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移民及びそのような者とみなされる他の者に対する外国人排斥を根絶するための一般的ガイドラインに関する合同一般的勧告39(2025, 116会期)

I. 導入

1. 本合同一般的勧告/一般的意見は、人種差別の撤廃に関する委員会(以下、人種差別撤廃委員会という)の一般的勧告38(2025年)及びすべての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する委員会(以下、移住労働者権利委員会という)の一般的意見7(2025年)という、移民及びそのような者とみなされる他の者に対する外国人排斥を根絶するための一般的ガイドラインに関する合同一般的勧告/一般的意見1と同時に採択された。その合同一般的勧告/一般的意見と本合同一般的勧告/一般的意見とは、独立した文書であるけれども、これらは相互に補完するものとして設計されており、あわせて読まれ、解釈され、かつ実施されるべきである。

2. 本一般的勧告/一般的意見の全般的な目的は、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約(以下、人種差別撤廃条約という)及び/又はすべての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約(以下、移住労働者等権利条約という)の締約国及びすべての関連する利害関係者に対し、外国人排斥及びその人権に対する影響を根絶するための包括的政策において、テーマ別分野における措置を開発し、かつ実施することに関する、権威ある指針を提供することである。

II. 権利を基盤とする移住に関する言説を発展させ、責任ある報告を促進し、ヘイトスピーチと闘い、及び結束力のある社会を構築する

A. 言説とコミュニケーション政策

3. 言説(narrative)とは、共同体、メディア、大衆文化、社会的及び政治的著名人などの公共アクター、並びに一般公衆によって、それらを取り巻く世界を説明し、かつ理解するために創造される、強力で、社会化された物語である2。言説は、人の移動の分野において、特に外国人排斥、その原因及びその結果に拍車をかけるにあたり、ますます顕著な役割を果たしてきた。外国人排斥は、言説、政策、態度、偏見及び慣行の組み合わせから情報を得て、かつ情報を与えている。移住及び移民のついての狭量かつ不公正な表象の継続的な反復が、外国人排斥的な言説が出現する環境を累積的に可能にしている。その結果、差別、外国人排斥的及び人種主義的ヘイトスピーチ、さらには暴力が、容認され、かつ正当なもののように見えかねない。この連鎖反応が、政策及び慣行に情報を与え、逆に、これらの政策及び慣行が、これらの言説を助長し、かつ増殖させる。この有害な組み合わせが、複合的な形態の差別と結びついた人権侵害を引き起こす。

4. 外国人排斥に対処する包括的な政策の鍵となる構成要素は、移住に関して人権を基盤とし、かつエビデンスに基づく言説を開発し、かつ普及させることに焦点を当てることである。移住関連問題に関するコミュニケーション政策は、積極的及び消極的義務の双方を伴う。締約国は、移民を問題、脅威若しくは危険なものとして、又はその他の非人間化する形で描写するものを含む、偏狭で、偏向し、偏見に満ち、及びステレオタイプ化した言説を直接に又は間接に創り出し、又は拡散することを差し控える措置をとるべきである。同様に、締約国は、スティグマ化、ステレオタイプ化、及び犯罪化につながりかねず、かつ不平等な取扱い及び差別の正当化を助長しかねない、メディア及びデジタル・プラットフォームによって拡散されるあらゆる誤情報及び偽情報を抑制し、かつこれらに反論するべきである。締約国はまた、特定の国籍を特定の犯罪に結びつけること、並びに「移民は犯罪者である」、「移民は仕事を盗んでいる」、「移民は不均衡に社会的サービスを利用している」、「移民は税金を払わない」、及び「移民は病気を運んでくる」といった表現を用いることを差し控えるべきである。

5. 両委員会は、犯罪と考えられるものではなく、かつ考えられるべきでない非正規な状態3にある移民に対して、「不法」という用語を、誤解を招きかねない形で使用すること、及びこれらの者に否定的な性格を付与することは、移住に関するスティグマを与え、かつ有害な言説の広がりの範囲を明確に示す指標であることを指摘する4。両委員会は、いかなる人間も「違法」として特定しえないことを再確認する。すべての移住労働者の人権及び尊厳を確保する措置に関する1975年12月9日の総会決議3449(第30会期)を想起し、両委員会は、すべての国家に対し、「不法」などの用語を使用することを差し控えるよう、強く要請する。国家はまた、恣意的に、又は均衡を失して、移民による人権の享有を損なう措置を正当化するために、公の秩序又は安全などの正当な目的を過度に強調することを差し控えるべきである。

6. 両委員会は、移民に関する権利を基盤とした言説を形成し、かつ実施する積極的義務も有していると考える。歴史的な移住のプロセス、及びますますダイナミックな形態となっている今日の世界における移住を含む、各社会を形成してきた多様性に関する、エビデンスに基づく描写が極めて重要である。移民は、他者、又は部外者としてではなく、共同体の構成員として提示されるべきである。締約国のコミュニケーション・イニシアティブは、居住する社会に対する移民の多様な貢献を認める言説について、突出した位置づけを確保するべきである。両委員会は、締約国に対し、移民及び移住について人権を基盤とした言説の構築に関する国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)の勧告5を考慮に入れるよう強く要請する。

7. 国際的移住及び移民に関する言説は、共同体の経済的、社会的、文化的及び政治的生活のあらゆる水準で生じるおそれのある、外国人排斥の否定的な影響について描写し、かつその証拠を提示する措置を含めるべきである。国民の生活条件を改善する手段として移民に対する差別を助長する言説は、批判的に検討され、かつ拒絶されなければならない。逆に、権利を基盤とし、かつエビデンスに基づく言説は、外国人排斥及びその有害な影響に対処する政策によって創出される有益な循環を強化することができる。

8. 両委員会は、人々を人権の享有から排除し、人種化されたコミュニティに対して均衡を失した悪影響を及ぼすために、移民の地位がますます締約国によって利用されていることを、重大な懸念をもって指摘する。いかなる状況においても、非正規移民の地位それ自体が、公共の安全に対する脅威とみなされ、又は犯罪的行動と同一視されてはならない。締約国は、移住に関する、及び直接に又は間接に、非正規の状況で国を離れ、移動し又は滞在することを強いられている者に関する、公衆の言説について相当の変容を促す具体的な措置をとるべきである。

9. 一般に、非正規の状態に陥ったのは、移民の責めに帰するものではない。むしろ、移民を非正規の状態に置いているのは、作為又は不作為により、締約国によってなされた政策及び慣行上の選択である。人種主義及びジェンダー不平等を含む構造的な要因はまた、正規の形で、ある国を離れる権利、並びに他の国に入国し及び滞在する権利に関する現行規制に影響を及ぼす。締約国は、非正規移住及び非正規の移民の地位を有する者が、このような状態又は地位に至る状況に光を当てる包括的な言説を通じて提示されるよう確保すべきである。移民の正規化に関する言説は、正規化を犯罪を実行した者に対する恩赦として表示するよりはむしろ、複数の公共政策の肯定的な成果を達成するための重要なツールであることを強調するべきである。

B. メディアの役割

10. 人の移動により、社会がますます文化的に多様になりつつある世界において、メディアは、2つの矛盾する結果をもたらす重要なベクトルとして成長してきた。一方で、メディアは異文化間統合、社会的結束及び相互理解をはぐくむ役割を果たしている。メディアは、公共の監視役として重要な役割を果たしており、調査報道は外国人排斥、差別及び人種主義を助長する法及び政策を監視し、報道し、かつ暴露するにあたって、役割を果たすことができる。他方でメディアは、社会的不平等及び紛争につながる誤情報、憎悪、ステレオタイプ及び偏狭な言説を広めるために悪用されうる。両委員会は、移住、移民及びそのような者とみなされる者、特に、人種化されたコミュニティ出身の者に関連する問題に対処するにあたって、メディア業者が主要な社会的責任を有していることを強調する。

11. 締約国は、メディアにおける移民に対する外国人排斥及び差別的ステレオタイプと闘うための措置6を取るべきである。これには、国際基準に合致した適切な立法の採択7が含まれる。さらに、締約国は、いまだに存在しない場合には、外国人排斥的及び人種主義的コンテンツを除去するために、映像メディア及び出版メディアの規制しかつ監視し、並びに外国人排斥的、人種及びその他の形態の差別から保護する任務を付与された、独立の公的機構を設置するべきである。これらの機構は、多文化的、包摂的、及びエビデンスに基づく公共コミュニケーション政策を促進する任務も付与されるべきである。それらはまた、メディア、デジタル・プラットフォーム、及び広告業者を含むその他のコミュニケーション事業者に向けた指針及び勧告を開発すべきである。民間メディア、共同体のラジオ局及びコミュニケーションの分野からのその他の利害関係者との参加型の対話及び協議が奨励され、かつ促進されるべきである。

12. 民主的社会における表現の自由の重要性を考慮に入れて、両委員会は、公共及び民間の双方のあらゆるメディア事業者が、移住に関する責任あるアプローチ、並びに倫理的な報道及び広告を確保することを目的とした、行動規範、並びに自主規制的な原則及びガイドラインを採択することを勧告する8。追加的な措置は、選挙運動、並びに人道的及び強制移動の危機におけるものを含む、特定の文脈におけるこれらの誓約を強化するべきでる。締約国は、メディア事業者が、国際人権法の諸原則及び諸規則に基づく、移住に関する倫理的及び責任ある報道を確保するよう奨励すべきである9

13. メディアのガイドライン及び規則は、誤情報及び偽情報、特に移民及びそのような者とみなされる他の者を差別し、又はそれらに向けた敵意を創出するために使用されるときには、これらの情報を防止しかつ対処することを目的とするべきである。このガイドラインはまた、メディアにおける偏狭かつ偏見のある描写、特に移民を突出して犯罪関連のメディア報道に結び付けるもの回避し、かつ拒絶することを促進するべきである。それらは、ステレオタイプ化したアプローチを防止するために、メディア関係者の意識を向上させるべきである。ジャーナリストを含むメディア関係者は、国際移住機関(IOM)10及び国際労働機関(ILO)11によって開発されたものを含む、責任ある報道に関する現存するガイドラインを考慮に入れるよう、奨励される。

14. メディアの自己規制は、次の行為を差し控えるという制約を含めるべきである。

       (a) 非正規の状況にある移民を描写するために「不法」という用語を使用すること、

       (b) 容疑者を報道する際に、国籍、エスニシティ又は宗教的属性を強調すること、

       (c) 否定的な誤認を醸成するおそれのある「侵略」、「雪崩」、「波」又は類似の用語で移民の移動を表現すること、

15. メディアは、国及び地方政府の権限ある当局、国際機関、並びに移民組織、学術団体及び労働者団体を含む市民社会組織と連携して、肯定的かつ包摂的な物語の伝達のイニシアティブを促進するべきである。移民を、社会の他のあらゆる構成員と同様に、隣人、親、学生、労働者、専門家、ケア提供者、コミュニティの指導者、又はそれらが遂行する他のあらゆる役割を有する者として描くことは、誤情報及び偏見を減少させ、移民が社会に対して行っている貢献を評価し、並びに社会的結束を醸成する。

16. メディア報道において移民の声が欠落していることにより、移民についての他者化と非人間化がさらに助長されている。公共及び民間メディア関係者は、メディアにおける移民及びそのような者とみなされる他の者の可視性を高め、社会の文化的多様性を反映し、かつステレオタイプ化したアプローチを回避するための措置をとるべきである。加えて、メディア関係者及びジャーナリストは、移住に関連する事項、特に外国人排斥及びその有害な結果を助長するおそれのあるニュース記事又は言論を報道する際に、移民組織及びコミュニティの指導者を含む、移民と協議するべきである。

17. 締約国は、移住に関して責任ある、かつ肯定的な報道、並びに移民の人権を侵害する事象の報道を促進するジャーナリストを支援し、及び保護する措置をとるべきである。

18. メディア関係者、市民社会組織、人権機関及びその他の利害関係者と連携して、締約国は、放送メディア、エンターテインメント、及び他の関連する分野を含む、ジャーナリスト及び他の通信分野の関係者を対象とする、人権及び反差別訓練イニシアティブを促進するべきである12

C. ソーシャル・ネットワークとその他のデジタル・プラットフォーム

19. ソーシャル・ネットワークを含むデジタル・プラットフォームを運営し、又は経営する民間事業者は、仮想空間における移民及びそのような者とみなされる他の者に対する外国人排斥、人種主義及びその他の憎悪及び差別の表明を防止しかつ撤廃する重要な社会的責任を有する。実際に、アルゴリズム及びその他のデジタル・プラットフォーム上のツールは、ヘイトスピーチを含む、外国人排斥及び人種主義の拡散及び悪質化に寄与しうる。そのため、両委員会は、人種差別撤廃委員会の一般的勧告35 13に沿って、インターネット・サービス・プロバイダーを含むこれらの事業者が、意見及び表現の自由についての権利を尊重しつつ、そのような表明を防止しかつ対処するための実効的な自己規制を実施し、並びにガイドライン及び倫理規範を採択するよう勧告する14

20. 締約国は、移民及びそのような者とみなされる他の者に対するオンライン上のヘイトスピーチを禁止し、防止し、及び監視する措置、並びにすべての通報された事案が効果的に捜査され、適切に訴追され、かつ処罰されるよう確保する措置をとるべきである15。締約国は、民間事業者がヘイトスピーチを禁止しかつそれらについて制裁を科すための規制を含むガイドラインを効果的に整備するよう奨励する政策、並びにこれらのプラットフォーム上の外国人排斥及び関連する形態の差別を防止し及びそれらに対処する政策を構築するべきである。加えて、締約国は、国際連合教育科学文化機関によって開発されたデジタル・プラットフォームのガバナンスに関するガイドライン及びビジネスと人権に関する指導原則を実施する措置をとるべきである。

21. 両委員会は、公的治安部門、インターネット・サービス・プロバイダー、デジタル・プラットフォーム、政府機関、国際機構、市民社会、国内及び地方人権機関、外国人排斥、人種主義及び関連する形態の差別と闘う公的機関、並びに移民及び人種化された集団の構成員の代表者によって構成される作業部会の創設を勧告する。この多様な利害関係者の枠組みは、移民及びそのような者とみなされる他の者をスティグマ化し、又は犯罪化することを目的とするフェイク・ニュースを適時に解体するための積極的なメカニズムを含む、オンライン上の外国人排斥及び人種主義を防止し、かつこれらに対処するための措置及びガイドラインを開発することができるであろう。

22. 権限ある当局は、外国人排斥に対処し、かつこれらを防止するために、並びに移住に関する包括的な言説を促進するために、ソーシャル・ネットワークにおいて活発な役割を果たすイニシアティブを開発すべきである。締約国は、障害のある移民にとってアクセス可能なツールを含む、外国人排斥を防止し、かつ多文化統合を促進するために設計されたデジタル技術を支援すべきである。

23. 子どもの生活におけるデジタル環境がますます重要になっていることを考慮し、両委員会は、締約国が、その一般的意見25(2021年)において子どもの権利委員会によって開発された権威あるガイドラインを実施するために必要なあらゆる措置をとるよう勧告する。

D. ヘイトスピーチと外国人排斥的暴力

24. 外国人排斥を根絶するための包括的な政策は、移民及びそのような者とみなされる他の者に対する外国人排斥的な及び交差的な暴力を助長し、扇動し、又は実行する団体及びその他の集団を特定し、禁止し、及び制裁することを目的とする立法上、運用上、及びその他の措置を含めなければならない。両委員会は、締約国が、人種主義的ヘイトスピーチと闘うことに関する一般的勧告35(2013年)において人種差別撤廃委員会が開発した権威あるガイドラインを、関連するすべての政策に完全に統合するよう奨励する。両委員会はまた、差別、敵意又は暴力の扇動を構成する民族的、人種的又は宗教的憎悪の唱導の禁止に関するラバト行動計画を実施するための措置がとられるべきことを勧告する。

25. 両委員会は、外国人排斥並びにヘイトスピーチ及び差別的憎悪に基づく暴力の被害者による、司法及び救済制度へのアクセスを実効的に確保するために、立法措置をとること、及び運用プログラムを実施することの重要性を強調する。具体的なイニシアティブは、被害者に影響を及ぼす全ての行政及び司法手続において、法律扶助へのアクセスを含む、移民を対象とする適正な手続きを保証すべきである。通報に関する安全な経路が確保されなければならない。外国人排斥的な犯罪の被害者に対して、複数分野の援助を促進する追加的措置は、次のものを含むべきである。

       (a) メンタルヘルス及び心理学的な支援を提供すること、

       (b) アクセス可能で、子どもに親しみのある、文化的に感受性の高い、及びジェンダーに配慮したメカニズムを確保すること、

       (c) 言語的障壁に対応し、障害のある人の具体的なニーズを考慮に入れること、

       (d) 手続的費用によって被害者が賠償を請求することを抑制しないよう確保すること、

       (e) 十分な資源を配分すること。

26. 口頭の、又は物理的な外国人排斥的憎悪及び暴力を助長する集団はまた、移民の結社、移住の経路において生命を守り、かつ人道的支援を提供する組織を含む、移民の権利の擁護家、及びその他の社会活動家を標的にする。それらの人及び団体を保護し、交差的なアプローチを確保し、かつ女性の人権擁護家の格別の役割を考慮に入れる十分な措置が取られるべきである。

E. 外国人排斥を根絶し、かつ社会的結束を促進する鍵としての教育

27. 教育環境は、偏見及び関連する差別が拡散し、かつ経験される今一つの空間である。しかしながらそれは、これらの問題に対処し、かつ早い年齢から文化間の橋を架けることを目的とした政策を実施するにあたって、特に恵まれた文脈でもある。両委員会は、教育政策におけるこのような措置が、外国人排斥の悪影響に対抗し、その原因を解体し、包摂的社会を構築し、並びにますます多様化する社会において社会的結束及び異文化間統合を促進するために、きわめて重要である16

28. 締約国は、公式及び非公式の学習空間の双方、並びに国家及び地方政府のレベルにおける、あらゆる水準、すなわち初等、中等及び高等教育段階の教育カリキュラムに、権利を基盤とし、かつ全体論的なアプローチを採用して、移住及び文化的多様性を主流化すべきである。文化的及び種族的に感受性の高い教育実践を確保するために、教育専門学位のカリキュラムにおいて、並びに教員、教員養成者、及びその他の教育部門労働者を対象とする継続的な訓練プログラムにおいて、そのような主題及びアプローチを含ませる具体的な措置がとられるべきである。

29. あらゆる水準及び年齢集団向けに、教科書、教育ツール及び活動を開発し、かつ組み込むために、教育、反差別及びその他の関連する分野において、権限のある当局によるイニシアティブが促進されるべきである。これらの素材は、異文化間理解を促進し、並びに、植民地的なステレオタイプを含む、外国人排斥及び人種主義に対処し、かつ防止することを目的とすべきである17。これらの目標を達成するために必要とされる、あらゆる教育上のツール及び活動を効果的に実施するために、十分な資源が配分されるべきである。植民地及び動産としての奴隷制の歴史及び遺産は、外国人排斥及びその有害な影響に対処するための極めて重要な方法として、各締約国における基礎教育のカリキュラムの一部とすべきである。

30. 締約国は、外国人排斥を防止し、並びに社会的結束及び相互理解を促進することを目的として、学校及び非公式の学習センターにおけるコミュニティ全体の関与を育成するイニシアティブを開発すべきである。両委員会は、締約国が、社会の文化的多様性を反映した学校におけるプログラムを促進するための十分な措置をとり、かつ効果的に実施することを勧告する。隔離的な学校制度を防止するために、十分な措置が取られるべきである。このような学校制度は、異文化間統合を妨げ18、並びに社会的紛争、憎悪及び関連する有害な結果を誘発するおそれがある。

31. 教育機関及びその他の権限ある当局は、教育制度に移民の教員及びその他の教育労働者の編入を奨励し、許容し、及び促進する、立法上の改革を含む措置をとるべきである。国籍、人種、エスニシティ、ジェンダー、宗教及び他の事由に基づく差別を含む障壁は、除去されるべきである。

F. 文化政策

32. 移民及びその文化に関する不適切で、誤った、若しくは有害な言説、又は現に存在する民族文化的多様性を無視し、若しくは不可視化する言説は、差別、怨恨、さらには暴力を助長しかねない。それらはまた、移民が自ら居住する地域社会において無視され、及び軽視される事態を引き起こしかねない。権利を基盤とし、ジェンダーに配慮した、そして文化的に感受性の高い文化政策は、外国人排斥を根絶することに、きわめて重要な貢献をなしうる。

33. 締約国は、自ら居住する地域社会への帰属を強化し、かつ強調するために、あらゆる水準において、移民及びそのような者とみなされる他の者が文化的生活の各般に参加することを促進し、かつ容易にする政策を開発すべきである。締約国は、社会の民族文化的多様性の表明としての、劇場、映画館、絵画、音楽、ラジオ、テレビ、デジタル・プラットフォーム及び祭典を含む、文化的生活のあらゆる側面において、移民の平等な参加に対する障壁を除去すべきである。

III. 移住に対する外国人排斥の影響

A. 国から離れる権利及び移動の自由

34. 世界人権宣言第13条第2項、人種差別撤廃条約第5条 (d) (ii) 及び移住労働者等権利条約第8条によれば、何人も、自国を含む、いずれの国からも離れる権利を有する。安全で、秩序ある、正規の移住のためのグローバル・コンパクトにおいて、国家は、脆弱な状況にある移民のニーズに対応するイニシアティブを含む、正規の移住のための経路の利用可能性及び柔軟性を強化するよう誓約した。両委員会は、一方で、人種主義と外国人排斥との連関と、他方で、国から離れる権利の安全かつ正規の享有のための正規の経路を妨げ、又は遮断する制限的な政策との間には、直接的な関係が存在することを認識している。多数の国家において、多様な要因、例えば、労働、家族の再統合、又は保護関連の理由に基づいて、査証及びその他の正規の移住経路を制限する政策は、直接的に、及び間接的に、禁止されている差別の事由から情報を得ている。これらの制限は、人権の剥奪により、やむなく自国から避難する必要のある人々に対して、直接的な影響を有している。

35. 外国人排斥を根絶する包括的な政策は、査証、入国及び居住許可に関する規制に対する徹底的な再検討を含むべきである。国籍、人種、エスニシティ、ジェンダー及びその他の差別事由に基づいて課されている要件及び障壁を除去することは、正規で実効的な、低廉な手数料の、アクセス可能な経路を実際に促進することに向けた重要な措置である。権利を基盤とし、人道的な保護に基づく経路は、このような規制を主流化し、かつ多様化するべきである。家族の再統合の手続きは、アクセス可能で、社会経済的な地位及び労働技能に基づくものを含む、あらゆる形態の差別のないものとすべきである。これらの手続きは、家族生活についての権利、子どもの権利及びその他の関連する権利を保護することを主に目的とするべきである。移住労働者が異なる査証又は居住許可に変更することを可能にすることもまた、差別なく容易なものにすべきである。

36. 過去数十年を通じて、諸政策は、非正規の移住を人の移動の構造的な性格の一つにすることにますます寄与してきた。多くの人々にとって、非正規の移住は、自国から離れる権利、並びに庇護を求め、及び享有する権利を行使するための、唯一ではないにせよ、数少ない現実的な経路の一つとなってきた。両委員会は、非正規の移住の地位は、法に反する傾向のある人というよりはむしろ、権利の剥奪のために、脆弱な状況にある人の明確な指標であるという見解である。

37. 両委員会は、非正規の移住を、犯罪との闘いという観点から対処する言説及び慣行の結果に関する証拠について、警戒している。このような方向性の措置には、国境、国際水域並びに出身国及び通過国の領域を含む移住ルートの軍事化レベルの上昇が含まれる19。その結果には、国家機関及び非国家主体による死亡、強制失踪を含む失踪、誘拐、性的攻撃、殴打、拘禁及び他の多数の虐待事案が移民の中で悲劇的に増加していることが含まれる。したがって、締約国は、移住管理に焦点を当てた制限的及び安全保障化した対応を強化するのではなく、いかなる差別もなく移民の権利を充足する政策を策定すべきである。

38. 両委員会は、非正規移住の非犯罪化の原則を再確認する。移民による非正規の入国、通過、又は滞在は、犯罪と考えてはならない。したがって、非正規移住の犯罪化は、人の移動を規律する国家の正当な利益を常に超過している。このような状況は、もっぱら行政的な逸脱としか考えられない。両委員会は、包括的な権利を基盤とし、人道的な観点から非正規移住に対処する必要性を強調する。締約国は、非正規の入国であるか否かにかかわりなく、庇護を求める権利、並びに入国、居住申請、帰国及びその他の移住手続きの文脈において重要な要素となるその他の人権を保証する措置をとるべきである。

39. 両委員会は、人々が移住の経路において直面している危険の増加に寄与しているか否かを事前評価するために、締約国が政策及び運用上の措置を徹底的に再検討するよう勧告する。これらの事前評価には、正規の経路の欠如と、措置の安全保障化と、非正規かつ安全性を欠く経路の増加及び人間に対するそれらの結果との関連性も含めるべきである20

40. 両委員会は、締約国が、移民の地位にかかわりなく、通過中及び国境にいる移民に対するあらゆる形態の暴力、人種差別及び不当な取扱いを防止するために、並びにこのような行為を実行する国家機関及び非国家主体に関する責任を確保するために必要なあらゆる措置をとるよう勧告する。締約国は、人権上の義務及び海上における捜索及び救助に関する国際条約から生じる義務に沿って、地上及び海上の、安全性を欠く移住経路において、捜索及び救助の業務を整備し、かつ強化すべきである。締約国は、法により及び実行において、そのような活動を実行する人道援助組織及び人権擁護家を支援する措置をとり、それらが提供する支援をいずれかの方法で妨げ又は犯罪化するおそれのある措置をとることを差し控えるべきである21。行政当局、特に治安部隊又は軍隊ではなく、脆弱な状況にある人々を保護することに焦点を置く機関が、通過中の移民に関する政策及び手続きにおいて、主要な役割を有するべきである。加えて、独立した機構は、移民における死亡、強制失踪及びその他の人権侵害事案、又は移動中の重大事案の増加につながる要因を徹底して評価すべきである。責任を認定し、被害者に対して司法及び事後救済へのアクセスを認め、並びに再発防止の保証を確保するために十分な措置がとられるべきである。

41. 外国人排斥はまた、前述した劇的な結果に対処する政策に影響を及ぼす。このような言説はしばしば、これらの悲劇を意に介さず、各被害者のアイデンティティと歴史を無視し、被害者を非人間化し、移民を非難し、並びに非正規かつ安全性を欠く移住の根本原因及び政策を理由とする原因に関する議論を避ける。このような政策は、文化的に感受性の高い被害者の取扱いを確保し、被害者を特定し、それらの家族と連絡し、並びに遺族の哀しみと喪に服する権利22、真実を知る権利、及び司法及び救済を追求する権利の充足を促す措置を欠いている。両委員会は、締約国に対し、強制失踪委員会が移住の文脈における強制失踪に関するその一般的意見1(2023年)において策定したガイドライン23を実施するために必要なあらゆる措置をとるよう奨励する。

42. 両委員会は、人権に影響を及ぼす手続き、行動及び決定に対して、国家機関が実効的な権限を行使するいかなる状況においても、人権上の義務が域外的な性質を有することを想起する。国際人権法によれば、締約国の領域を超える移住管理活動は、当該国家の管轄下にある。ノン・ルフールマン(訳注:迫害、拷問、強制失踪等の不当な取扱いのおそれのある国への送還、追放の禁止)を含む、人権上の義務が完全に尊重されることを確保するための措置がとられなければならない。このような手続きにおける適正な手続きの保障が確保されなければならない。これらの基本的保証を欠き、かつ人権上の義務を満たしていない入国拒否(interception)、帰国の指示(pushback)及びその他の類似の措置のような慣行は、二国間協力に関する実行及び協定に基づいて実施するものを含め、禁止され、かつ根絶されるべきである。

43. 締約国は、犯罪の被害者である通過中の移民を保護するための立法的及びその他の措置をとることが強く求められる。国家間司法メカニズム及び司法及びその他の分野での協力イニシアティブを通じたものを含めて、移民及びそれらの親族が司法へのアクセスを有することを確保することを意図したプログラムが、実行的に実現すべきである。適切な救済へのアクセスを促進する措置が強化されるべきであり、また、そのような措置が欠如している場合には整備されるべきである。

44. 両委員会は、地域内の他の国出身の移民の入国及び滞在の権利を認めることにより、移動の自由を容易にすることを目的とした地域協定の肯定的な成果を指摘する。両委員会は、締約国に対し、これらの慣行を拡張し、かつ強化するよう要請する。地域レベルにおいて、「難民」という用語について、より広い定義を採用することを目的とした立法的及び運用上の措置もまた強化され、かつ拡充されるべきである。これらのグッド・プラクティスは、特に庇護を求める権利、家族生活についての権利及び国際人権法及び人道法に規定されるその他の権利の実効的な享有に関して、他の地域出身の移民に対する差別的取扱いにつながってはならない。

B. 国境及び目的地国での人権

45. 国境は、移民にとって特に危険となりうる。国内法及び行政規則はしばしば、国境を人権上の義務が排除され、又は免除される地帯であると誤って性格づけている。しばしば国家安全保障上の懸念によって拍車をかけられる、有害かつ外国人排斥的な言説は、より一層制限的な国境管理慣行に寄与してきたのであり、それがさらに外国人排斥を強化している。国境管理手続及び決定に関する安全保障アプローチは、人権上の義務を考慮すること、及び国家の行為に関する透明性の基本的基準を充足することを怠る措置につながっている。生命についての権利、並びに強制失踪、拷問及びその他の残虐な又は非人道的な取扱いから保護される権利を含む人権の侵害のリスクは、国境においてさらに増大する。

46. 両委員会は、締約国が、国境における移民政策及び慣行を規制する措置に影響を与える包括的で、かつ権利を基盤とする言説を開発するよう勧告する。両委員会は、締約国が、OHCHRの国際的境界における人権に関する原則及び指針を考慮に入れて、このような政策に対し、すべての国際人権基準を主流化するために必要なあらゆる措置をとることを強く要請する。締約国は、追放及びその他の強制帰国措置の文脈において,司法及び実効的な救済へのアクセスを含む、全ての適正な手続きの保証を効果的に尊重し、かつ充足するべきである。

47. 両委員会によって、及び他の複数の国連人権メカニズムによって示されているように24、集団的な追放及び帰国措置は禁止されなければならない。このような措置は、保護のニーズについて個別的な評価を受ける権利、ノン・ルフールマン原則、庇護を求める権利及び適正な手続きの保証を確保する義務を侵害する。締約国はまた、人種主義的及びジェンダーに基づく暴力を含む、国境手続中の移民に対するいかなる形態の暴力及び不当な取扱いも防止すること、並びにこのような慣行に関して通報されたあらゆる事案を捜査すること、被害者による司法及び救済へのアクセスを容易にすること、及び再発防止のメカニズムを設置することのために、強力な措置をとるべきである。

48. 外国人排斥的な言説と移住政策との相互的な関連性はまた、適正な手続きの保証を含む、極めて重要な人権基準を欠く手続きを通じて、非正規の地位を理由とする移民の追放にも影響を与えている。このような措置は、その性質上、実際には懲罰的なものであり、事案の性質によって、労働、住居、社会保障、報酬、家族生活及び健康についての権利、並びに、とりわけ、親又は主たる養育者から分離されない子どもの権利を含む、特に関係する複数の権利に悪影響を及ぼす潜在能力を有している。

49.  非正規の入国又は滞在に関連するものを含む。非正規な状態について、締約国は、追放とは異なる別途の措置を主としてとるべきである。優先順位は、人権上の義務、人道的考慮及びその他の関係する事由に基づく正規化の経路に与えられるべきである。いずれかの制裁が科せられる場合には、締約国は逸脱行為、その効果、及び制裁との間の均衡性の原則を尊重するべきである。一般的な規則として、追放は、最後の手段とすべきである。そのような状況において、締約国は、行政及び司法当局が人権に関する義務、及びそれらの法的義務について十分認識するよう確保することを目的とするガイドライン、訓練及び関係する政策を強化すべきである。

50. 国境におけるデジタル技術の使用は、現存する人権上の懸念をしばしば増大させ、新たな形で出現することを可能にする。このような効果は、国境管理が保護に注目した目的よりも、安全保障に注目した目的の達成を追求する外国人排斥及び人種主義に影響を受けている場合、特に激しくなる。外国人排斥と偏向した政策との内在的な関係性は、安全保障化及び場合によっては軍事化、並びにその有害な結果が増大している文脈において、国境及びそれ以外の場面における移住管理の目的のために行われるデジタル技術の開発及び使用に対し、影響を及ぼしている。国境におけるデジタル技術の差別的な使用は、人種化された集団の構成員、正規の移民の地位を有している者に対しても、特に有害である。

51. 締約国は、法執行官による人種的プロファイリングの防止及びこれとの闘いに関する一般的勧告36(2020年)において、人種差別撤廃委員会が策定したすべての基準を、外国人排斥に反対する政策に主流化する措置をとるべきである。国境管理の分野及び移住に関連するその他の事項において、締約国は、人口知能システム及びデジタル技術の設計、実装及び使用が、これらの基準を遵守することを確保する、立法措置を含む、必要なあらゆる措置をとるべきである。特に、締約国は、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくものを含む、差別又はプロファイリングから人々を保護しなければならない25。締約国はまた、データの最小化原則及び利用目的制限の原則を遵守するよう奨励される。これには、データの再利用に関するいずれかの分野を再検討すること、及び大規模又は相互運用可能なデータベースを当該諸原則に適合させることが含まれる。国境管理執行機関と、権利及びサービス提供に責任を負うものを含むその他の国家機関との間に、明確なファイアウォールを実装するよう確保するための措置がとられるべきである26

52. 両委員会は、締約国が、法により及び実行において、すべての国境デジタル技術の開発及び実装が、強力な人権の保護に従うことを確保するために必要なあらゆる措置をとることを勧告する。締約国は、新たな技術を実装する前に、交差的なアプローチをとるべきであり、並びに適正な手続きの保証、実効的な救済、ファイアウォール、透明性及び説明責任メカニズム、並びに人権に対する影響の独立した事前評価を確保すべきである。締約国はまた、明示的な権利を基盤とする規定を組み込んだ法的及び政策上の枠組みのもとで、デジタル技術の使用が十分に規制されるよう確保するべきである。締約国は、リスク・プロファイルを作成すること、並びに移住及び庇護手続に関する意思決定を自動化することにより、アルゴリズム上の人種的偏見を再現する人口知能を含む、人権に対して激しい危害を引き起こしかねないデジタル技術の国境での使用を差し控えるべきである。

53. 外国人排斥及び構造的人種主義、並びにそれらを支える有害な言説は、国境を超えて国境管理措置を拡張することに向けられる政策に、根深くかつ憂慮すべき影響力を有している。このような慣行は、社会的サービス、職場、公共輸送及び道路、並びに宿泊施設などの、国の領域内における、多様な分野の文脈において、移民の居住上の地位を管理しようとするものである。ある国において、権限ある当局及び民間事業者は、ある個人、例えば顧客、労働者又はサービス利用者が、最も重大な犯罪の場合においてすら、法に違反したか否かを監視することについて、権限を付与されておらず、また求められてもいない。しかしながら、入国関連の違反行為は、広範囲にわたる場所、施設、及び状況において検査され、かつ通報されている。両委員会は、このような措置が、非正規の移民の地位に関して安全保障化しかつ外国人排斥的な言説によって影響を受けた、差別的かつ均衡を失した慣行であるという見解である。これらは、移民に関する誤った認識を強化し、かつ国際人権上の義務に反する政策につながっている。

54. 締約国は、データを収集する際にジェンダーと子どもに配慮し、かつ人権を基盤とするアプローチを適用すべきであり、並びに、個人データが移住管理目的で、又は公的若しくは私的サービスにおける差別目的で使用されないよう確保するために、適切なファイアウォールを整備することなどにより、プライバシー、個人情報及びデータ保護についての移住労働者及びその家族の構成員の権利が保護されるよう確保すべきである。締約国は、移住に関する法執行機関とは異なる、サービス提供者及びその他の当局を、移住管理政策の補助機関として使用することを差し控えるべきである。同様に、締約国は、労働監督サービスの主要な責務は、労働法及び規則を監視し、特に労働者の権利を保護することであるということを、確保しなければならない。

C. 庇護を求める権利

55. 非正規の移住に関する外国人排斥的及び犯罪化する言説は。安全保障化した移住政策と相互に補完して、国境管理について域外的な戦略をもたらしてきた。両委員会は、移住管理政策の外部化は、本質的に、庇護についての人権、並びに、補完的に、事案の性質によって特に関係するであろう適正な手続きの保証及びその他の人権の享有を妨げる慣行であるという見解である27。このような外部化の慣行は、移民が庇護又は他の補完的な形態の保護を効果的に申請する機会をさらに制限している。

56. 締約国は、国際水域及び出身国又は通過国におけるものを含む、国際的地帯及び国境を超えてとられる移住管理のための措置が、難民の地位に関する条約又は国際人権諸条約に基づく義務をいずれかの側面において削減することのないよう確保すべきである。締約国は、人権法及び人道法に基づく義務を外部委託し、又は外部化することによるものを含む、これらの法的義務を回避し又は限定することを目的とする二国間又は多数国間協定を推進し、又は採択することを差し控えるべきである28

57. 両委員会はまた、外国人排斥及び反移民的言説が、申請の自動処理におけるアルゴリズム上のバイアスを含む庇護申請手続及び決定に対して、並びに安全な第三国リストの指定に対して及ぼす悪影響について懸念している。庇護認定当局による、人権に基づかない制限的基準の採用、及び政治的利害及び誤認識に基づく広範な裁量的決定を含む、庇護申請の個別的審査の欠如は、庇護及び補完的形態の国際的保護を求めかつ享有する権利に対して恣意的に悪影響を及ぼしている。

58. 締約国は、庇護申請手続及び決定に交差的な視点を組み込む、権利を基盤としたアプローチの採用を強化するために適切なあらゆる措置をとるべきである。立法的及び運用上の措置は、必要な場合は無料の、法律扶助及び通訳へのアクセス、公正な行政的意思決定並びに実効的救済などの、すべての適正な手続きの保証を確保すべきである。締約国は、政治的利害、例えば申請者の出身国との二国間関係に基づくものなどによる、庇護についての権利を制限すること、及び他のいかなる差別的な慣行も、差し控えるべきである。庇護申請手続き及び決定における人種的プロファイリング並びにいずれかの形態の直接的及び間接的差別を防止するための措置がとられるべきである29

D. 収容政策

59. 両委員会は、過去数十年にわたり、外国人排斥と、移住関連の収容政策を正当化することを目的とする言説との相互関係が強まってきたことを強調する。その創設以来、国際人権法は漸進的に、自由の剥奪について、行政上の理由を使用することを制限すること、及び手続きが進行中の予防措置として、刑事制度における拘禁の使用を減少させることに寄与してきた。しかしながら、移民の地位に関連する要因に基づく収容の使用は、増加してきた。

60. 締約国は、移住労働者権利委員会の一般的意見4/子どもの権利委員会の一般的意見23(2017年)の合同一般的意見30に沿って、養育者のいない未成年者及び家族を含む、移住関連の子どもの収容を即時に禁止し、かつ運用を中止すべきである。一般的意見5(2021年)における移住労働者権利委員会による権威ある指針を考慮に入れて、妊娠中の女性、庇護申請者、障害のある人及び人身売買の被害者を含む、脆弱な状況にあるその他の者の収容を中止する同様の措置がとられるべきである。

61. 安全保障に焦点を置いた収容政策の実施及び移住管理を目的として人々を収容する施設の創設は、移民、特に非正規の移民の地位を有する者を、公の秩序及び安全保障上の脅威と不公正に関連付ける社会的言説を助長する31。両委員会は、移住関連の問題について収容を使用することに懸念している。このような収容は、自由及び恣意的拘禁からの保護についての人権に関して、差別的な取扱いとなる。各個人はその行政上の地位を理由に単独で収容されているけれども、その収容環境は通常、刑事司法制度において刑務所に収監されている場合とほぼ同一であり、非人道的な取扱いに匹敵するであろう。このような環境には、刑務所と類似する施設に監禁されていること、並びに厳格な日課、独房及び懲罰房の使用、家族との面会の制限、電話及びインターネットへのアクセスの制限、高度の不透明性、並びに市民社会組織、国内人権機関及び平等機関へのアクセスの制限に服していることが含まれる。

62. 両委員会は、入管収容が常に、行政手続進行中の暫定的な措置としても、又は行政上の非正規性若しくは違反行為に対する対応としても、有害かつ均衡を失していることを想起する。両委員会は、締約国が遅滞なく、移住関連の収容政策及び慣行を漸進的に廃止するために適切なあらゆる措置をとることを勧告する。その時まで、両委員会は、締約国に対し、法により及び実行において、移住目的の収容は、最終手段としてのみ使用され、かつ例外的な措置であり、可能な限り短期間で適用されるよう確保することを強く求める32。収容の決定は、なぜ他の措置が適用されえないかを示す実質的な審査を伴わなければならない。法は、必要とされる場合には、優先事項として、身柄の拘束を伴わない措置を使用するよう、権限のある当局に義務付けるべきである。移民の地位を理由とするいずれかの自由の制限又は剥奪は、あらゆる適正な手続きの保証を確保する手続きにおいて実施されなければならない。このような事案において、権限のある当局は、いずれかの移民の自由の制限について、強固で個別化された正当化理由を示さなければならない。

63. 締約国は、移住関連の収容に関する措置及び慣行が、犯罪事案に対処するための政策で用いられるものとは異なることを確保すべきである。締約国は、移住関連の収容のための施設及びすべての環境が刑事司法制度のそれとはまったく異なることを保証する十分な措置をとるべきである。したがって、次のような立法的及び運用上の措置がとられるべきである。

       (a) このような施設を運営するために、法執行当局を用いることを差し控えること、

       (b) 行刑制度におけるものに類似した日課規則及び活動を控えること、

       (c) 透明性及び説明責任メカニズムを改善すること、

       (d) 情報、インターネット、内線並びに家族及び弁護士の面会へのアクセスを保証すること、

       (e) 言語上の障壁を除去し、かつ文化間メディエーターを雇用すること。

64. 締約国は、収容施設において移民に対して行われる外国人排斥的及び人種主義的暴力並びにその他の虐待事案について、独立した監視及びフォローアップを含む秘密厳守の実効的な苦情申立メカニズムを実施すべきである。市民社会組織、国内人権機関、平等機関及びその他の独立した監視機関が強化されるべきである。このような事案に関するデータを収集する政策が整備されるべきである。外国人排斥及び人種主義の事案を防止し、並びに収容に関連する安全保障化した態度を根絶することを目的として、移住関連の収容施設で勤務する所員を対象として、継続的な、権利を基盤とする訓練プログラムを確保するための措置がとられるべきである。

E. 人種的プロファイリングと移民立法執行に関する政策

65. 政策に対する外国人排斥の影響は、法執行当局による人種的プロファイリングの慣行にも現れている33。この点に関し、両委員会は、締約国が人種差別撤廃委員会によりその一般的勧告36(2020年)で発出された権威あるガイドラインを実効的に実施するための適切なあらゆる措置をとるよう要請する。両委員会は、無差別の原則に従って、人種的プロファイリングの影響、特に移民に対するものに対処するために交差的なアプローチを採用することの重要性を強調する。

66. 移住に関して安全保障化した言説は、移民、特に非正規の状況にある者に対する国境管理官及びその他の治安部隊による虐待事案を助長してきた34。これらの慣行には、女性及び子どもに対するものを含む、恣意的な身柄の拘束及び捜索、不当な取扱い並びに過剰な実力行使が含まれる。非正規の状況にあると思われる移民に対する移住手続中、警察による強制捜査及びその他の犯罪取締行為における実力行使は、移民と犯罪との誤った結び付きを強化する。特定の国籍、エスニシティ、及び皮膚の色の移民は、現に存在する構造的形態の人種主義により、これらの恣意的な慣行の標的にされており、このことが,移民とみなされている人種化された集団にも悪影響を及ぼしている35

67. 締約国は、独立の監視、苦情申立メカニズム及び外国人排斥的な態度を示した事案における懲戒処分を含む、国境管理官及び全ての法執行官に対する効果的な説明責任メカニズムを実施する政策を強化すべきである36。このような虐待を防止するために、権限のある当局を対象とする継続的訓練を強化する措置がとられるべきである。

F. 正規化

68. 移民一般及び、特に非正規の状況にある者に関する安全保障化した言説は、正規化に対処する政策及び議論に悪影響を及ぼしてきた。正規化プログラムは、犯罪又は関連する有害な行為を赦免することを目的とする恩赦に類似した措置として描かれてきた。このアプローチは、犯罪化及びスティグマ化する言説を増加させ、正規化を促進する政治的意思の欠如も含め、循環的に非正規移民に関する政策を強化している。締約国は、犯罪行為を赦免する手段として正規化プログラムを提示することを差し控えるべきである。

69. 両委員会は、正規化が、移民及びその家族の非正規で、不安定かつ脆弱な状況に対処するための極めて重要な手段であることを強調する。正規化は、人間開発、社会経済的包摂、公式の雇用、並びに搾取、ジェンダーに基づく暴力、周縁化、児童労働及びその他のリスクの防止を含む、複数の分野における政策目標を達成するための鍵となる手段である。移民による正規滞在へのアクセスを促進することは、脆弱な状況に置かれている人を保護し、その結果、それらの基本的権利を充足し、かつ社会的包摂を促進するための極めて重要な措置である。反対に、正規化へのアクセス可能かつ恒久的な経路の欠如は、不平等、社会的排除及び複合的な形態の差別、虐待並びにその他の否定的な結果の深刻化を助長する。

70. 締約国は、正規化が移民、その家族、社会及び国家それ自体について、複数の肯定的な結果をもたらす方法であるというメッセージを発信することを含め、正規化に関する人権を基盤とするアプローチ及び包括的な言説を採用するべきである。両委員会は、締約国が、法により及び実行において、短期滞在制度、より重要であるのは、恒久的滞在の経路を含む、アクセス可能かつ低廉な手数料の正規化メカニズムを確保することを目的とする措置をとり、かつ強化することを勧告する。

IV. 経済的、社会的及び文化的権利の享有に対する外国人排斥の影響

71. (外国人排斥的な)言説は、国民が人権の特権的な保護を享有すべきであるという誤った提案を行い、又は国民でないこと、移住又は居住の地位を根拠として、基礎的サービスへのアクセスに対する制限を正当化しようと試みてきた。これらの言説は、移民による経済的、社会的及び文化的権利の享有に、否定的な影響を有している。両委員会は、これらの慣行が、移民及びそのような者とみなされる他の者の人権及び生活条件に悪影響を及ぼすのみならず、社会的排除、不平等及びその他の否定的な結果の悪化をもたらしもすることを強調する。両委員会は、締約国に対し、経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会(以下、社会権規約委員会という)が移民に関して開発した諸基準37を想起する。

A. 教育についての権利

72. 移民を社会的サービスの乱用者であると表象するもの、又はそれらを犯罪及び安全保障上の脅威に結び付けるものを含む、移住に関する外国人排斥的な言説は、教育についての子どもの権利に対し、いくつかの有害な影響を有している。これらの言説は、特定の、若しくは全ての水準の教育へのアクセスから排除するか、又は制限を課し、かつその他の差別的な慣行をもたらす38。このような慣行はまた、学位の取得に対する障壁、海外の教育資格の承認拒否、奨学制度からの排除、又は高等教育機関において政治的若しくは社会的活動に参加したことを理由とする退去強制が含まれるであろう。当局、メディア及びその他の行為者による偏見に満ちた移民の表象は、移民の子ども及び、移民の親又は移民の背景を有する家族、特に人種化された集団出身の人々の下に出生した子どもに対する外国人排斥的ないじめの事案を助長する。このような慣行はとりわけ、教育、メンタルヘルス及び発達についての子どもの権利を侵害し、かつ暴力の状況を生じる結果となりかねず、また、長期的には、目的地国における社会対立及び社会的不平等の発生につながるおそれがある。

73. 締約国は、法によりかつ実行において、子どもの移民の地位又は親のそれに関わりなく、国民である子どもとの平等を基礎として、全ての移民の子どもに対し教育についての権利を実効的に保証するための政策及びプログラムが整備されるよう確保すべきである。移民の地位に関わりなく、居住要件などの入学上の障壁は撤廃されるべきであり、教育上の要件の充足に基づいて学位が授与されるべきであり、かつ奨学金又はその他の支援措置について、平等なアクセスが提供されるべきである。包括的な、異文化間及び権利を基盤とする支援サービスは、養育者から分離された移民の子どもの場合は特に、移民の子どもの学校への統合を容易にすることを目的とすべきである。このようなイニシアティブは、言語に関するイマージョン(没入法)プログラム及び文化メディエーターの訓練を含むべきである。

74. 十分な資源並びに適切な訓練を受けた教員及びその他の専門家を配置して、学校における外国人排斥的な言動及びいじめを防止し及びそれらに対処し、交差的なアプローチを組み込むことを目的とした具体的なプログラムが整備されるべきである。異文化間メディエーション、並びに外国人排斥的、人種主義的及び関連する事案の被害者である子どもに対する専門的な社会心理学的支援に関する、子どもにやさしいメカニズムもまた、利用できるようにすべきである。

B. 労働権

75. 移住に関する言説は労働市場及び雇用に関する政策に影響を及ぼし、労働についての移民の権利に対する制限及び、搾取を含む、不平等で安全性を欠く労働条件をもたらす。潜在的に差別的な慣行には、移民に対して労働を禁止すること又は移民若しくは庇護の地位を理由とする労働についての権利を制限すること、労働の機会を理由として居住許可に対するアクセスを妨げること、又は正規の移民の地位を有する移住労働者を労働市場における特定の部門で雇い入れることが含まれる。このような措置は失業中の移民、及び非公式な、安全性を欠く、又は保護を与えられない労働活動に従事する移民の過剰な割合をもたらし、並びに社会的及び労働上の包摂を妨げる。

76. このような言説はまた、移住労働者、特に非正規の移民の地位を有する者が直面するであろう、労働搾取、児童労働、ジェンダーに基づく暴力及びハラスメント、並びに職場におけるその他の虐待又は搾取などの、脆弱な状況とも結びついている39。特定の業種の移住労働者は、特に外国人排斥及びその他の形態の差別による影響を受けており、そのような移住労働者には、家内介護、郊外での労働、採掘業、農業、建設業、繊維産業、配達業、宿泊業、飲食業、及びデジタル・ギグ・エコノミー(訳注:オンラインを通じて労力提供を募集するシステムを運営する産業)の分野で労働する者が含まれる。特に有害な影響を受けているのは移民の女性、とりわけ最も貧困かつ最も周縁化されている者であり、均衡を失した割合で低賃金かつ保護を欠いた仕事に集中している。移民は、出身国で取得した教育上の学位及び労働技能資格の承認を受ける際に、様々な障害に直面している。移民に対して労働組合についての権利の享有を妨げる障壁及び差別的な規制は、多数の国において幅広く見受けられる。

77. 締約国は、すべての業種及び技能水準において、労働許可及びディーセント・ワークへの平等な機会を促進するために必要なあらゆる措置をとるべきであり、並びに国民でない者の雇用へのアクセスを不合理に否定する差別的な法規定を廃止するべきである。締約国は、労働組合についての移住労働者の権利を尊重すべきであり、並びに外国人排斥及び交差的な形態の差別に関する訓練及び意識向上のための労働組合によるイニシアティブを支援すべきである。締約国は、居住又は庇護の申請についての決定を待っている間、移民が労働することを認める措置をとるべきである。加えて、締約国は、雇用主が身分証明書及び旅券を没収することを禁止するべきであり、かつ当該禁止に違反した雇用主が適切に制裁を受けることを確保すべきである40

78. 構造的、組織的、及び個人レベルでの、雇用における人種差別に対処するための具体的な措置がとられるべきである。民間部門事業者、つまり、雇用主及び職業紹介事業者を対象とする規範的ガイドラインが採択されるべきである41。このようなイニシアティブは、情報提供及び意識向上キャンペーン、並びに労働監督官、労働司法制度及びその他の権限のある当局、及び民間部門を対象とした研修プログラムを通じたものを含む、外国人排斥を防止することを目的とすべきである。両委員会は、締約国がそのような措置において、ILOの「公正な雇入れ並びに職業紹介手数料及びその他の費用の定義に関する一般原則及び運用ガイドライン」を考慮に入れるべきである42。締約国はまた、家事労働部門に関するものを含む、労働監督政策を強化すべきである。

79. 締約国は、職場における外国人排斥及びいずれかの種類の差別に関する、アクセス可能で、低廉な手数料で利用できる紛争解決及び苦情申立メカニズムを確保すべきである。締約国は、司法へのアクセスに対する物理的、言語的、及びジェンダーに基づく障壁を除去する措置をとるべきである。移住労働者は、自らの事件に関する最終決定に達するまでの間、当該国に滞在する十分な時間を与えられるべきである。移住労働者が国を退去するよう強制される場合、その出身国からの異議申立を提出することを許容する措置がとられるべきであり、実効的な国際的な司法メカニズムを通じた司法及び救済へのアクセスを確保するべきである。

80. 両委員会は、締約国が1949年の移民労働者条約(改正)(第97号)、1975年の移民労働者(補足規定)条約(第143号)及び2011年の家事労働者条約(第189号)を含む、移住労働者に関するすべてのILO条約を批准し、又は履行するよう奨励する。当該規定の解釈が、その移民の地位に関わりなく、すべての移住労働者を保護するよう確保すべきである。締約国はまた、特に移民女性の労働搾取に対処することに関して、女性差別撤廃委員会が、女性移住労働者に関する一般的勧告26(2008年)及び国際移住の文脈における女性及び女児の人身取引に関する一般的勧告38(2020年)において策定した権威あるガイドラインを実施するために適切なあらゆる措置をとるべきである。

C. 健康についての権利

81. 移民に関する直接的及び間接的な外国人排斥的な言説は、保健医療政策及び保健サービスに対するアクセスについての移民の権利について、複数の結果をもたらしている。国籍、居住又は移民の地位に基づくこの権利を制限する差別的な政策及び慣行の採用は、より一層広範な結果の一つである43。両委員会は、国際人権上の義務及び基準に合致しないその他の慣行について懸念しており、次のような慣行は、健康についての移民の権利を侵害しており、公的保健医療政策の重要な目的を損なっている。

       (a) 非正規の状況にある移民が、緊急医療サービスについてのみアクセスを有するという規制

       (b) 社会の他の構成員には無料である医療サービスについて、移民は費用負担するよう要求すること、

       (c) 特定の保健サービスへのアクセスについて資格を取得するために、正規居住について最低年数を要件とすること。

82. 両委員会は、締約国が、保健医療についての権利との関連で、あらゆる差別的な規制及び慣行を除去するために適切なあらゆる措置をとるよう勧告する。移民の地位に関わりなく、移民は、国民との平等を基礎として、性及び生殖に関する健康サービスを含むすべての保健サービスに対して、アクセスを有するようにすべきである44

83. 保健医療の専門家、行政スタッフ及びその他の保健労働者の一部から発せられる外国人排斥的な態度が保健医療施設において観察されており、これらは、移民及びその家族のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすおそれがある45。両委員会は、締約国が、外国人排斥及び差別を防止することを目的として、保健医療部門におけるすべての労働者を対象とするガイドラインを採択し、かつ継続的な訓練イニシアティブを運用するよう勧告する。両委員会は、健康についての権利の享有における平等及び人種差別からの自由に関する一般的勧告37(2024年)において、人種差別撤廃委員会が策定したガイダンスに対する補完的アプローチとして、これらのガイドラインが実施されるべきであることを強調する。

D. 社会保障についての権利

84. 社会保障政策及び社会保障サービスへのアクセスの分野において、国民を主たる権利保持者として優先し、移民を平等な取扱いに値しない者と描写する言説が、特に蔓延している。非拠出型の所得補助制度を含む、脆弱な状況にある人々を対象とする社会的援護制度は、国籍、移民の地位、又は居住の形態若しくは期間に基づいて、移民を排除する傾向がある。これらの差別的な制限は、移民及びその家族に悪影響を及ぼすのみならず、貧困、社会的排除及び不平等を削減し、並びに関連するその他の問題に対処することを目的とする政策目標の達成をも妨げる。

85. 両委員会は、締約国が、社会保障及び社会的援護プログラムへのアクセスに関して、国籍、移民の地位、又は居住状況を理由として差別することを差し控えるよう勧告する。逆に、包摂的な社会的援護政策の肯定的な効果を強調することを目的とした、包括的かつ権利を基盤とするコミュニケーションの措置がとられるべきである。締約国は、国籍、移民の地位又は居住状況を理由とする、社会保障及び社会的援護プログラムへのアクセスに関する差別的な規制を除去するために、法的な改革に取り組むべきである46。非拠出型の社会保障制度へのアクセスにおいて、移民が平等な取扱いを享有するよう確保することを目的とした措置がとられるべきである47

86. 移住労働者は、特に目的地国を出国したのちに、拠出型の制度に関連する社会保障給付の享有に対して、立法及びその他の措置の欠如を含むいくつかの障害に直面している。締約国は、出身国に帰国後の社会保険給付についての権利のポータビリティを確保することによるものを含む、移住労働者が社会保障給付を享有しうることを確保するための、二国間及び多数国間協定を推進すべきである。これらの協定を実行的に履行するための運用上の措置が整備されるべきである。

E. 住居についての権利と居住上の隔離に対処する政策

87. 外国人排斥は、住宅に関する政策及び規制に影響を及ぼしており、家主側の差別的な態度を生み出し、移民による負担可能かつ十分な住宅についての人権への効果的なアクセスに対する制限及び障害につながっている。移民及びその家族は、社会のその他の者によって享有されているものと平等とはいえない、劣悪な環境で生活する結果となっている。

88. 締約国は、移民によるいかなる差別もない十分な住宅へのアクセスを妨げるおそれのある法的及びその他の制限を除去する措置をとるべきである。移民が国民と平等な条件で借主となる可能性を妨げるおそれのある、家主及びその他の民間事業者による外国人排斥的、人種主義的又はその他の差別的な慣行を防止することを目的とする、具体的な規定が設けられるべきである48

89. 文化的に多様な社会における住宅及び居住環境政策は、居住上の隔離を防止し、かつ対処するよう設計された、包括的、多文化的及び権利を基盤とするプログラムを含めなければならない。両委員会は、地方政府がこの点に関して果たすべき鍵となる役割を強調する。

90. 両委員会は、労働目的の移住に関するプログラム内のものを含む、国家及び職業紹介事業者による住宅に関する取り決めが、ジェンダー及び国籍による分離を含む、移民の隔離につながっていることを懸念する。締約国は、十分で、適切な、かつ負担可能な住宅へのアクセスについての移住労働者の権利に関して、いかなる形態の差別も防止するために、労働目的の移住に関する合意を徹底的に検討すべきである49

F. 人道支援

91. 外国人排斥は、特に大規模な移動の文脈で、人道支援を提供すること、並びに脆弱な状態にある移民の受入れ及びこれらの人々への支援の提供に取り組む際の人道的な言説を策定することに対する障害として認識されている。

92. 締約国は、必要な場合には国際協力により、特に大規模な移動の際に、脆弱な状態で到着した移民に対し、人道支援を提供するプログラムを適時に実施するよう確保するべきである。そのような複雑な文脈で構築され、かつ拡散される言説に、特別の注意が払われなければならない。人道的なアプローチから、永続的な解決を促進することを意図した人間開発的及び権利を基盤とする観点に移行するために、社会のすべての構成員を対象とする社会的援護及びその他の社会政策に、移民を漸進的に包摂することを確保する措置がとられるべきである。

93. 両委員会は、国籍、エスニシティ及び関連する要因に基づいて、締約国によって採用されるアプローチが異なっていることを懸念している。特定の国家から避難する移民には自動的に保護の地位、並びに人道支援及び権利の享有へのアクセスが付与されるけれども、その他の国から移動したが、同様の状況で避難してきた者については、移住管理に焦点を当てる安全保障化した対応に直面している。締約国は、国際的保護及び人道支援を求める移民に対する、このような二通りの差別的な対応を差し控えるべきである。

G. 持続可能な開発目標の達成

94. 両委員会は、外国人排斥及び交差的形態の差別を根絶することが、持続可能な開発目標の実効的な達成のための前提条件であることを正しいと認める。締約国は、持続可能な開発のための2030アジェンダに含まれている目標を達成することを目的とするすべての公共政策及び行動計画に、外国人排斥に反対する政策を主流化するために必要なあらゆる措置をとるべきである。持続可能な開発目標に関する国際的及び地域的プロセスにおける、グッド・プラクティスに関する国家の報告は、外国人排斥及び関連する差別の防止に関する情報を含めるべきである。この情報は、移住に関するグローバル・コンパクト及び難民に関するグローバル・コンパクトなど、その他の国家主導のイニシアティブの文脈において提出される報告書にも組み込まれるべきである。

V. 政治的権利、参加及び統合

95. 外国人排斥及び人種主義は、政治的レベルにおける場合を含む、移民及びそのような者とみなされる他の者の生活のあらゆる側面に対する否定的な影響を有する。それらの人々の完全な社会への包摂を促進することは、政治的権利の享有、および政治への様々な形態の参加を容易にする措置を含めるべきである。これらの移民の権利を承認することは、統合及び社会的結束を促進するためのツールである。

96. 移民に対する外国人排斥的な言説の拡散を容易にし、又はそれらに対処する政治的意思を阻害しうるいくつかの要因のひとつは、多数に国家において、移民が投票し若しくは選挙されることを授権されておらず、又は制限的な形でのみ、これらの行為を行うことができる、という事実である。両委員会は、すべての締約国が、居住期間に基づき、漸進的に、移民がこれらの諸権利を地方及び国政選挙において行使することを可能にする措置をとるべきである。投票が義務的とされている国家において、資格のある移民を選挙民登録に編入するための具体的な措置がとられるべきである。投票が任意である場合には、移民の投票者登録及び参加を容易にし、かつ奨励する措置がとられるべきである。

97. 締約国は、移住及び関連する分野に限定することなく、公共政策の策定、実施及び評価に関する協議プロセスにおいて、移民団体の参加を確保することを目的とするイニシアティブを促進するべきである。地方の政策は、地域社会の他の者と並んで、社会的、経済的、政治的、文化的及びその他のイニシアティブにおける移民の参加を促進するにあたり、中心的な役割を果たすことができる。

98. 締約国は、法により及び実行において,国民でない者による表現、集会及び結社の自由についての権利の実効的な行使を保証するために必要な措置をとるべきである50。そのような保護は、雇用条件、又は差別的及び人種主義的行為に関するもののような、それらの権利を防御する社会的な抗議活動及びその他の民主的活動への参加も対象とすべきである。締約国は、移住に関する法の執行の使用を通じたものを含む、かかる活動を禁止し、又は迫害することを差し控えるべきである。

99. 両委員会は、移民に対する外国人排斥的及び人種主義的取扱いの強化、及び選挙機関中に、候補者、メディア関係者及びその他の社会的及び政治的集団によって行われる移住関連の問題について、特に懸念している51。これらの慣行には、ヘイトスピーチ、憎悪の扇動、責任を押し付ける言説、及び、移民による人権の享有を制限することを目的とする政治的提案又は公約が含まれる。

100. 締約国は、選挙プロセスの時前、最中、及び時後の外国人排斥的及び関連する言動を防止するための具体的な措置を実施すべきである。外国人排斥及び人種主義の防止に責任を有する当局、選挙を管理する責務を負う機関、及び国内並びに地方人権機関は、このようなイニシアティブにおいて極めて重要かつ監視する役割を果たすべきである。メディア機関が虚偽の言説を防止すること、及び人種主義的信念を支持し又は助長する候補者による広告、演説、討論又はその他の素材を掲載することを拒否することを奨励するための措置がとられるべきである。このようなコンテンツが公表される場合には、メディア関係者は、そのような提案又は言説の否定的な結果を強調するよう強く求められるべきである。

101. 両委員会は、締約国が、政党、当局及び候補者に向けて、次のような措置をとることを勧告する。

       (a) 政治的及び選挙上の利益を得るために、移住、庇護及び関連する問題を道具化することを終結させるよう公式に誓約すること52

       (b) 選挙運動において、外国人排斥的な言説を明確に非難すること53

       (c) 政治家及びメディアの専門家を含む公的な著名人による外国人排斥的及び人種主義的なヘイトスピーチ及び差別的言動と断固として闘うこと54、公的当局はまた、人種差別を引き起こす政治的論議から距離を置く措置をとること、並びに政治家によるこのような表現が徹底的に捜査され、及び適切に制裁されるよう確保すること55

VI. 国際協力

102. 両委員会は、すべての締約国が、外国人排斥及びその人権に対する有害な影響と闘い、かつこれらを根絶するための国際的、地域的及び二国間協定及びその他のイニシアティブを促進し、かつ履行することを勧告する。締約国は、移住に対する、偏狭で、偏見に満ち、かつ安全保障化したアプローチを深化させることを助長しかねない二国間協定という手段をとることを差し控えるべきである。むしろ、締約国は、移住に関するグローバル・コンパクトにおいて、及び人種化された移民にとってアクセス可能であることを確保するための一般的意見6(2024年)において移住労働者権利委員会によって要請されているように、正規の移住のために利用可能な経路を拡大し、かつ多様化させる協定を交渉すべきである。

103. 締約国は、目的地国における外国人排斥を防止し、かつ根絶する努力において、外交機関及び領事機関の役割を強化すべきである。外国人排斥の被害者に関するデータの収集、及び通過国及び目的地国と協力的に連携することなどのイニシアティブは、虐待を特定すること、並びに権利を基盤とし、及びジェンダーに配慮した解決を推進することに貢献しうるであろう。

VII. フォローアップ

104. 両委員会は、締約国がすべての人権条約機関に対するその定期的な報告書において、外国人排斥と闘い、かつそれを根絶するための政策の策定及び効果的実施に関する関連情報を含めるよう勧告する。締約国は、検討のために両委員会に提出する報告書の準備、及び両委員会に対する説明に対して、特に部門横断的な代表者を関与させることにより、包括的なアプローチを確保するよう奨励される。

105. 1965年12月21日の人種差別撤廃条約の採択、及び1990年12月18日の移住労働者等権利条約の採択を通じて加盟国が行った普遍的な誓約に従って、両委員会は、いまだに両条約を批准していないすべての国家が、両条約を批准するよう強く要請する。


[1] 本合同一般的勧告/一般的意見の目的のために、「そのような者とみなされる他の者」という用語は、不平等かつ差別的な取扱いをもたらす、人種差別、又は外国人排斥の文脈における交差的な形態の差別の影響を受けるすべての者を含んでいる。人種差別撤廃委員会の一般的勧告38(2025年)/移住労働者権利委員会の一般的勧告7(2025年)の合同一般的意見、para.12も見よ。

[2] 国際連合人権行動弁務官事務所(以下、OHCHRという)、“Seven key elements on building human rights-based narratives on migrants and migration”, June 2024, p. 4.

[3] CERD/C/MAR/CO/19-21, paras. 29 and 30, CERD/C/USA/CO/10-12, paras. 51 and 52, 及び移住労働者権利委員会、一般的意見5(2021年)、para. 36. 次の文書も見よ。移住労働者権利委員会、一般的意見2(2013年)、及び合同一般的意見、移住労働者権利委員会の一般的意見4/子どもの権利委員会の一般的意見23(2017年)。

[4] 移住労働者権利委員会、一般的意見2(2013年)、para. 2, CERD/C/KOR/CO/17-19, paras. 7 and 8, 及びA/HRC/23/46/Add.4, para. 72.

[5] 次の文書を見よ。OHCHR, “Seven key elements”.

[6] CERD/C/CHL/CO/22-23, paras. 18 and 19.

[7] 人種差別撤廃委員会、一般的勧告35(2013年)、para. 39.

[8] CERD/C/AUS/CO/18-20, paras. 13 and 14.

[9] 人種差別撤廃委員会、一般的勧告35(2013年)、para. 39.

[10] IOM, “Media coverage on migration: a practical guide for journalists”, May 2018.

[11] ILO, “Reporting on forced labour and fair recruitment: an ILO toolkit for journalists” (2020), 次のURLで入手可能である。https://www.fairrecruitmenthub.org/resources/reporting-forced-labour-and-fair-recruitment-ilo-toolkit-journalists.

[12] CERD/C/KOR/CO/17-19, paras. 7 and 8, and CERD/C/LTU/CO/9-10, paras. 11 and 12.

[13] 一般的勧告35(2013年)、para. 42.

[14] CERD/C/MAR/CO/19-21, paras. 17 and 18.

[15] CERD/C/BEL/CO/20-22, paras. 18 and 19, CERD/C/COL/CO/17-19, paras. 10 and 11, 及びCERD/C/LUX/CO/18-20, paras. 17 and 18.

[16] 人種差別撤廃委員会、一般的勧告35(2013年)、paras. 31 to 34、及び CERD/C/USA/CO/10-12, paras. 57 and 58.

[17] 合同一般的意見、移住労働者権利委員会の一般的意見4/子どもの権利委員会の一般的意見23(2017年)、para. 63.

[18] CERD/C/ISR/CO/17-19, paras. 40 and 41.

[19] CERD/C/KOR/CO/20-22, paras. 17 and 18, 及びCERD/C/MEX/CO/18-21, paras. 34 and 35.

[20] CMW/C/MEX/CO/3, paras. 35 and 36, CMW/C/MEX/QPR/4, para. 14, 及び CMW/C/MEX/CO/4, paras. 33 and 34.

[21] CERD/C/ITA/CO/21, paras. 18 and 19, 及び OHCHR and Global Migration Group, Principles and Guidelines, Supported by Practical Guidance, on the Human Rights Protection of Migrants in Vulnerable Situations (Geneva, OHCHR, 2018), principles 13 and 18. 次の文書も見よ。A/73/216, para. 28.

[22] A/72/335, para. 71.

[23] 次の文書も見よ。Recommendation 2284 (2024) of the Parliamentary Assembly of the Council of Europe on missing migrants, refugees and asylum-seekers.

[24] CERD/C/IRN/CO/20-27, paras. 38 and 39, CERD/C/MDA/CO/12-14, paras. 25 and 26, CERD/C/BIH/CO/14-15, paras. 31 and 32, 及びCMW/C/TUR/CO/2, paras. 31 and 32. 次の文書も見よ。A/HRC/47/30.

[25] CERD/C/QAT/CO/22-23, paras. 24 and 25.

[26] 次の文書を見よ。OHCHR and University of Essex, “Digital border governance: a human rights-based approach”, September 2023.

[27] A/HRC/48/76, para. 49.

[28] CERD/C/GBR/CO/24-26, paras. 47 and 48.

[29] CERD/C/BIH/CO/14-15, paras. 31 and 32.

[30] CERD/C/MEX/CO/18-21, paras. 34 and 35.

[31] A/75/183, para. 80.

[32] CERD/C/BIH/CO/14-15, paras. 31 and 32. 次の文書も見よ。移住労働者権利委員会、一般的意見2(2013年)及び5(2021年)。

[33] CMW/C/MEX/CO/3, paras. 25 and 26.

[34] CERD/C/MAR/CO/19-21, para. 33.

[35] CERD/C/USA/CO/10-12, paras. 51 and 52.

[36] CERD/C/MAR/CO/19-21, para. 34.

[37] 次の文書を見よ。E/C.12/2017/1.

[38] CERD/C/KOR/CO/17-19, paras. 29 and 30.

[39] CERD/C/QAT/CO/22-23, paras. 16 and 17, CERD/C/ZAF/CO/9-11, paras. 42 and 43, CMW/C/KGZ/CO/1, paras. 40 and 41, 及びCMW/C/LSO/CO/1, paras. 27 and 28.

[40] CERD/C/QAT/CO/22-23, paras. 18 and 19.

[41] CERD/C/NLD/CO/22-24, paras. 21 and 22.

[42] ILO, General Principles and Operational Guidelines for Fair Recruitment and Definition of Recruitment Fees and Related Costs (Geneva, 2019).

[43] CERD/C/CHL/CO/22-23, paras. 32 and 33, CERD/C/USA/CO/10-12, paras. 33 and 34, 及びCMW/C/PER/CO/2, paras. 47 and 48.

[44] CERD/C/CHL/CO/22-23, paras. 32 and 33; CERD/C/CZE/CO/12-13, paras. 23 and 24; 及びCERD/C/POL/CO/22-24, paras. 23 and 24.

[45] A/73/216, paras. 25, 26 and 60.

[46] CERD/C/CHE/CO/10-12, paras. 25 and 26.

[47] 社会権規約委員会、一般的意見19(2007年)、paras. 37 and 38.

[48] CERD/C/LTU/CO/9-10, paras. 23 and 24.

[49] CERD/C/QAT/CO/22-23, paras. 32 and 33.

[50] Ibid., paras. 26 and 27.

[51] CERD/C/CZE/CO/12-13, paras. 11 and 12, CERD/C/IRL/CO/5-9, paras. 19 and 20, CERD/C/USA/CO/10-12, paras. 14 and 15, 及びCMW/C/TUR/CO/2, paras. 25 and 26.

[52] A/HRC/38/52, para. 65.

[53] CERD/C/ISR/CO/17-19, paras. 26 and 27.

[54] CERD/C/ARG/CO/24-26, paras. 18 and 19, CERD/C/AUS/CO/18-20, paras. 13 and 14, and CERD/C/POL/CO/22-24, paras. 15 and 16.

[55] CERD/C/NLD/CO/22-24, paras. 11 and 12.