2017.09.26

宗教ナショナリズムに関するサイドイベント開催(ジュネーブ、9月21日)

宗教の自由を圧迫する宗教ナショナリズム
インド、スリランカ

2017年9月21日、国連人権理事会の会場で、表題のサイドイベントがフランシスカンズ・インターナショナルとIMADRの共催で開催されました。以下、その概要です。

パネリスト:ディレンドラ・パンダ(インド、人権に関する市民社会フォーラム)
マノジュ・ナヤク(インド、社会アクションのためのオリッサ・フォーラム)
スナンダ・デシャプリヤ(スリランカ、ジャーナリスト)

モデレーター:ブディ・トハジョノ(フランシスカンズ・インターナショナル、アジア太平洋コーディネーター)

宗教ナショナリズムの高まりが宗教・信仰の自由を抑圧し、深刻な問題を起こしているインドとスリランカの状況について、3人のパネリストが次のような報告を行いました。

ディレンドラ・パンダ
 インドは民主国であるが、現政権とヒンドゥー原理主義者たちはインドをヒンドゥー国に変えようとしている。暴力の煽動は犯罪とされているが、政治家たちはしばしば人びとを煽る発言を行い、罰を逃れている。2013年から宗教的マイノリティ(ムスリム、クリスチャン、ダリットなど)が私刑を受ける事件が28件起きているが、加害者のほとんどは逮捕されていないし、逮捕されてもすぐに保釈されている。2012年と比較して、暴力事件は41%増えた。インドに宗教の自由を守る法律はあるが、現実には、宗教マイノリティは信仰を実践するために当局から許可がないと信仰を実践できない。

マノジュ・ナヤク
 2008年8月25日、カンダマル県にあるナヤクさんの村に400人が暴徒と化した400人が押し掛け、7人が殺された。ナヤクさんの父親は無理やりヒンドゥ教徒に改宗させらた。事件のあと、牧師であるナヤクさんは3年間村に帰ることができなかった。ある男性は「ヒンドゥー教徒になりたいか?」と脅され、「いいえ」と答えたところ、妻子の前で殺された。また別の事件では、聖書をカバンにいれていた牧師が制裁として生きたまま埋められた。
カンダマル県では、こうした宗教的迫害の事件があとを絶たず、たいていの場合、警察に通報しても半数以上は受理されず、さらに、そこから立件されるのは4分の1ほどである。宗教的マイノリティであるがゆえに、多数の人びとが土地、家、家財などを捨てて村を追われている。
無実のキリスト教徒7人が1人のヒンドゥー教徒を殺したとして9年間刑務所に入れられたままである。最近開かれた集会では、ヒンドゥー過激派集団が、「キリスト教徒を殺せ、牧師を追放しろ!ムスリムを殺せ!」と叫んだが、誰も逮捕されていない。

スナンダ・デシャプリヤ
 スリランカでは、大統領や政治家は何か変化をもたらすようなことをする前には必ず仏教の僧侶にお伺いを立てに行く。これはおそらくあの内戦はタミールに対するシンハラ(仏教徒)の勝利として見られているからだ。軍隊は仏教徒の産物となった。北部へ行けば、どの軍駐屯地にも仏教寺院が建っている。人権弁護士のラクシャン・ダィアスは宗教的理由による攻撃についてテレビのトークショーで話をした途端、政治家や一般市民から攻撃を受け、仏教への裏切り者とののしられた。法務大臣は裁判にかけるぞと脅した。ある仏教僧侶は公然とタミール人の公務員を「タイガー」と呼んで攻撃し、「お前を見たら血が騒ぐ」と言った。そばで見ていた警察官はそれを黙って見過ごした。キリスト教徒に対する暴力事件も起きているが、誰も逮捕されていない。
 これは、内戦はLTTEに対する仏教徒の圧倒的勝利であるという見方が根強くあるからだ。宗教が政治を左右するようになった。さらには、ますます裾野を広げているソーシャルメディアが宗教の自由を侵し、憎悪を広めるプラットフォームになっている。政治家やメディアが規範を示し、著名人や政治リーダーが宗教の調和と寛容を唱えるよう市民社会が圧力を加えることが求められている。

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