12月9日、人種差別撤廃委員会は第91会期を終えた。今会期において同委員会はアルゼンチン、イタリア、ポルトガル、トーゴ、トルクメニスタン、およびウルグアイに関する総括所見を採択した。
* 星印(*)を付した勧告は1年後に情報提供を求められたフォローアップ手続き対象の勧告である。
アルゼンチン
先住民族およびアフリカ系の人びとのコミュニティにおける貧困が委員会の注目を集めた。先住民族の状況について、土地に関する権利、水に対する権利、司法へのアクセス、自由かつ事前の、十分な情報を得た上での同意および人権擁護者の問題が挙げられた。委員会は、収容所の利用を含む、移住者の処遇について懸念を表明した。委員会は、先住民族およびアフリカ系コミュニティの少女および女性のための女性に対する暴力に関する特別のホットラインが存在するかどうか締約国に尋ねた。委員会は、司法制度が人種差別に対して充分対応することをどのように確保しているのかについてさらに情報を求めた。性的指向およびジェンダー自認に基づく人種差別の交差性に対する措置に関する情報が求められた。
委員会は総括所見において次の分野に関する勧告を出した。
構造差別
公共政策
人口構成および統計データ
人種差別の定義
音声画像通信に関するオンブズ*
制度構築
事前の十分な情報を得た同意
土地に関する権利および土地の回復*
人権擁護者の状況*
教育へのアクセス
司法へのアクセス
労働権
移住者
複合的な形態の差別
イタリア
委員会は、人種差別撤廃条約上の人種差別の定義が国内法にどのように適用されるのか尋ねた。委員会は、高等教育へのアクセスが限定的であること及び隔離収容所の存在を含む、ロマの人びとの状況に関して懸念を表明した。委員会はまた、人種差別を受けている女性及びLGBTの人びとに対する複合的形態の差別に関する情報を求めた。委員会は、移住者、庇護を求める人びと及び難民の処遇について、締約国の危機に対応しようとする努力を認めつつも、法律相談の欠如及び移住者の収容を含むいくつかの懸念を挙げた。委員会は、締約国に対してA資格の国内人権機関を設立するよう促した。スポーツにおけるものも含む、アフリカ系の人びとに対する人種差別の問題が挙げられた。委員会は締約国に対し、刑事司法制度において人種プロファイリングが使われないよう確保し、人種主義的ヘイト・クライムに充分対応するよう促した。
委員会は総括所見において次の分野に関する勧告を出した。
差別禁止立法
細分化された統計データ
国内人権機関
人種差別に対する国内中央機関
人種主義的ヘイト・スピーチ
人種主義的ヘイト・クライム*
混在する人の移動の流れ:移住者、庇護を求める人びと、難民*
ロマ、シンティ、カミナンティの共同体
移住労働者の状況*
アフリカ系の人びと
刑事司法制度
ポルトガル
市民社会が締約国の報告の審議に参加していないことから、委員会は、報告の準備に当たり市民社会と充分協議が行われたかどうか尋ねた。委員会は人種差別に関する苦情申し立てがないことは、そのような事例がないことを意味しないと強調し、法執行官の人権研修及び一般の意識啓発を通した被害者の司法へのアクセスの確保を求めた。委員会は、貧困及び識字のレベルを含むロマの状況について引き続き懸念した。締約国が地域会議を主催することを検討していることを歓迎しつつも、委員会はアフリカ系の人びとに対する差別と闘うためのさらなる措置をとるよう促した。委員会は締約国の人権教育のための措置を歓迎したが、マイノリティ集団の貢献を含む、ポルトガルの植民地に関する歴史が学校において教えられるべきであることを強調した。
委員会は総括所見において次の分野に関する勧告を出した。
条約の地位
データ収集
差別禁止規定の実施*
行政苦情申し立て制度*
ヘイト・スピーチ及び行為
法執行官による武力の行使
ロマに対する差別*
アフリカ系の人びとに対する差別
移住者の状況
学校のカリキュラム
市民社会
トーゴ
委員会は、締約国の人種差別の定義が条約に適合していないことを指摘した。委員会は、審議に国内人権機関が参加していないこと、NGOからの報告がないことについて遺憾とした。委員会は締約国に人種差別と闘うために市民社会と一層協力することを促した。締約国は刑務所の収容人口を含む細分化されたデータを提供するよう求められた。異なる民族集団に属する女性に対する複合的形態の差別の状況が委員会の注目を集めた。委員会は締約国にアルビニズム(白皮症)の人の状況に関する情報を提供するよう求めた。委員会は締約国が家事労働者に関するILO条約を批准したことを歓迎した。
委員会は総括所見において次の分野に関する勧告を出した。
データの提供
差別の定義
人種差別撤廃のための政策措置
国内人権機関*
刑法の条約第4条との適合性
国内和解プロセス*
真実、正義、和解及び国内統一強化の高等弁務官事務所
教育及び研修へのアクセス
保健・医療へのアクセス
公務職、国防軍及び治安人員において人口構成が衡平に反映されること
市民でない人の状況
トーゴ国籍の取得
条約第6条の適用について救済へのアクセスとデータの提供
トルクメニスタン
委員会は締約国において独立した国内人権機関がないという問題を挙げた。委員会は、ヘイト・スピーチ及びイスラム嫌悪に表される、民族的宗教的マイノリティの状況について懸念を表明した。締約国は刑務所の収容人口を含む、細分化されたデータを提供するよう何度か求められた。マイノリティであるバローチ人コミュニティの人権擁護者の恣意的逮捕の申し立てがされていることを含む、市民社会に対する規制が委員会の注目を集めた。無国籍のウズベク女性を含む無国籍者のぜい弱な状況に対する懸念が表明された。委員会は、言語に対する権利の問題も取り上げ、マイノリティの雇用及び公務職へのアクセスが限定されることに懸念を表明した。締約国は人種差別の被害者の司法へのアクセスがどのように保障されているのか尋ねられた。委員会は締約国に条約の人種差別の定義を国内法に取り入れるよう促された。
委員会は総括所見において次の分野に関する勧告を出した。
統計データ
人種差別の定義
ヘイト・スピーチ*
人権オンブズマン*
民族的マイノリティの宗教の自由*
民族的マイノリティの文化的及び言語の権利
市民でない人の状況
無国籍者の状況
人種差別の申し立て
司法の独立性
裁判官、弁護士及び公務員の研修
ウルグアイ
締約国の努力を歓迎しつつも、委員会は例えば雇用及び教育においてなど人種差別の状況を評価するために細分化されたデータを求めた。委員会はアフリカ系の人であることの多い家事労働者の搾取が報告されていることを懸念した。委員会は締約国に先住民族及びアフリカ系の人びとの悲劇を歴史教育がどのように教えているのか尋ねた。締約国は人種差別に対する法律を制定し、ILO第169号条約を批准するよう促された。人種差別の被害者の救済へのアクセス、人種主義的ヘイト・スピーチの有罪率、及び刑務所に収容されているマイノリティ及び先住民族の人口を含む、司法制度の問題が議論された。委員会は締約国に先住民族及びマイノリティのコミュニティに属する人びとの性的指向及びジェンダー自認に基づく複合的形態の差別に対する具体的措置をとっているかどうか尋ねた。
委員会は総括所見において次の分野に関する勧告を出した。
統計データ
立法措置
人種差別に対する政治的闘争
制度的措置
構造差別
政治的権利*
教育における差別*
先住民族
アフリカ系女性に対する複合差別
他の形態の複合差別
難民及び庇護を求める人びと
移住者
司法へのアクセス
人種的ステレオタイプ