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ロマに対する差別に関する一般的勧告27(2000年、第57会期)
人種差別撤廃委員会は、
人種差別撤廃条約の締約国から提出された文書、条約第9条に基づき提出された締約国の定期報告書、及び締約国の定期報告書の検討に関連して委員会が採択した最終所見に留意し、
ロマに対する差別の問題に関するテーマ別の討議を組織し、委員会の委員の貢献、並びに、国連諸機関その他の条約機関、及び地域的組織の専門家による貢献を得、
関心を有する非政府組織との間で組織された非公式会合の間の発言及び書面で寄せられた情報を通じてなされた非政府組織の貢献をも得、
条約の諸規定を考慮に入れ、
条約の締約国が、ロマの特有の状況を考慮に入れて、ロマ社会の構成員の利益のために、適当な場合には、特に以下のすべて又は一部の措置をとるよう勧告する。
A.一般的な性格を有する措置
1.条約に従い、ロマに対するあらゆる形態の人種差別を、他の者又は集団に対するものと同様に撤廃するため、適当な場合には、立法を再検討し及び制定し又は改正すること。
2.ロマの状況を改善し、並びに国家機関及びいかなる人又は団体による差別に対するロマの保護を改善するために、国内戦略及びプログラムを採択し及び実施し、並びに確固とした政治的意思及び道義的リーダーシップを表明すること。
3.ロマが自が望む呼称及び所属を望む集団に関して、ロマの希望を尊重すること。
4.市民権及び帰化に関する立法がロマ社会の構成員に対して差別を行わないよう確保すること。
5.ロマ出身者である移民又は庇護申請者に対していかなる形態の差別をも回避するために必要なすべての措置をとること。
6.計画され及び実施されるすべてのプログラム及びプロジェクト並びに採択されるすべての措置において、しばしば二重の差別の犠牲者となっているロマの女性の状況を考慮に入れること。
7.ロマ社会の構成員に対して効果的な救済措置を確保する適当な措置をとること、並びに、ロマの基本的な権利及び自由の侵害の関する事例において、十分かつ迅速な裁判等がなされることを確保すること。
8.ロマ社会と中央及び地方の当局との間で、連絡及び対話のための適当な方法を発展させ、及びこれを奨励すること。
9.真の対話、協議その他の適当な方法を奨励することによって、寛容を促進し並びにロマ社会と非ロマ社会の双方の側の偏見及び否定的なステレオタイプを克服し、調整及び適応のための努力を促進し、並びに差別を回避するため、ロマ社会と非ロマ社会との間の関係(特に、地方レヴェルにおける関係)を改善する努力を行うこと、また、すべての者が自己の人権及び自由を十分に享有することを確保すること
10.第2次世界大戦中に、追放及び大量殺害によってロマ社会になされた地獄の責め苦を認識すること、並びに、ロマ社会への賠償の方法を検討すること。
11.非差別、他の者の尊重及び寛容(特に、ロマに関するそれ)の精神をもって、政治文化を発展させ、及び住民全体を啓発するための必要な措置を市民社会と協同してとること、並びに、そのためのプロジェクトを開始すること。
B.人種的暴力からの保護のための措置
12.ロマに対する人種を動機とした暴力行為を防止するための措置をとることによって、いかなる差別もないロマの身体の安全及び完全性の保護を確保すること。当該行為を調査し及び処罰するために警察、検察及び裁判所による迅速な行動を確保すること。並びに、加害者(公務員であるかその他の者であるかを問わない)がいかなる程度の不処罰をも享受しないことを確保すること。
13.特に逮捕及び拘禁に関連して、警察がロマに対して武器の違法な使用を防止するための措置をとること。
14.人種的偏見に基づいた紛争を防止し、ロマ社会の構成員及びその他の者に対する人種を動機とする暴力行為と戦うために、警察とロマの社会及び結社との間の連絡及び対話のための適当な取り決めを奨励すること。
15.ロマ社会の構成員が警察その他の法執行機関に就職することを奨励すること。
16.ロマ社会の構成員に対する暴力及び強制移動を防止するため、旧紛争地区における締約国及び他の責任を有する国家又は当局の行動を促進すること。
C.教育の分野における措置
17.学校制度の中にロマ出身者であるすべての児童を含めることを支援すること、及びドロップアウトの比率の減少(特に、ロマの女子生徒のそれ)のために行動すること、並びに、それらの目的のために、ロマの父母、結社及び地域社会と積極的に協力すること。
18.ロマの生徒に対する二言語又は母語の指導の可能性を残しながら、可能な限りロマの生徒の隔離を防止し及び回避すること。この目的のため、すべての学校の教育の質を向上させ、及び多数のマイノリティが就学している学校の到達度のレベルを向上させることに努めること、学校の職員をロマ社会の構成員から募集することに努めること、並びに、文化間の教育を促進することに努めること。
19.教育の分野において、その父母の協力の下にロマの児童を支援する措置をとることを検討すること。
20.ロマの生徒に対するいかなる差別又は人種的嫌がらせをも撤廃するために決意をもって行動すること。
21.旅行者であるロマ社会の児童に対して基礎教育課程を確保するために必要な措置をとること。その方法としては、当該児童に地域の学校に一時的に入学することを認めること、野営地において一時的な学級を設けること、又は遠隔地教育に関する新しい科学技術を用いることが含まれる。
22.教育の分野におけるプログラム、プロジェクト及びキャンペーンが、ロマの少女及び女性の不利な状況を考慮に入れることを確保すること。
23.ロマの生徒にかかわる教師、教育者及びロマの生徒である補助者の訓練において緊急かつ持続的な措置をとること。
24.より頻繁にロマの人びとからの支援を受けることによって、教育職員と、ロマの児童、ロマ社会及び父母との間の対話及び連絡を改善するために行動すること。
25.成人であるロマ社会の構成員の読み書きの能力の向上のため、義務教育年限を超えた当該構成員のための適当な教育形態及び体制を確保すること。
26.すべての適当なレベルにおける教科書にロマの歴史及び文化に関する章を含めること、また、ロマの歴史及び文化(ロマが使用している言語を含む)に関する書物その他の出版物並びに、適当な場合には、それに関するテレビ及びラジオのプログラムを編集し及び流布することを奨励し及び支援すること。
D.生活条件を向上させるための措置
27.雇用における差別及びロマ社会の構成員に影響を及ぼす、労働市場におけるすべの差別的慣行を禁止する立法を採択し又はより効果的なものとすること、並びに、かかる慣行から当該構成員を保護すること。
28.行政及び公の機関並びに私的企業におけるロマの雇用を促進するための特別の措置をとること。
29.可能な場合には、中央又は地方のレベルにおいて、公的部門の雇用においてロマを優遇する特別措置を採用し及び実施すること。例えば、次のような措置である。公機関との契約の締結及び政府が行い若しくは政府が支出するその他の活動、又は技能において劣るロマを訓練すること。
30.住居におけるロマ社会の隔離を回避することを目的とした政策及びプロジェクトを立案し及び実施すること。住居の建設、修復及び維持のプロジェクトにおいて、ロマの社会及び結社を他の者と共にパートナーとして関与させること。
31.住居の取得及び住居の利用に関して、主として地方の当局及び私的所有者による、ロマに影響を及ぼすいかなる差別的慣行にも確固として反対する行動をとること、ロマに住居を否認し及びロマを不法に追放する地方当局の措置に確固として反対する行動をとること、並びに、多数の住民が居住する土地の外であって、孤立し及び保健・衛生施設その他の施設が利用できないキャンプにロマを留め置くことを慎むこと。
32.適当な場合には、旅行者であるロマの集団に対して、すべての可能な施設を備えた、キャラバンの野営地のための土地を提供するために必要な措置をとること。
33.保健・衛生サービス及び社会保障サービスの平等な利用をロマに確保し、並びに、この分野におけるロマに対するいかなる差別的慣行をも撤廃すること。
34.ロマ(主として女性及び児童)に対して、それらの者が極貧、低レヴェルの教育及び文化の相違を原因として不利な状況にあることに留意しつつ、保健・衛生の分野におけるプログラム及びプロジェクトを立案し及び実施すること。ロマの結社及び社会及びその代表者(主として女性)を、ロマの集団に関する保健・衛生プログラム及びプロジェクトの立案及び実施に関与させること。
35.ロマ社会の構成員が、飲食店、ホテル、劇場及び音楽堂、ディスコティックその他のものを含む、一般公衆の使用を目的とするあらゆる場所及びサービスを利用することに関するいかなる差別的慣行をも防止し、撤廃し及び適切に処罰すること。
E.メディアの分野における措置
36.条約の規定に従い、適当な場合には、メディアにおける、人種的若しくは種族的優越性のいかなる思想、又はロマに対する人種的憎悪並びに差別及び暴力の扇動の撤廃のために行動すること。
37.すべてのメディア従事者に対し、偏見を流布せず、及びロマ社会の構成員である個人が関与した事件を当該社会全体を非難するような方法で報道することを避ける特別の責任があるという自覚を促すこと。
38.ロマの生活、社会及び文化について、並びに、その人権及びアイデンティティを尊重しつつ、すべての者を包含する社会を建設することの重要性について、教育上及びメディアにおけるキャンペーンを企画し、並びに公衆を啓発すること。
39.ロマによるメディア、新聞、テレビ及ラジオのプログラムの利用、並びに、自らのメディアの設立、並びにロマの養成及び訓練を奨励し及び促進すること。
40.メディアの自己監視方法(例えば、人種的な、差別的な又は偏見を含む言葉を避けるための、メディア団体の行動綱領の尊重)を奨励すること。
F.公的生活への参加に関する措置
41.ロマ少数者又は集団が、中央及び地方のすべての政府機関に参加する平等の機会を確保するために必要な措置(特別措置を含む)をとること。
42.ロマ社会の関心事項に関する問題を検討し及びそれに関する決定を採択する際に、中央及び地方の双方のレべルにおいて、ロマの政党、結社及び代表者との協議の態様及び仕組みを発展させること。
43.ロマに関する政策及びプログラムの立案並びにその実施に、その最も早期の段階でロマの社会及び結社及びその代表者を関与させること、並びに、当該政策及びプログラムに関する十分な透明性を確保すること。
44.ロマ社会の構成員が公的生活及び社会生活により積極的に参加し、並びに自らの利益を促進すること(例えば、自己の児童の教育及び自らの職業訓練)の必要性について、当該構成員により一層の自覚を促すこと。
45.ロマの公務員及び代表者、並びに将来のその候補者に対して、その政治的能力、政策作成能力及び行政能力の向上を目的とした訓練プログラムを作成・組織すること。
委員会は、さらに次のことを勧告する。
締約国が、その定期報告書の中に、適当な形式で、自国の管轄の下にあるロマ社会に関するデータを含めること。当該データには、政治生活へのロマの参加に関する統計データ、ロマの経済的、社会的及び文化的状況に関する統計データ(ジェンダーの観点からのものを含む)、並びにこの「一般的な性格を有する勧告」の実施に関する情報が含まれる。
政府間組織が、様々な国家との協力及び援助のプロジェクトの中で、適当な場合にはロマ社会の状況に取り組み、並びに、その経済的、社会的、及び文化的進展を奨励すること。
人権高等弁務官が、その弁務官事務所の中にロマ問題担当部署又は担当官を設けることを検討すること。
委員会は、また、「人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容と戦う世界会議」が、ロマ社会が現代の世界にあって最も不利な地位にありかつ最も差別に服しやすいものの一つであることを考慮に入れて、上記の勧告に妥当な考慮を払うよう勧告する。