IMADR通信
NEWS LETTER
最後の大会に─在沖米軍の性暴力事件に抗議
親川 裕子
Be the Change Okinawa 代表、IMADR特別研究員
2024年12月22日、暮れも押し迫る中、「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める沖縄県民大会」が開催された。約一年前に起きた、米空軍兵による16歳未満の少女に対する性暴力事件に抗議するため多くの人が集った大会について報告する。
女性たち、若者たちの想い
曇り空で沖縄にしてはかなり冷え込んだ当日、主催者発表で約2,500人が大会に集った。午後1時の開始前から多くの人が詰めかけ、収容人数1,500人の会場に入りきれず、ロビーでモニターを視聴した人々、ロビーにも入りきれず、寒空の屋外でじっと会場の声に耳を澄ませていた人たちもいた。宮古島市、石垣市、名護市に設けられたサテライト会場では、YouTubeでの映像が流された。同じく自宅などでYouTubeを視聴された方もいただろう。さらに東京、大阪、北海道、長崎と全国各地で連帯の集いが行われたと聞く。同時間に思いを共有した人々は主催者発表の数倍以上にのぼる。
開始前、壇上のスクリーンには、沖縄戦で米軍が上陸して以降に続く、性暴力の「年表」が映し出された。長年、在沖米軍人らによる性暴力に抗議の声をあげ続ける「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の調査資料によるもので約1,000件以上。一人の加害者が複数名を暴行した事例もあり、被害者の数は件数の倍以上になるという。新聞やメディア、発刊物などで明らかになっていない当事者の訴えも網羅したそのひとつ一つの事件は、警察で認知されていないもの、不起訴になってしまったものも含まれる。中には幼児が被害をうけた事件もある。参加した知人は、映画のエンドロールのように流れ続ける年表もさることながら、幼児から高齢者まで、被害者の年齢に幅があることに言葉を失ったと話した。
大会の壇上には、従来、恒例だった政治家の登壇も無く、玉城デニー知事以外はみな市民団体、組織の女性たちや若者が揃った。主催者代表の伊良波純子沖縄県女性団体連絡協議会会長は冒頭のあいさつで、いまだに日米両政府から被害者に対する謝罪が無いことを批判し、度重なる抗議によっても性暴力事件が後を絶たないことに対し、政府が繰り返す「綱紀粛正、再発防止」、通報体制の見直しに強い疑問を投げかけた。そして、日本政府の、とおり一遍の対応は女性の人権を踏みにじり、県民を愚弄するものだと糾弾した。さらに、事件の防止と、万が一に起きた場合、被害者を守り、加害者を処罰することは基地を提供する日本政府、提供をうける米国政府両方に責任があると指摘した。加えて、「県議会の抗議決議、意見書が求めていることは当たり前の安心安全であり、決して過大な要求ではない。」とし、同大会の発端となった事件に触れ、開催前の判決で加害者に懲役5年の判決が下ったことは、「勇気ある訴えに対し量刑は軽すぎる」と断言した。おとなの役割として、こどもたちに安心安全な日常を約束することが責務だとし、一日も早い意見書の実現と、二度とこのような事件を起こさないよう訴えをよびかけた。
あいさつに立った玉城知事は、事件をうけ、「県民が基地と共存させられている現実を、より強くより厳しく日米両政府に訴えていかなければならないと痛切に感じた」と述べた。さらに、去る9月の訪米で国務省や国防総省担当官らとの面談で「なぜ県民が不安を抱える基地と共存させられ、生活せねばならないのか」との疑問に彼らは答えられなかったとして、一個人の兵士の責任に矮小化しようとする姿勢、軍そのものの構造的問題が人権蹂躙に繋がっていることを指摘し、抗議していくことを誓った。
共同代表の髙良沙哉沖縄大学教授は、日米地位協定の不平等条項が沖縄に多く生じる点を指摘し、明文改正を強く求めた。さらに、これまでの米軍犯罪の性的暴行被害者に対し「あなたは悪くない、私たちはあなたの味方だと伝え続ける」とし、これ以上、軍事性暴力の被害者を増やしてはならないと強く抗議する意思を示した。
若者代表の中塚静樹さん(沖縄大学学生)は、これまで女性に対する性暴力を、女性だけの問題とし、男性である自分には何もできることはないと傍観していたとの後悔を吐露した。そして、無力感に苛まれ、なかなか行動に移せなかったが、男性も被害に遭うこと、誰もが当事者になりうるとして、暴力が強者から弱者に、支配の構造的関係の中で起こることを指摘し、沖縄の置かれた状況に言及した。このような構造的暴力に声をあげ、一歩を踏み出すことが真に被害者に寄り添うことに繋がるとして「沖縄に平和の扉が開かれるまで、諦めずに声をあげ行動し発信し続ける」と語った。
崎浜空音さん(慶應義塾大学学生)は、2016年、米兵に暴行殺害された事件の抗議集会に両親や家族と参加したことに触れ、「当時13歳の私が、いま、被害にあった女性の年齢を超え、ここに立っている」と目を赤くした。当時20歳の被害女性に想いを馳せ、拡がる未来を奪った事件に憤った。そして、大学進学で上京した環境との違いから、基地の街で生まれ育った自身の生活がどれほど人権侵害が身近だったかを痛感したと語り、「数年後、また事件が起こり、いま中高生の子たちを私のように壇上に立たせてはならない」とし「絶対に繰り返さない」と力強く語った。
会場ロビーでは、参加者がそれぞれの想いを黄色い紙に書いてボードに張り付けていくことで、ミモザの花ができあがる仕組みのメッセージボードが設営された。「なかったことにしない」、「ひとりにしない」、「性暴行を許さない」、「あなたは悪くない」…。事件に怒り、再発を許さない人々の声がミモザの花になっていた。
大会決議を採択し、最後は「ガンバロー三唱」もなければ「エイエイオー!」といった掛け声も無く、手を取り合って歌う「ケ・サラ」と誓いの言葉を群読して会を閉じた。
女性団体による初めての大会開催へ
今回、大会のきっかけとなった性暴力事件が報道された際、沖縄県も事件の報告をうけておらず、情報収集に追われた。沖縄県警と外務省は被害者のプライバシー保護の観点から公表していなかったと説明したが納得できるものでは無かった。さらに、本件発覚数日後には、別で米海兵隊員による性暴力事件が発生していたこと、これら以外に非公表の事件が3件発生していたことが明らかとなった。
相次いで発覚した米兵による性暴力事件をうけ、県内では様々な市民団体や各政党県連などから抗議の声があがるなど、県内に強い衝撃が走った。県内全41市町村議会でも相次いで抗議決議が可決され、沖縄県議会でも7月10日に全会一致で被害者への謝罪とケア、実効性のある再発防止策を米軍に求めるよう抗議決議と意見書を可決した。
これをうけ、沖縄県女性団体連絡協議会は、県議会での抗議決議、意見書で求められている被害者への謝罪とケア、実効性のある再発防止策の実施、実現に向けて県民、市民団体、県議会一丸となった超党派の県民大会の開催の実現に向け、9月には賛同団体の募集を開始した。
しかし、県政野党の自民党が多数派となった県議会との調整が難航。結果、女団協が中心となって県民大会を開催することを決定し、賛同団体で実行委員会を立ち上げ準備を急いだ。女性団体が主導する初めての県民大会となった今回、参加者も初めての方も多かったと聞く。主催者として反省点も多かったが大会の意義を強く感じた。
IMADR通信221号 2025/2/26発行