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人権理事会 63会期 ー 34本の決議を採択し閉幕
国連人権理事会63会期(2026年9月7日開幕)は、34本の決議を採択し、10月7日に閉幕しました。IMADRは、スリランカの強制失踪に関する書面声明、スリランカのプランテーション労働者の山岳タミルコミュニティに関する口頭声明を発出しました。本記事では、IMADRの活動に関係するものを中心に、採択された決議案の一部を紹介します。

◼️ 人権と先住民族に関する決議案
先住民族、中でも特に女性、子ども、若者、高齢者、障がいのある人々が、制度的レイシズム、貧困、環境汚染、医療へのアクセス不足により、暴力、刑務所への収監、健康状態の悪化に不均衡にさらされており、特に遠隔地においてその傾向が顕著であることを懸念する。
また、歴史的な植民地支配や剥奪、ホームレスの割合が著しく高いこと、強制立ち退きや土地の収奪、気候変動の悪影響を受けやすいことなど、さまざまな要因により、住居に関するものを含む経済的・社会的条件の改善に関する権利*の享有において障壁に直面していることに留意する。
こうした状況に対し、各国に以下のことを求める。
◯ 先住民族の権利に関する国連宣言や、国際人権法で定められている先住民族の権利を尊重し、複合差別や交差性差別を含むあらゆる形態の暴力や差別に対処すること。
◯ 先住民族の子ども、特に少女と若者を、オンライン・オフライン問わず、あらゆる形態の暴力から保護するために適切な措置をとること。
◯ 先住民族と協力し、ジェンダーの視点を取り入れながら、先住民族女性の人権活動家を含む先住民族の人権擁護家やリーダーの権利保障、保護、安全を確保するために必要かつ緊急のあらゆる措置をとること。
*先住民族の権利に関する国連宣言、第21条
*人権理事会第66会期中(2027年9月)に先住民族の権利に関する年次ディスカッション「先住民族の権利に関する国連宣言20周年:成果と課題」が開催される予定である。
◼️ 強制失踪に関する決議案(*日本も提案国の一つ)
世界中で、逮捕、勾留、誘拐を含む強制失踪の件数が増加していることや、強制失踪の目撃者や失踪者の親族に対する嫌がらせ、不当な扱い、脅迫が増加していることに深い懸念を表す。
失踪者の家族や親族は、特に失踪者の安否や所在が明らかになっていない場合に、苦しみや不安を抱え続けている。強制失踪事案の捜索、調査、真相究明への有意義な参加の重要性を強調する。
こうした状況に対し、各国に以下のことを求める。
◯ 強制失踪に関する作業部会からの訪問要請に前向きに応じること。
◯ 強制失踪の根本原因に対処するための包括的な措置や迅速で独立した公正な調査を行うこと、加害者の説明責任を確保することなど、作業部会が提出した報告書に示されている勧告を履行すること。
◼️ レトリックからリアリティへ:レイシズム、人種差別、外国人嫌悪及び関連する不寛容に対する具体的な行動への世界的な呼びかけに関する決議案
ダーバン宣言及び行動計画の採択から25年が経過した。しかし、世界各地で、アフリカ人及びアフリカ系の人びと、アジア人及びアジア系の人びと、移民、難民、先住民族、民族的・言語的・宗教的マイノリティを含む人々が依然としてレイシズム、人種差別、ヘイトスピーチ、暴力、外国人嫌悪、その他関連する不寛容に直面していることに深い懸念を持って留意する。ダーバン宣言及び行動計画の内容が一般に広く認識されていないことが、その完全で実効的な実施に向けた政治的意思を形成する上で大きな障壁となっている。
移住・国境管理に従事する法執行官による、アフリカ系の人々を含むすべての移民、難民、庇護希望者に対する差別的な扱い、不法な強制送還、過剰な武力行使を強く非難する。また、移民、難民、庇護希望者に負の影響をもたらす法律、政策、慣行に内在する間接的な人種差別を非難する。
こうした状況に対し、各国に以下のことを求める。
◯ 公式な謝罪、真実を明らかにするためのプロセス、さまざまな形態の賠償など多様な措置を通じて、過去の負の遺産を包括的に対処する取り組みを開始すること。
◯ 植民地主義及び奴隷制に関連する歴史的で現代的な人種的不正義の被害者、生存者、影響を受けているコミュニティを救済や賠償プロセスの中心に据えること。
◯ 国境における人権侵害について、適切な説明責任や賠償を確保し、移住管理における構造的人種差別に対処するための政策や人種・民族別に分類されたデータの収集などを通じて、人種的正義の視点を取り入れたアプローチを採用すること。
◼️ 人権と移行期正義に関する決議案
ジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する罪を含む重大な人権侵害及び国際人道法の違反が処罰されずにいることを非難する。各国には、不処罰を終わらせるという国際法上の義務を履行する責任があることを強調する。
こうした状況に対し、各国に以下のことを求める。
◯ 該当する場合には、過去の重大な残虐行為に対処し、被害者の実効的な救済への権利を保障するとともに、再発防止のための包括的な移行期正義の方策や政策を策定、実施し、司法的・非司法的なメカニズムを設置すること。
◯ 移行期正義のプロセスが長期にわたるものであることを認識し、被害者を支援するとともに、国内司法制度や残虐行為の防止を担う国内機関/ネットワークと連携を行うこと。
◼️ 移住者の人権に関する決議案
移住者や移住に関する非人間化と有害な言説、偽情報・誤情報、ヘイトスピーチが拡散し、それらが外国人排斥、レイシズム、複合差別や交差性差別、暴力、排除や社会的分断、移住者やその家族に向けられる敵意を引き起こしていることに懸念を表明する。また、こうした言説が、非正規移住を犯罪とみなすことを含む、非正規移住への不均衡な制裁につながり得ることを懸念する。
国境を越えようとする過程で命を落としたり、負傷したり、行方不明になる移住者、特に女性や子どもの数が増えていることに深い懸念を表す。
こうした状況に対し、各国に以下のことを求める。
◯ 移住のあらゆる段階において法律、政策、慣行がもたらし得る人権への負の影響を防止するために、それらの見直しを行うこと。
◯ 移住や移住者に関する非人間化や有害な言説の拡大に対抗し、人権ベースで客観的証拠に裏付けられた言説へと転換するために、国内・国際的な取り組みにおいて、すべての関係者と積極的に連携すること。
◯ 国内又は国境を越える移住者に関する誤・偽情報キャンペーンを行ったり、支援したりすることを止め、こうした行為を非難すること。
ソーシャルメディアプラットフォーム、デジタル技術企業及びその開発者、移住管理に関わる民間企業を含むすべての企業に対し、以下のことを求める。
◯ 非人間的で有害な言説、偽・誤情報、ヘイトスピーチの拡散を防止するために、ビジネスモデルの再評価、独立した監視体制の確立、デジタル技術業界における説明責任に関する枠組みの策定を含む、「情報の誠実性のための国連グローバル原則」にある勧告を検討すること。
◼️ 人権の促進と保護における人工知能の影響に関する決議案
自動プロファイリング、生体認証技術、予測分析、アルゴリズムによる意思決定に依拠するものを含むAIシステムが、既存のレイシズム、人種差別、外国人排斥、その他関連する不寛容を再生産、助長、増幅するおそれがあることを懸念する。特に、偏りがあり、不完全又は代表性を欠くデータに基づいて開発/運用される場合や、適切な人権保護措置が講じられていない場合に、こうしたリスクが高まる。
エネルギーや水の消費、温室効果ガスの排出、重要鉱物の採掘、土地利用、電子廃棄物など、AIシステムの全工程を通して、健康的かつ持続可能な環境の享有に悪影響を及ぼす恐れがある。すでに資源の枯渇や環境破壊、気候変動の影響に脆弱なコミュニティがそうした影響を受けやすいことに懸念を持って留意する。
こうした状況に対し、各国に以下のことを求める。
◯ AIに関する法律、規制、行政上や政策的な枠組みを策定・実施するにあたり、すべての人権の享有に及ぼすAIの影響を考慮すること。
◯ AIシステムの全工程を通じて生じ得る/実際に生じている差別やその他の人権への悪影響を防止、軽減し、対処するための適切な措置をとること。
◯人権享有に影響を及ぼす決定において、AI が重要な役割を果たす場合には、リスクの性質や程度に応じて、人間による実質的な監督と説明責任を確保し、影響を受ける人々が当該決定に関する情報を得られるようにするとともに、実効的な救済にアクセスできるようにすること。
*人権理事会65会期(2027年6月)において、「AIの中心に人権を据える:AIに関する能力構築とAI格差の解消」をテーマとするパネルディスカッションが開催される予定である。
◼️ 十分栄養のある食物への子どもの平等なアクセスに関する決議案
2024年には、5歳未満の子どものうち約1億5,020万人が発育不良な状態にあり、4,280万人が消耗症、3,550万人が過体重であったことに深い懸念を表明する。世界で生産される食料の50%以上を女性が生産している一方、世界の飢饉人口の70%を女性が占めていることにも深く懸念する。ジェンダー不平等や差別などを背景に、女性と少女が飢餓、栄養失調、食料不安、貧困の影響をより深刻に受けており、栄養失調や予防可能な小児疾患で死亡する可能性が、少年よりも2倍高い。また、栄養失調である女性の数は男性の約2倍である。
こうした状況に対し、各国に以下のことを求める。
◯ 食料不安や栄養失調の根本原因への対処や不平等や差別を含むあらゆる障壁を取り除くこと、障がいのある子どもを含むすべての子どもが十分で栄養価の高い食料を平等に手に入れられるようにする措置を通して、子どもの栄養失調に取り組むこと。
◯ 子ども・女性、特に妊娠中や授乳中の女性を対象とする栄養改善の取り組みを強化すること。
◯ 可能な場合には、生後6ヶ月間の完全母乳育児を支援し、その後も適切で栄養価の高い補完食と合わせて、子どもが2歳になるまで、そしてそれ以降も母乳育児を継続できるようにすること。
◉ 任期が延長されたテーマ別任務
真実・正義・賠償・再発防止の保障;有害物質および廃棄物;一方的強制措置の否定的影響に関する特別報告者、民主的で公正な国際秩序の促進に関する独立専門家、農民・その他農村部で働く人々の権利;アフリカの人々;強制失踪に関する作業部会、以上の任期がそれぞれ3年延長された(2029年まで)。
*人権理事会63会期へ提出された報告書、決議案などの情報はこちらからご覧いただけます。