IMADR通信
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女性差別撤廃条約批准40年、女性の状況は変わったのか

今年は日本が女性差別撤廃条約を批准してから40年目だ。この条約を批准するために男女雇用機会均等法ができたが、努力義務で効力は限られていた。法施行と同時に「雇用管理区分」が指針に導入され、男性は総合職、女性は一般職という形で差別が続くことになった。40年を経て日本の男女平等は前進したのだろうか?
男女賃金格差は未だ男性100に対し正規職でも77程度に過ぎない。女性活躍推進法で各企業が公表したデータでは、経団連役員企業20社中、正規女性で、男性の59%未満の企業が7社もあり、金融業では40%台もある。民間企業の女性管理職割合は2025年7月段階で課長職が15.9%、部長職では9.8%だ。小泉政権時代に掲げた「202030」の政府目標は未だ達成していないどころかはるか遠くだ。
同時に30年間で非正規労働者が増え、今や働く女性の53%が非正規雇用だ。その非正規労働者の時給の多くは最低賃金に拠っている。日本で最大の非正規労働者が働く郵政職場では、10月に改訂された各地の最低賃金にプラス20~30円で時給が決まるそうだ。最低賃金の近傍で働く労働者は、過去1割程度であったのが、今や3割に増えている。2020年に地方自治体で働く非常勤職員に「会計年度任用職員」制度が導入された。3年毎の公募が導入され、安い賃金の上に契約更新の不安でものを言うこともできない状況が出現し、3年目に更新されずに失職するケースも多い。当事者中心の「はむねっと」が2025年に実施した全国アンケートによれば、回答者の58%は週30時間以上働き、その年間就労収入は200~250万円が多く、フルタイムでも6割が300万円以下だ。
正規でも非正規でも女性労働が本当に低く値切られているのだ。しかし今、裁判でこれらの差別を是正することは非常に困難だ。1990年代多くの男女賃金差別裁判が闘われ、それなりの成果を上げてきたが、2000年頃から成果主義賃金が言われる中、最高裁は、企業の裁量権の前に判断を放棄している。労働契約法20条を基に非正規差別を訴えた裁判でも、高裁が一部認めた一時金や退職金の支払いを、最高裁は2020年10月に弁論を開いて棄却した。この状況を変えるには、女性差別撤廃条約の選択議定書を批准し、個人通報制度を導入する必要がある。しかし、日本は23年間も選択議定書批准の検討を続けている。日本の女性は国際基準の権利を未だ手に入れていないのだ。

女の賃金は何故安いのか
1985年男女雇用機会均等法成立時、あわせて第3号被保険者制度、派遣法ができた。その狙いは、女性が結婚したら扶養家族としてパートや派遣で安く使い、社会保険料の負担もしなくてよいという企業にとってのメリットがあり、家父長制を温存できるということにあった。国民民主党が103万円の壁を壊し178万まで拡大などと言っているが、178万円で自立して生きることはできない。必要なのは女性の労働が正当に評価され、自立できる賃金を実現することにつきる。
今年の最低賃金改定で、東京は1226円、全国平均は1121円となった。秋田は全国目安額63円を超えて80円のアップを決めたが、実施は来年の3月31日。結局、秋田の最賃アップ額は年間でみると40円になる。秋田を含め越年実施の県は5県にも及んだ。このままでは最低賃金制度が歪んでしまう。地方で安心して働き生きることができるためにも、今すぐ全国一律1500円の実現が必要だろう。時給2000円でも年間1800時間働いて360万円だ。これで子どもをもって生きていくのは困難だ。物価は毎月上がるのに賃金はほとんど上がらず、年金生活者やシングルマザーはお米も買えない、1日1食だという状況が生じているのに、国会は3か月も開かれず、与党は政争に開けくれた。
10月21日憲政史上初の女性首相が誕生した。海外からも極右政権と言われる高市氏では、日本のジェンダー平等は一層停滞しかねない。だが、あきらめるわけにはいかない。ジェンダー平等実現、選択議定書批准、選択的夫婦別姓制度実現、男女/正規・非正規差別の是正を求め、武力によらない平和の実現に向けて声を上げ続けよう。

IMADR通信224号 2025/11/21発行