アジア人権委員会(AHRC)ニュース:
2017年10月8日、インド、ケララ州公益事業委員会は、州内のヒンドゥー寺院の僧侶に推薦した人のリストを発表しました。推薦された62人のうち、36人はブラーミン(カースト制度のもとで最上位におかれている僧侶階級)出身ではありません。インドの他の州と異なり、ケララ州の大半の寺院は州政府の管轄にあり、州内にある3000近い寺院を管理しています。この決定は州にとって歴史的な快挙であり、州住民も当然のこととして受け止め、歓迎をしました。カースト差別が日常茶飯事になっているインドの他の州、そして南アジアはケララ州を見習うべきです。
これよりさかのぼること80年前の1936年11月12日、ケララでは寺院入構に関する革命的な布告がだされました。当時のこの地域の為政者は、いわゆる「不可触民」に対する寺院入構禁止を廃止すると宣言し、大きな波紋を呼びました。それはケララの歴史において画期的な出来事となりました。今日、ケララ州政府は寺院入構の布告が出たこの日を社会変革の日とみなしています。
非ブラーミンの36人のうち6人はダリットの青年で、けっして裕福な家の出身ではありません。そのうちの1人で採用試験の成績が上位4位であったヤドゥ・クリシュナは、とても貧しい家で生まれ育ちました。ヤドゥは現在、修士課程2年目で、サンスクリットを読んでいます。つい数年前まで、ダリットがサンスクリットを読むことは「とうてい容赦されない罪」であるとカースト・ヒンドゥー(カースト制度内のヒンドゥー教徒)は捉えていました。僧侶に任命された他5人のダリット青年たちも非熟練労働者の家の出身です。6人とも、歴史学、英文学、ヴェーダ学、コンピュータ・サイエンスなどを大学で学び、優秀な成績をおさめています。さらに、ケララ州のブラーミンを代表する組織も、36人の非僧侶階級出身者の寺院僧侶推薦を歓迎し、州における「本物の社会変革」だと述べています。
しかし、今回ケララ州で起きたことはケララ州にカースト差別がないという意味にはなりません。3千年以上続いてきたカースト差別の悪は、36人の非ブラーミンが僧侶に選ばれたという事実を遥かにしのぎます。それでも、この楽観的で革命的な前進は、ケララがこの数十年かけて行ってきた教育における進歩的取り組みや封建主義終焉の闘いがなければ、実現しませんでした。ケララのこの変革は南アジアのダリット運動が習い、学ぶべきことでしょう。残念ながらダリット運動の一部に、変化や変革など不可能であるという否定的なムードがいまだ残っています。ケララという小さな州で起きたことに動揺などしない、関心はないと装っているダリット活動家もいます。
カースト差別は社会悪です。それと対峙するには不屈の闘いが求められます。その闘いのなかで得た成果は、たとえ小さな成功でも祝うべきです。カースト差別をなくすには、この悪に終止符をうつことができるという信念を持ち続けることが求められます。さもなくば、南アジアは抑圧と暴力を社会の規範として容認するカースト・ヒンドゥーの猟場という位置にとどまり続けるでしょう。
AHRCは1984年に設立された香港ベースの人権NGOです。