IMADR通信
NEWS LETTER

人種差別撤廃委員会の仕事

人種差別撤廃条約に設置と任務が規定されている人種差別撤廃委員会(以下、委員会)は、条約が発効した1969年から今日に至るまで、116回の会合を開き、18人の委員が国連に集まって任務を遂行してきた。その仕事の中心にあるのは、条約締約国の定期報告書審査である。審査のあと、その国における人種差別の諸問題への懸念と勧告からなる総括所見を作成して審査国に送る。それを受けた国は、勧告の実施に努め、数年後には、現状をまとめた新たな定期報告書を委員会に提出する。それを受けて、次の審査が始まる。このサイクルを通して、委員会は締約国において条約の国内実施が進むよう支援する。このプロセスにおいてNGOは独自のレポートを提出し、審査を傍聴するなどして関わることができる。国内人権機関がある場合、同機関は同じような方法で自国の審査に関わることができる。現在、世界182カ国が条約に批准・加入しており、近年は、年3回(昨年から国連の財政危機のため2回)、1会期8カ国ほどの審査が実施されてきた。これら審査に関わる政府報告、NGOレポート、総括所見などはすべてデータ化され、委員会のウェブサイトに公開されている。
条約実施の監視方法は審査だけではない。早期警戒緊急措置手続きと呼ばれる制度がある。審査を待たずして、すぐに対応が求められる事態(深刻で大規模な人種差別発生の恐れを含め、介入が必要な条約違反の切迫した状況)が起きた場合、市民社会組織から委員会に通報できる。日本ではこの制度を使ったケースが3件あった。最初のケースは、2012年、辺野古埋め立てのための土砂投入の停止を求め、IMADRと沖縄のグループが共同で行ったものである。通報を受けた委員会は周辺からの情報を集め、分析し、決定・声明、あるいは書簡のいずれかの方法で介入をする。このケースにおいて、委員会は日本政府に書簡を出し、それを公表した。日本の新聞でも大きく取りあげられた。
もう一つの委員会の介入として個人通報制度がある。この制度を受け入れている国における人種差別事件に関して、当事者が司法の最終判断を不服とした場合、その事件について委員会の審議と勧告を求めることができる制度である。なお、日本政府はこの通報制度を受け入れていない。
このように、委員会の任務遂行は60年近く連綿と続けられてきた。これまで委員会が対処してきた人種差別の問題は膨大である。これらの積み重ねが、明日、そして将来の人種差別による人権や人道違反の発生を防ぐことにつながる。これは何としても続けていかなければならない。

「人種差別撤廃条約は、国連創設からわずか20年後に達成された国連最高峰の成果です。60年前、この条約を採択するために集まったリーダーたちは、人種差別は人類の汚点であり、世界の国が撤廃のために今すぐ取り組むべき課題であると確認しました。・・・ある命が他の命より優れているという虚偽のために、数えきれないほどの命が失われ、生活が破壊され、夢が奪われてきたことを、今日こうして深い悔恨とともに厳粛にうけとめます・・・私たちは、その名を決して知ることのない数千万の人びと、夢を実現させる機会を奪われた人びとをここに記憶します。私たちは、レイシズムと人種差別が世界中に残してきた傷跡を共通の痛ましい遺産として認めねばなりません。」
2025年12月4日、人種差別撤廃条約60周年の記念の集いで、開会の挨拶に立ったゲイ・マクドゥーガル人種差別撤廃委員会副委員長はこう述べた。

IMADR通信225号 2026/2/26発行