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国連人権理事会 59 会期(6/16 – 7/9, 2025)

6月16日、人権理事会59会期が開幕しました。

開会にあたり、ヴォルカー・テュルク国連人権高等弁務官は、今日起きている紛争や戦争、分断、貧困など世界の人権状況について言及し、国際法と人権尊重の必要性を強調しました。「この試練の時にこそ、すべての政府とその社会が人権のために声をあげ、行動をとる必要がある」と締め括りました。

7月9日まで開かれる今会期では、独立専門家や特別報告者などによるレポートの発表、女性の権利や気候変動の悪影響に関する年次パネルディスカッション、安全な飲料水と公衆衛生に関するパネルディスカッション、 14の国のUPR成果文書の提出と討議が行われ、最終日に決議と結論が採択されます。その一部を以下にご紹介します。

◼️6/18  意見および表現の自由に関する権利の保護と促進に関する特別報告者による「デジタル時代における表現の自由と選挙」に関する報告とそれに続く対話型討論。レポートはこちら

◼️6/19 教育の権利に関する特別報告者による「教育における安全」に関する報告とそれに続く対話型討論。レポートはこちら

◼️ 6/20 移住者の権利に関する特別報告者による「移住者の失踪あるいは強制失踪の事象 ―人権分析」に関する報告とそれに続く対話型討論。レポートはこちら

◼️6/24 女性の権利に関する毎年恒例の終日会議を開催。
午前は、「紛争、紛争後、人道的状況における女性と女児に対するジェンダーに基づく暴力」に関するパネルディスカッション、午後は「女性と外交の国際デー」を記念し、平和に向けたプロセスにおける女性のリーダーシップへの障壁の解消に関するパネルディスカッションを開催。

◼️ 6/25 極度の貧困と人権に関する特別報告者の「嵐(困難)を乗り切る:貧困、気候変動、社会的保護」に関する報告とそれに続く対話型討論。レポートはこちら

◼️ 7/3 1967年から占領下にあるパレスチナの人権状況に関する特別報告者の報告とそれに続く対話型討論。A/HRC/59/23

◼️7/3 現代的形態の人種主義に関する特別報告者による人種的正義の視点からみた交差性に関する報告とそれに続く対話型討論。レポートはこちら

59会期に関連する文書はこちらから。
*ヴォルカー・テュルク国連人権高等弁務官の挨拶全文はこちら


国連人権理事会59会期(2025年6月16日開会)は、25本の決議と1本の決定を採択し、7月8日に閉会しました。IMADRの活動に関係するものを中心に、決議の一部をご紹介します。

◼️ 国連の流動性、財政危機の状況下、人権理事会が委任した活動の実施 に関して、理事会は、国連人権高等弁務官から人権理事会議長宛の2025年6月16日付書簡について懸念を表明した。この書簡には、国連の流動性と財政危機のため、(本決定の附属書で言及されている)理事会が委任した2025年から2026年にかけた活動の一部が実施できないとした、現時点でのOHCHRの評価が示されている。理事会は、高等弁務官事務所に対し、2025年8月25日に開催される60会期組織会合および2025年12月8日の理事会組織会合で、理事会が委任した活動の実施可能性に関して包括的評価を示すよう求めた。

◼️人権と国際連帯に関して、独立専門家に対し、1)持続可能な開発のための2030アジェンダ(特に経済、社会、気候問題に関連する目標)の達成を含むすべての人権の実現における国際連帯の促進を目指し、関連する国際フォーラムやイベントに参加すること、2)国際連帯の権利に関する宣言の修正案に関して、2025年9月から12月の間に2つのハイブリット協議、2026年1月から4月の間に2つの対面協議をジュネーブで開催することを求める決議案が採択された。

◼️教育の権利に関して、すべての国に対し、1)教育を受ける権利を尊重、保護、履行する義務を遵守すること、教育における安全の権利(個人の尊厳が侵害されることから保護される権利)を認識することによって、人道的危機、災害後、紛争下、占領下を含むあらゆる状況における子どもを含むすべての人の教育を受ける権利を完全に実現すること、2)あらゆるレベルにおいて、無償で、包括的で、公平な質の高い公教育への投資の重要性を認識し、教育資金を増やし、世界人権宣言および関連する国際人権文書に定められたものを含む人権上の義務に合わせ、あらゆる適切な手段によって、いかなる差別もなく、すべての人に質の高い教育の機会を拡大する政策と措置をとるよう求める決議案が採択された。

◼️市民社会スペースに関して、国連人権高等弁務官に対し、1)人権理事会32会期に提出された「市民社会にとって安全で活動しやすい環境の形成と維持のための実践的な勧告を含む報告書」のフォローアップとして、テーマ別報告書を作成すること、2)そのなかに、勧告の実施状況のレビューと市民社会スペースに関する新しい趨勢の特定を踏まえて、新たな勧告を提示すること、3)その報告書を63会期に提出することを求める決議案が採択された。

◼️女性および女児に対する差別に関する作業部会の任務に関して、1)任期を3年延長すること、2)作業部会に対し、あらゆる活動において、年齢と障害の視点を主流とし、女児が直面する差別の具体的な形態を検討すること、3)作業部会に対し、国連女性の地位委員会および総会に対し、女性と子どもに対する暴力、その原因および結果に関する特別報告者の報告と類似の内容で毎年口頭報告を行うことを求め、4)62会期で、女性と女児に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する検討を続けることを最優先課題にする決議案が採択された。

◼️人権と気候変動に関して、1)62会期に開催される毎年恒例のパネルディスカッションは、気候変動がすべての人の人権の完全な実現に与える負の影響への対応という観点から、気候変動資金調達の機運を高めるための行動可能な道筋の促進に焦点を絞り、国際手話通訳とキャプション付きで開催されることを決定し、2)人権高等弁務官に対し、パネルディスカッションの要約報告書を64会期で提出することを求め、3)国連事務総長に対し、すべての人の人権の完全な実現を追求するため、充分な気候変動資金の調達のための可能な道筋と課題および機会に関して報告書を作成し、63会期で提出することを求める決議案が採択された。

◼️社会フォーラムに関して、1)2026年のフォーラムは、すべての人の到達可能な最高水準の身体的・精神的健康の享有に関する権利の実現に向けた国際協力と連帯に焦点を当て、ジュネーブで2日間にわたり開催すること、2)人権高等弁務官に対し、2026年社会フォーラムへの10名以上の専門家の参加を促すこと、3)2026 年社会フォーラムに対し、その報告書を第 65 会期に提出することなどを求める決議案が採択された。

◼️平和的集会と結社の自由の権利に関して、1)特別報告者の任期を3年延長すること、2)人権理事会および国連総会で、任務遂行に関して毎年報告することを求める決議案が採択された。

◼️性的指向および性自認に基づく暴力と差別からの保護に関する独立専門家の任務に関して、1)任期を3年延長すること、2)人権理事会および国連総会の作業計画に基づき、任務遂行に関して毎年報告することを求める決議案が採択された。

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