日本政府報告書審査に関わって

「朝鮮学校は支援金を受け取っていないのに、他の学校が受け取っていることについて留意し、そのような区別に妥当な理由はないと考える。朝鮮学校は支援金を当然受け取れるべきであり、私たちはこの問題を歴史的な文脈で見るべきだ。歴史的な文脈こそ、朝鮮学校に通いたいと願う子どもたちから、いかなる支援金も奪われてはならないということの十分な根拠である」─。
これは、私が2018年8月16~17日にスイス・ジュネーブで行われた国連・人種差別撤廃委員会(以下、CERD)による日本政府報告書審査(以下、前回審査)の中で最も印象に残り、感銘を受けたCERD委員の発言である。
私が事務局員を務める在日本朝鮮人人権協会(以下、人権協会)は、長らくCERDの日本政府報告書審査に人種差別撤廃NGOネットワーク(以下、ERDネット)の構成団体として関わり、前回審査にもERDネットの一員としてCERDへのレポートの提出、ジュネーブ現地での委員らへの情報提供などを通してNGOの立場から積極的に関与した。
人権協会として前回審査時にCERDに報告した問題は①高校就学支援金制度からの排除や地方自治体による補助金の削減・停止などをはじめとする朝鮮学校差別問題と、②日本政府が未だ在日朝鮮人を「再入国許可」制度の対象とし、朝鮮民主主義人民共和国の旅券所持者などの在日朝鮮人が「みなし再入国許可」制度の適用対象から除外されている問題であった。
ジュネーブでは、高校就学支援金制度の適用を受けられないまま朝鮮高校を卒業した在日朝鮮人の大学生、朝鮮学校教員、朝鮮学校保護者、人権協会会員の弁護士と一緒に委員らへの情報提供を懸命に行った。その結果、本審査では朝鮮学校差別問題について3名の委員が「朝鮮学校にも高校就学支援金制度が適用されること、また地方自治体が朝鮮学校に補助金を支給することを求める」などと発言し、再入国許可制度の問題については2名の委員が「永住者に関して、出国前に再入国許可を取得する必要性を撤廃することを求める」などと発言した。
これらに対する日本政府の回答は、①について「政治・外交上の理由から制度の対象外とするものではない」、②について「北朝鮮の旅券は日本国政府の承認した外国政府ではないので有効な旅券ではない」という型通りの内容であったが、これに対してさらに委員が念を押すように朝鮮学校に関して発言したのが、冒頭で紹介した発言であった。同発言は「歴史的な文脈」という表現によって、日本の朝鮮植民地支配によって奪われた在日朝鮮人の言語や文化を取り戻す場としての朝鮮学校の意義を想起させた、非常に重要な発言であった。
こうしたやりとりの結果、CERDは同月30日に公表した総括所見にて「朝鮮人生徒たちが差別なく平等な教育機会を持つことを確保するため、高校就学支援金制度の支援金支給において『朝鮮学校』が差別されないことを締約国が確保するという前回の勧告を繰り返す」「他の永住外国人と同じ方法で日本を出入国できるよう、一部の永住外国人に対する出国前の許可要件を撤廃すること」を日本政府に勧告した。前者は、CERDが日本政府の欺瞞的な回答を見抜いて強力な勧告を繰り返した点に意義があり、後者は「みなし再入国許可」制度の差別状況について国連の条約機関が初めて指摘した点に画期的な意義があった。
勧告が出た後、私は日本各地で勧告が出るまでの活動と勧告の内容・意義を周知し、文部科学省など政府機関に勧告の履行を要求する活動を行った。とくに朝鮮学校への公的な差別が重なる中、勧告は多くの在日朝鮮人にとって大きな希望と自信をもたらすものだったと感じている。
残念ながら前回審査以降も状況は好転しておらず、幼保無償化制度からの外国人学校排除など、むしろ新たな差別状況が生まれている。しかし挫けることなく、次回審査にも精力的に取り組んでいきたい。

IMADR通信225号 2026/2/26発行