11月2日、IMADRも立ち上げ団体の一つである「国連条約機関NGOネットワーク(TB-Net)」主催で「条約機関委員の質、独立性、多様性の促進:透明および参加型の指名および選挙プロセスの重要性」と題するイベントを欧州国連本部で開催しました。このイベントでは、イギリス政府代表部、ニュージーランド政府代表部、ブルガリア政府代表部の他6つの国際NGOの協賛を受けました。このイベントは条約機関委員の質、独立性、多様性の促進における課題と実践例を共有し、今後の改善の取り組みを議論する目的で開催されました。
IMADRジュネーブ事務所の小松職員が進行を務め、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)条約機関課長のイブラヒム・サラーマさん、女性差別撤廃委員会(CEDAW)のグラディス・アコスタ・ヴァルガス委員、自由権規約委員会のバマリアム・コイタ委員、障害者権利委員会(CRPD)のテレシア・デゲネー委員、イギリス政府代表部のボブ・ラストさん、そしてアフリカ子ども政策フォーラムからイェフアラシェト・メコネンさんがパネリストとして登壇しました。以下、概要を紹介します。
イブラヒム・サラーマ(OHCHR)
政府のみが条約機関へ候補者を指名できるため、委員の質、独立性、多様性が現状では十分に満たされていない。また、選挙における政府同士の票の取引も問題である。改善に向けて、候補者の指名プロセスの良い実践例などを見習う必要がある。
ラディス・アコスタ・ヴァルガス(CEDAW)
良い委員を増やすには、条約機関と市民社会の関係性を理解することが大事である。条約機関が現実を反映するためには市民社会が重要な役割を果たしているが、それは選挙プレスにおいて十分に認識されていない上に、各国政府の選挙担当者によって質、独立性、多様性と言った原則が守られていない。条約機関選挙において市民社会が中心的な役割を担うために政府の透明かつ丁寧な協働が必要である。
バマリアム・コイタ(自由権規約委員会)
国連総会決議68/268で条約機関は地域やジェンダーなどの偏りなく構成されるべきとされているが、実際にはまだギャップがある。自国のモーリタニア政府による指名プロセスでは、人権省が人権活動家や弁護士を含む市民社会に通知をし、市民社会から候補者を提案することができる。改善の余地はまだあるが比較的透明性が確保されている。イギリスの指名プロセスは模範的である。
テレシア・デゲネー(CRPD)
前回のCRPD委員の選挙は女性の委員が十八人中一人になるという悲惨なものだった。このような結果を避けるために国連での選挙、国内での候補者指名プロセスおよび有意義な市民社会の参加について振り返るべきである。CRPDが異なる障害を持つ委員で構成されていることは誇りに思う。条約機関の委員の質と多様性を確保するためにいかに透明かつ参加型の選挙プロセスを促進できるか考える時期である。
ボブ・ラスト(イギリス政府代表部)
委員となる候補者が独立性、専門性そして多様性といった主要な条件に見合うことは、条約機関による締約国政府との良質な対話、有用な勧告、適確な個人通報および一般的勧告、および市民社会への開かれたプロセスを確保するために不可欠である。そのためにイギリス政府は条件を明確にした上で候補者の公募を行い、法務省や外務省の他に国内人権機関や人権NGOといった独立した第三者で構成される選考委員会で選出を行っている。この方法によって候補者の専門性の高さを確保されると共に、市民社会との信頼関係も構築されている。また、政府としての実直さと透明性を高めることにも繋がっている。
イェフアラシェト・メコネン(アフリカ子ども政策フォーラム)
アフリカ地域における市民社会スペースは縮小してきているが、条約機関への候補者を提案したり、不適格な候補者に異議を唱えたり、良質な候補者の当選をサポートしたり、オープンかつ透明性が確保された指名システムを求めたりすることは市民社会が果たせる人権向上における重要な役割である。アフリカの各国政府は条約機関の選挙をもっと重要視すべきであり、同時に市民社会の参加のスペースを拡大すべきである。
パネリストの発表に対し、政府とNGOから活発に意見や質問が続きました。当日のイベントはビデオでもご覧いただけます(英語)。