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人種差別のジェンダーに関連する側面に関する一般的勧告25(2000年、第56会期)
1.委員会は、人種差別が女性と男性に等しく又は同じような態様で影響を及ぼすわけでは必ずしもないことに注目する。人種差別が、女性にのみに若しくは主として女性に影響を及ぼし、又は男性とは異なる態様で若しくは異なる程度で女性に影響を及ぼすという状況が存在する。女性と男性が、公的生活分野及び私的生活分野において異なった生活経験をもっているということが明確に承認され又は認識されていない場合には、このような人種差別はしばしば見逃されるであろう。
2.一定の形態の人種差別は、そのジェンダーの故に特に女性にのみ向けられることがあり得る。例えば、拘禁中又は武力紛争中に特定の人種又は種族的集団に属する女性に対して性的暴力が行われる場合や、先住民女性の強制的不妊措置、インフォーマル・セクターの女性又は外国で雇用されている家事労働者に対して、その雇用者が行う虐待などがそうである。人種差別の結果は、主として又は専ら女性に影響を及ぼすことがあり得る。例えば、人種的な偏見を動機とするレイプの結果としての妊娠や、いくらかの社会における追放(ostracism)などがそうである。女性は、また、ジェンダーに関連した障壁の故に人種差別に対する救済措置や苦情処理手続を利用できないことによって、一層の障害に遭遇する可能性もある。例えば、法制度におけるジェンダーに基づく偏見や、私的生活領域における女性に対する差別などである。
3.委員会は、いくらかの形態の人種差別が女性に対して独自で特別な影響を及ぼすことを認識し、その作業において、人種差別と結合している可能性のあるジェンダーの要素又はジェンダー問題を考慮するよう努めるであろう。委員会は、この点に関する委員会の実行にとって、当事国と協力して、女性に対する人種差別、並びに人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身を理由として市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的権利の完全な行使及び享有において女性が直面している不利益、障害及び困難な問題を評価し、これを監視するより体系的かつ一貫したアプローチを発展させることが有益であると信ずる。
4.従って、委員会は、その会期における作業方法(締約国が提出した報告書の検討、最終所見、早期警報手続及び緊急行動手続、並びに一般的な性格を有する勧告を含む)において、人種差別の形態を検討するに際してジェンダーの視点をとり入れ、ジェンダーに基づく分析を組み入れ、及び他のジェンダーを除外しない言葉(gender-inclusive language)の使用を奨励する努力を強化するつもりである。
5.ジェンダーに関連する人種差別の側面を十分に考慮に入れるための方法論の一部として、委員会は、その会期の作業方法の中に、ジェンダーと人種差別の関連に関する分析を含める。特に次の点を考慮する。
a) 人種差別の形態及び発現の態様
b) 人種差別が発生する諸状況
c) 人種差別の諸結果、及び
d) 人種差別の救済措置及び苦情処置手続の利用可能性
6.委員会は、締約国が提出する報告書が女性に関する条約の実施に特定した情報、又はそれに関する十分な情報を含んでいないことに注目し、条約上の諸権利の、人種差別のない平等な享受に影響を及ぼす要因及び、かかる平等な享受を女性に確保するに際して経験している困難な諸問題を、質・量共にできる限り記述するよう締約国に要請する。人種又は種族的出身別のデータであって、さらにそれを人種集団又は種族集団内におけるジェンダーを基準に細分したデータがあれば、それがなければ注目されることなく、またそれに関心が向けられることのないままとされる可能性のある女性に対する人種差別形態を委員会及び締約国が確認し、比較し、及びそれを矯正する措置をとることが可能となるであろう。